Wednesday, May 31, 2006

古典を読む

簡単な粗食弁当を作って、出勤。 個人研究室で昼食のあと、12 時半より 16 時まで卒研ゼミその1。 積分の性質、単調収束定理など。 雑用ののち、生協食堂で夕食をとって、 18 時より院生の自主ゼミに参加。 このゼミはソリトン理論入門がテーマで、 私が昔、I 先生と試みたものの中途半端に終わっている仕事を、 大理論に仕立て直そうと言うA堀先生の野望のもと主催されているらしい。 私も無関係ではないので、顔を出している。 なお、数理物理専門のK先生も付き合ってくれていて、大変に心強い。 終了は、今。つまり 21 時半。 個人研究室で更新。さ、帰ろ…

朝の通勤中の車内でようやく、メルヴィルの「白鯨」を読了。 これは時々読み直したほうがいいかも。 カルヴィーノによれば古典とは、読もうと思っています、 ではなくて、読み直そうとしているところです、 と答えなければならない種類の書物である。 ところで、 天才数学者グロタンディエクが「白鯨」を愛読していたというのは、 やはりエイハブ船長に自分を重ねていたのだろうか。

Tuesday, May 30, 2006

癒しの図面

珍しく午前、午後と数学にかなり時間が使えた。 特に進展らしいものはなかったが、 部分的に解決した人の手法のポイントは理解できた。 この手法を発展させるのがいいかどうかは不明。 この方法で出来るくらいなら、その人が一般的に解決していただろう、 と考える方が普通かな。

夕方から教授会。間に作業時間(私にとっては夕食時間)の休憩を挟んで、 8 時半まで。やれやれ。 ふらふらしながら帰宅。会議って座ってるだけなのに、 どうしてこんなに疲れるのだろうか。 家に帰ると、Problem Paradise の新刊が届いていた。 プロブレムの問題図を見ると癒されるなあ…

Monday, May 29, 2006

未来の価値と現在の価値

さあ、今週もばりばり働くぞー、おー。 空元気を出しつつ出勤。 生協食堂でかけそばを食べてから、 12時半より卒研ゼミその2。 ハンナーの不等式の証明。でも、今日中に終わらなかったので、 来週はその続き。 続いて、「数理計画法」。 計画問題を終えて、今日から数理ファイナンスの話題に入る。 「割り引き」の概念、 裁定機会の定義、裁定機会とリスク中立確率測度の存在の同値性など。 「割り引き」とは利子率から未来の価値を現在の価値に換算することを言う。 例えば、年利が一割ならば現在の 100 万円が一年後には 110 万円になる。 これを逆向きに考えるのが「割り引き」で、 一年後の未来の 100 万円は現在の価値に割り引けば、 1 + 0.1 = 1.1 で割った 90 万 9090 円くらいの価値しか持たないことになる。 小学校の算数程度のお話だが、 経済学部の学生さんだとこんなところで結構つまづくそうだ。 まあ、数理科学科なら大丈夫のはずだが。 続いて、「情報処理演習」。 配列を使った演習問題。

今回の "In Our Time" は、「数学と音楽」がテーマ。 なかなか面白そうですよ。

Sunday, May 28, 2006

Meet wizards 2

帰宅(6時間前からの続き)。流石に評判通り良い店だった。 シャンパンでおつくりの他、蠑螺の唐揚げなど一品ものを幾つか食べて、 ブルゴーニュの白で握り、最後にまた別のシャンパン。 特に鳥貝は良く肥えて甘みがあって美味しかったし、 小鰭と鯛については仕事ぶりが冴え渡っていて、 食べる前から既にその佇まいが美しい。 こんなにきらきらとして綺麗な鮨は久しぶりに見た。 褒めてばかりでは何なので一つ注文をつければ、 海が遠いことだけが惜しい。 しかし、仕事の丁寧さや繊細さと、 下手味としての鮨のカッティングエッジの鋭さとは、 相反する、または相補するものである。 両方とも全部と言うのは無理だ。 上品な京都流の握りの食べさせ方として文句のつけようもないし、 鮨にワインを合わせると言うこの店独特の魅力もある。 私がお金持ちだったら、毎週でも行くんだけどなあ。 さて、来週末は私の方が友人の結婚式で東京に行くので、 N さんと「マジックスパイス」でも行こう、 と約束して四条で別れた。 N さんはさらに一人でバーに行って飲み直すようだった。 相変わらず酒豪だなあ。

Meet wizards

10 時起床。寝起き悪し。 昼食は、だしを引いて、冷凍の讃岐饂飩を茹で、月見饂飩。 午後になっても東京からの刺客からは相変わらず連絡なし、 執事も現れずで、三名で予約したものの一体どうなるのか。 このまま誰も来なかったら、 一人で三人分食べてくるかなあ…と思っていたら、 ようやく16時過ぎになって、 N 氏の携帯電話のメイルアドレスから18時京都駅着、 と連絡が入った。 なんとか仕事から切り抜けて来られたらしい。

まあそんなわけで今夜は、 営業も出来れば工事仕様も詰められる万能のネットワークハッカー N 氏と、 執事こと我が家の有能な雑用係兼プログラマ km の二人のウィザードたちと松ヶ崎のお鮨屋さんで会食。 二人とも十年くらい前に初めて知りあったときは、 まだ二十そこそこだったのに、時の経つのは早いものだ。 そう言えば、N 氏は先の一月に随分と若く御尊父を亡くしたばかりだった。 年年歳歳花相似、歳歳年年人不同。 会食の報告は、(もしあればの話だが)、深夜にでも。

Saturday, May 27, 2006

スパニッシュ

土曜日は完全休日。 今日も雨がち。良く眠れる。クロ(ソフスカヤ)もいつもより良く寝ている。 昼間は、読書したり、昼寝したり、チェスの勉強をしたり。 Kasparov-Karpov 戦(1990 年世界チャンピオンマッチ、第20局) を並べて、ルイ・ロペズ(スパニッシュ)定跡は面白いし、深いなあと。 やはり、 ルイ・ロペズのクローズド・ヴァリエーションが 1. e4 ゲームの王道、 と言う気はする。 でも、残念ながら自分で指すことはないんじゃないかな、と思う。 不思議なものでどんなに弱いレヴェルでも、 その人の対局スタイルがあり、 自分に似合わないことをすると簡単に結果に出る。

夜は何故か鍋にしてみた。 リースリングワインで、餃子鍋とその後のおじや。 さすがに鍋はこれが最後で、次は夏が終わった後だろう。 腹ごなしにチェロの練習。 スケールなどして指をならしてから、 超スローテンポで無伴奏一番のプレリュードを弾く。 この曲はどんなにゆっくり弾いても音楽になるところがいい。

東京のネットワーク技術者 N さんが仕事から逃れて上洛すると言うので、 明日の夜は一緒にお食事の予定。 昨年まで blog をおいていた「戦慄サーバ」 こと shudder.info の管理をしていただいていた方である。 明日のお食事所は御本人のリクエストで、 私はまだ行ったことのない某お鮨屋さん。 この店は他の機会に行きたかったのだが、 お世話になっている N さんのご希望とあればやむを得ない。 ところで、予約したことを報告して以来、 全然連絡ないけど、 N さん本当に仕事から逃げて来ることが出来るのか。

Friday, May 26, 2006

河骨 / Ito33

終日、雨がち。 もう九州南部では梅雨入りしたらしい。 昼時に小雨の中を散歩した。 ふと、「水の上に咲くは河骨わが愛を錘となして一夜ただよふ」 と言う塚本邦雄の歌を思い出した。 暦上は河骨(かうほね)にはちょっと早いはずだが、 雨の日の暗い空の下はもうそれくらいの雰囲気。 以前はこの歌があまり好きでなかった。 河骨のイメージを過不足なく使い切った感じが賢しげだし、 メロドラマ的過ぎるようにも思えたので。 しかし今では、いい歌だなあとしみじみ思う。 年をとるとはこういうことなのだろうか。 今日の午後は京大でのセミナが休みなので、 比較的のんびりと自分の仕事。 夕方、買い出し。近所のワイン屋さんでチーズも買って帰る。

この前、院生室、またの名を「数ファ研」に顔を出したときのこと、 Y 田先生に、ル・モンド紙に最近(5月16日)掲載された エルカルイ女史(Nicole El Karoui)の大きな紹介記事 "La boss des mathes" を翻訳したものをいただいた。 確か、先の三月にも、 ウォールストリート・ジャーナル紙に載って話題になっていた。 エルカルイはポリテクとパリ第六の数学教授で、 専門は確率論と数理ファイナンス。 R 大学でも毎年三月恒例の国際シンポジウムに来日していただいたことがある。 雰囲気はまさにフランス流の「大マダム」で、かなりの貫禄だった。 ウォールストリート・ジャーナルによれば、 世界のクォンツたちの三分の一がフランス人で、 この流れの立役者がこのエルカルイだ、とのことだ。 ところで、このル・モンドの記事で私の目を釘付けにしたのは、 彼女のことではなく、次の一文。 「…と説明するのは、"Ito 33" と名付けられたデリバティヴ商品のポートフォリオのモデルに特化した ソフト専門家の協会の設立者の Elie Ayache 氏で…」(翻訳は Y 田先生による)。 "Ito 33" なんていうデリバティヴがあるのか! しかも、それ専用のソフトウェアまであり、 その専門家の協会まであるらしい。 勿論、この Ito は伊藤清先生の Ito でしかあり得ない。 一体、どんな仕組みの商品なんだろうか。

Thursday, May 25, 2006

77 の思い出

いつもの朝食。 研究室の PC のウィルス駆除作業のため早めに出勤。 学内ネットワークのポストマスタからスパム警告が来ていたので。 最近、K 大の S 君に、僕からのメイルがスパム分類されている、 と指摘されたのは、そのせいだったか。 Windows マシンはちょっとガードを下げると簡単に感染するなあ、 でも TK 大の N さんみたいに、「Windows を駆除する」、 と言う方針も取れないし…、などと思いつつ、個人研究室に到着。 PC をネットワークから切断してフルスキャンしてみるものの、 感染は発見されず。メモリ上にだけあったのだろうか、 それとも誰か他のスパム源が私のアドレス名を使っているだけなのか。 兎に角、時々フルスキャンをする習慣は良いことではある。 「数ファ研」(A 堀&原、数理ファイナンス研究室)の学生さんたちも、 McAfee でスキャンしましょう。 生協食堂で昼食をとって、12時半から「情報理論」。 エントロピィの定義と数学的な性質など。 ちょっと雑用してから帰る。 夕食は冷凍の讃岐饂飩を茹でて、冷奴と。 夜は少し講義の予習。

車内の吊り広告を見て、 anan のこの特集の表紙は以前はいつも金子國義の絵だったよなあ… などと思いつつ帰る。 学生時代に銀座の某画廊で、 金子國義のドローイングを買ったことがある。 よほど親切な画廊だったのか、またはよほど私が信用できる人間に思えたのか、 絵は今日持って帰っていい、 代金は後払いの上に分割、 お金があるときに画廊に顔を出して払ってくれればいい、 という大らかさだった (ちなみに、ちゃんと毎月、四分の一ずつきっちり払いました)。 その絵は大切にしていたけれども、 ある個人的な理由で持っていたくなくなって、 買ったときの値段で知り合いに引き取ってもらった。 京都に来てすぐくらいのことだろうか。 月日の経つのは早いものだ。

Wednesday, May 24, 2006

マスタークラス

今まで自主セミナに参加していたので、 今日はオフィスから更新。

いつもの朝食のあと、簡単なお弁当を作って出勤。 昼食後、12時半より卒研ゼミその1。 積分の定義の最初の方。 16時から大学院内部進学の面接、続いて学科会議。 続いて、18時から院生の自主ゼミに参加、 今に至る。

注文していた本が届いていたので持って帰る。 「捜査」(S.レム著/深見弾訳/ハヤカワ文庫)。 二十年以上経って最近、二刷が出た。 レムが再流行しているのだろうか。 「捜査」は「枯草熱」に良く似た感じの哲学的SFミステリだが、 「枯草熱」よりもずっと以前に書かれている。 もう、一冊。 "The Cauchy-Schwarz Master Class" (J.M. Steele/Cambridge). コーシー=シュワルツの不等式を巡って、 易しいところから、 ハーディの不等式などかなり突っ込んだところまで不等式の世界を案内する、 なかなか面白い本。 実は amazon から薦められた。 最近、不等式の本をいろいろ物色していたので、 不等式マニアだと思われたらしい。 しかも、全然気付いていなかったが、 この Steele は確率解析と数理ファイナンスの教科書も書いている人。 amazon にそこまで趣味嗜好を見抜かれているのはやや気持ち悪い。 便利ではあるけれど。

帰宅…、お風呂に入って寝よう。

Tuesday, May 23, 2006

冷奴

また少し寝坊。今日も雨がちの一日。 フランスパン一かけと珈琲とオレンジジュース。 午前、午後と講義の予習の貯金。 特に「数理計画法」はそろそろ数理ファイナンスの話に入ろうとしているので、 自分でもけっこう勉強になる。 時々は専門家と自称しているが、 実は数理ファイナンス理論の初歩的なところを全然知らない。 確率解析から入ったので、離散的な場合を知らないのだ。 例えば、実務ではほとんどそれで済ませているらしい二項モデルとか。

夕方、雨が少しあがったところで、散歩がてらパンを買いに行く。 散歩の途中、ちょっとしたアイデアを思いついたが、 正しいかどうか今日中にチェックするのはやめておく。 大体、こういう「ひらめき」は百回に一度も正しくないので、 少なくとも一晩だけでも良い気分でいる方がいい。 夕食は豚丼と冷奴。冷奴は今年初かも。

Monday, May 22, 2006

我輩はいかにしてブランダーを指したか

月曜の朝は辛いなあ。 ベーグルと珈琲とオレンジジュースの朝食をとって出勤。 研究室で持参のお弁当を食べて、 12時半から卒研ゼミその2。 ハンナーの不等式など。 Lpノルムの三角不等式の一般化でもあり、 p = 2 のときの中線定理の一般化でもあるが、マニアックな感じだなあ。 続いて、「数理計画法」。 ラグランジュの未定係数法、キューン=タッカー法など。 続いて、「情報処理演習」。 if, for, while などを復習して、 簡単な練習問題をやってもらう。 ふらふらしつつ帰宅。

目下の話題と言えば、もちろん トリノ・オリンピック、と言いたいところだが、 全く話題になっていないのは、 チェスが日本でまるでマイナースポーツである上に、 参加国中で 100 位にも入らないくらいなので、やむを得ない。 でも、いよいよ日本でも若手が成長してきたし、 将来は明るいような気がする。 彼等の活躍を祈りたい。 そして、私が個人的に注目しているのは、 女子チームの二将、I さんだ。 と言うのも、一度対局したことがあるからというだけなのだが、 それでも応援したくなるものですよね。 私が昨年初めて参加したトーナメントでの二局目。

東京オープン、一日コース(27 Nov. 2005), 2R, K.Hara(no rate)-M.I ((877)) 図は黒の26手目、隅にあったルークを Ra8d8 とオープンファイルにまわしたところで、 次が私の手番。 彼女がこの手を指すまでの考慮中、私は二つの手を考えていた。 まず第一感は、27. h6!? だ。 27. ... g6 に対してルークかクイーンをどこに動かすか、 どうも何か手がありそうだ。 そして、もう一つは 27. Kb2!?, 今このタイミングで守りに一手かける。これも良い手に思えた。 しかし、今考慮中の黒は 26. ... f5 と先に仕掛けてくる可能性が高い。 私はこの三通りの手から始まる一連の応手をあれこれと読んでいた。 いずれにせよ、これはおそらく私の勝ちだと思っていた。 そして、黒が指したのが何と、26. ... Rd8. 全く読んでいない手だったが、瞬間、これは悪手だと思った (多分、本当に悪手だと思う)。 しかしそれに対して、何故か、 ああ本当に一体何故なのだろう、私は考えていた手のどちらでもなく、 反射的に 27. Rd1?? の激しいブランダーを指してしまったのである。 私が Kb2 の守りの手を考えていたことに注意を喚起したい。 けして、次の一手を読んでいなかったわけではないのだ。 指した瞬間に私は自分が負けたことに気付いたし、 彼女もそれを逃さなかった。 最善 R 落ち、その他は mate in 6. つまり、27. ... Qa3+! (Eventually Black won after 28. Qb2).

Sunday, May 21, 2006

蒸し料理

ベーグルと珈琲の朝食。 午前中は mathematica がしてくれた計算をチェックしたくらい。 午後も数学。問題をどんどん簡単化しているわりに、進展ゼロ。 何でこんな簡単なことが証明できないのかなあ。 夕方、買い出しのあと、御飯を炊いて夕食。 最近ちょっと蒸し料理にこっているので、 豚肉、キャベツ、アスパラガスなどで蒸し野菜サラダ。 食後の腹ごなしに、チェロの練習。 チェロ用に簡単にした「モルダウ」のメロディを弾いてみたり。 最近は週末に少し練習するくらいで随分とさぼっている。 毎日、ロンングトーンとスケールだけでもした方が良いのだが。

Saturday, May 20, 2006

楽観的な王子

雨の日は良く眠れるなあ。 午前中はベント・ラーセンの棋譜など並べる。 「デンマークの王子」ことラーセンって、 凄く面白いプレイヤーだと思うのですけれど、如何? 棋風はロマンティックでもあり、ハイパーモダンでもあり、 カスパロフ本第四巻によれば「楽観主義的過ぎる」 ところも好感が持てる。 私はもともとニムゾヴィッチが好きなのだが、 ラーセンのスタイルは何となくニムゾヴィッチに似ている。 とは言え、性格はかなり違うようで、 ニムゾヴィッチのトレードマークの陰険さはどこにもなく、 そこには代わって陽気な楽観がある。 ニムゾヴィッチが悲観的過ぎて世界チャンピオンになれなかったのなら、 ラーセンは楽観的過ぎてなれなかったような気はする。

今日は一日休暇に決めて、午後も読書したり、昼寝したり、 猫の肉球をもんだりしていたら、夕方になってしまった。 近所のワイン屋に注文していたワインを受け取りに行く。 リースリングを二本。もう夏だなあ。 夜は近所のバーで食事。 68 年は有名な外れ年。でも、きっと人間は当たり年だったと信じたい。

Friday, May 19, 2006

オムライス

京都は終日、雨。 トースト用のパンが切れていて、 朝食は珈琲など液体のみ。 午前中は数学を考える。 昼食は御飯を炊いて、若芽の味噌汁、梅干し、ちりめん山椒。 午後は少し午前中に気になったところを、 Mathematica で調べてから、 雨の中を京大へ。 関西確率論セミナ。 リーマン多様体上のブラウン運動の保存則と、 ラプラシアンの本質的自己共役性など。 確率論と言うよりほとんど、幾何もしくは関数解析かな… 考える対象の性質をあれこれ定義して、 性質Aと性質Bは同値で、性質Cは性質Bから導かれ、 その性質Cと性質Dはまた同値で…、 とあれこれ関係を調べることが幾何では多い気がするのだけれど、 それは僕の偏見? 結局、もとの対象については何が分かったのか良く分からない。 きっと何を実質的な数学的対象と思うかに差があるのだろう。 こちらはそのプラトニズムにずれのせいで、 分かった気がしないということかも知れない。 土砂降りの雨の中をバスで帰宅。 雨の日にバスに乗ると、とても貧しい気持ちになる。

帰宅して乾いた服に着替え、 夕食にオムライスを作った。 普段はオムレツを作ってライスの上で中身を開く方法で作るところを、 今日は大衆食堂風に薄い卵焼きで巻く方法にしてみた。 この方が「オムライス!」って言う気はする(?)。

Thursday, May 18, 2006

古い教科書、その2

生協食堂で昼食の後、 12 時半から「情報理論」。 Huffman コードが最適コードであることの証明、 情報源の拡大、 エントロピィの定義へのイントロ。 講義の後は、アクロスの図書室で勉強。 目標の予想から小さな問題を設定し、 これに挑戦することにした。でもあまり易しそうに見えない。 バス停の混雑がおさまるのを見計らって帰る。 夜は少し、講義の予習。

また教科書の話。 私が大学院生の頃、同級生に M 君と言う人がいた。 専門は偏微分方程式で、私とはかなりスタイルも違ったのだが、 それ故に、と言うこともあるのか、私は勝手にライバル視していた。 その M 君があるとき、院生室で小平先生の「解析入門」を読んでいた。 既に院生なのだし、M 君は極めて優秀でもあったから、 今さら微分積分の入門書を読む用事はない。 おそらく楽しみのためだったろう。 私はその本を読んだことがあるようなないような、 特に記憶にも残っていなくて、「それどう?」ときいた。 M 君が言うには、「もの凄く明解で、著者の頭の良さがビシビシ伝わってくる」 とのことであった。 私はこの返答に大変、感動した。特に「ビシビシ」のところに。 私は数学の専門書を読んでそんな風に感じたことは、 少なくともその頃までは一度もなかった。 ちなみに、M 君は国家一種試験を受けて公務員になり大学を離れていったが、 今でも私はM 君を、私の知る中で最も頭の良い人間の一人だった、 と思っている。

Wednesday, May 17, 2006

古い教科書

生協食堂で昼食を食べ、 12時半から卒研ゼミその1。 ボレル・カンテリの補題の応用、 与えられた分布を持つ独立な確率変数の無限列が確率空間の上に構成できることなど。 夕方は学位論文公聴会と学位審議会のため、教室会議はなし。 これ幸いと他の雑用をして後、家に帰る。 夕食は豚丼。夜、講義の予習を少し。

卒研生の一人に初等解析の復習用の教科書として「解析概論」 を勧めておいたら、やっぱりあれは嫌だと言う。 何故かと尋ねると、「書き方が腹立たしい」とのこと。 確かに古い本だから日本語が床しいことは確かだが、 言うに事欠いて、高木貞治に腹立たしい、って。 「なんとなれば」のような古い言い回しがいけないのか、 それとも、「~せよ」と言った命令文がいけないのか。 兎に角、指導教員が温厚なこの私で本当に良かった。 他の先生なら、どんな雷を落とされているか想像するだに恐しい。 しかし、数学を学ぶ学生は普通、 解析概論を読むと簡潔で無駄のない文章とロジックに心が洗われる、 などと言うものだったがなあ。 まあ、数学の教科書とは言え、 段々と現代的な語り口にしていく必要はあるかも知れぬ。

丁度、今日は amazon に注文していたチェスの棋譜集が届いていた。 前にトーナメントに出たときに、 ベテラン選手とお話しする機会があって、これはチャンスだと思い、 「おすすめのチェス本はなんですか?」と尋ねたところ、 「ブロンシュタインが注釈した 1953 年チューリッヒ大会がいいです」 (渋い!) と即答され、道は険しいなあ、と思ったことであった。 勿論、私としては、 寝転んですらすら読めるくらい分かり易くて、目から鱗なことが一杯書いてあって、 読むとすぐ強くなれるような秘密の虎の巻を期待していたのだ。 これは「いい解析の教科書ないですか」と尋く学生と同じだ。 実際、ブロンシュタインの注釈は腹立たしいかも知れない。

Tuesday, May 16, 2006

白鯨の数学

火曜の朝はなかなか起きられないなあ… ここ最近考えていたテーマに全く進展がないので、 しばらく棚上げにしていた、もっと具体的な問題に戻ってみる。 具体的な問題は焦点が定まりやすくて精神衛生上好ましい。 かなり忘れていたので、 今日は何をやっていたか思い出すのが精一杯。 ところで、ある問題をやっていて進展がないので、 こっちに戻ってこの問題をやって、また進展がないので、 またあっちの問題に戻って…、 の振り子状態のあげく何の進展もどこにも見当たらない、 と言うのが私の典型的な症状だ。 世間で言うところの「堪え性がない」性格らしい。 これもまた数学には向いていない。 数学者は蛇のように執拗でなくてはならない。 そうでなくては解くに値する問題が解けることはない。 最近、自分の性格や能力を省みるに、 つくづく数学に向いてないところだらけだと思う。

夜の読書。「白鯨」の岩波文庫版の下巻。 この「製油かまど」の章には、非常に深い数学的性質の記述がある。 「…サイクロイドの軌跡をえがいて滑降するあらゆる物体が、 (中略)、任意の一点からもっとも低い一点に達するのに要する時間はつねに一定である、 という驚くべき事実に、わたしは初めて気づいた」。 つまり、振り子時計の原理が正しく成立しているのは、 サイクロイドであって、普通の振り子運動ではない。 この blog を読んで下さっている方々には数学方面の人が多いと思いますが、 この事実を知っていましたか? 振り子が同じ時間間隔で反復運動をする、のは近似においてに過ぎない。 そして、実際に等時性を持つ曲線は、 言わゆる「アーベルの力学問題」を解くことで得られ、 その解はサイクロイド曲線になる。 このことを最初に導いたのは、ホイヘンスである。 ホイヘンスは実際に、 振り子の錘がサイクロイド曲線を描くようにした完璧な振り子時計を 作ろうとしたのだが、 単に普通の振り子に誤差を訂正させるようなギミックを入れる方が、 実質的には正確な時計が作れることに気付いた、と言う。 つまり、数学的に最もエレガントな解は時に現実的でない。 以上の数学については、「フーリエ解析大全 演習編(下)」 (ケルナー著/高橋・厚地・原訳/朝倉書店) を参照のこと(どうやら宣伝だったらしい!)。

Monday, May 15, 2006

いつもの月曜日

体調を崩している方が多いみたいだ。 連休疲れと気候の不順だろうなあ。 皆さんも、お身体にお気をつけて。 いつもの朝食をとり、 昨日の豆御飯をお弁当に詰めて出勤。 研究室で昼食のあと、12時半から卒研その2。 ミンコフスキの不等式の証明とか。 この前、別の用で Stein の特異積分の本を見ていたら、 Stein でもミンコフスキの不等式を二重積分で表現していた。 実解析の方面の人はそう書くものなのだろうか? 続いて、「数理計画法」。 零和行列ゲームがある線形計画問題の表問題と裏問題の対に他ならないことを示し、 簡単な具体例を与えて、線形計画法はひとまず終わり。 非線形計画法のイントロとして、多変数の微積分の復習。 グラジエントとか、ヘシアンとか。 続いて、「情報処理演習」。 scanf() とか。 scanf() は使わない方がいいのだが、 やはり入力が取れないと面白くないのでやむを得ず。 Y 先生と打ち合わせをしたら、if 文や for 文も講義でやったと言っていたが、 演習の後で、TA の人たちに聞いてみたら、 「全然分かってないみたいですよ」とのことだった。 また来週、演習でも解説することにしよう。 研究室に戻って、既に提出された40人ほどの演習レポートに返事を書く。 遅くなったので、生協食堂で夕食をとってから帰る。

夜はえいや、と、もうちょっと講義の予習。

Sunday, May 14, 2006

豆御飯

いつもの朝食。昼食は納豆パスタ。 この一週間、かなり身体が疲れているなと感じたので、 午後も夜も無理をせず、のんびりモード。

夕方、スーパーに買い出しに行く。 流石に季節だけにうすいえんどうが安かったので、 夕食は豆御飯にした。 こつは莢だけを煮てだしを取り、このだしで炊くことくらい。 煮込み御飯の類は、 具を別に作って最後に御飯と合わせるのが仕上がりは綺麗だが、 大抵の場合、具も最初から一緒に入れて炊き上げてしまう方が美味しい。 しかも手間がかからない。 だしで煮る類の料理はなんでもそうだ。 私のように自分で作って自分で食べる分には、 見かけにそれほど気を使わなくていいので、 常に後者の方法。 えんどうの豆をむいていると、 ああ子供の頃、豆むきを手伝ったものだなあ、と懐しかった。 当時はそんなに美味しいものとも思わなかったが、 今では時に豆御飯が食べたくなる。不思議なものだ。

一昨日の Grigoriev のエンドゲームスタディの解答。 白がクイーンを作るまでのところは(既に十分巧妙だと私は思うが)、実は序幕。 と言うのも、この段階で黒ポーンも七段目にいて、 後一歩でクイーンになれるので、両 K の位置からしてほとんどドロー。 しかしそこで唯一の勝ち手、8. Qd5+ が絶妙手。 例えば、実戦だと指してしまいそうな 8. Qa1 だと、 8. ... Kd2 から 9. Qa2 Kc3! が妙手でドロー。 これを避けるために、チェックで一度 K を追ってから、 9. Qa2! がポイント。 細かい変化は以下の解答譜を並べてみて下さい。 あまりの巧妙さに舌を巻くこと請け合い。 K + 1P 同士でこれだから、 エンドゲームの真実は時にとてつもなく深いところにある、 と言うことでしょうか。
1.Kf5! [1.a4 Ke4; 1.Kf6 Ke4 2.Ke6 c5] 1...Ke3 [1...c5 2.Ke5 Ke3 3.Kd5; 1...c6 2.a4] 2.Ke5 c6! [2...Kd3 3.Kd5 Kc3 (3...c6+ 4.Kc5) 4.Kc5 Kb2 5.a4] 3.a4 [3.Kd6 Kd4 4.a4 c5] 3...Kd3 [3...c5 4.Kd5] 4.a5 c5 5.a6 c4 6.a7 c3 7.a8=Q c2 8.Qd5+!! [8.Qa1 Kd2 9.Qa2 Kc3! (9...Kd1 10.Kd4! c1=Q 11.Kd3) ; 8.Qe4+ Kd2 9.Qd4+ Ke2 10.Qc3 (10.Qb2 Kd1 11.Qb3 Kd2 12.Qa2 Kc3!; 10.Qe4+ Kd2 11.Qd5+ Ke1!) 10...Kd1 11.Qd3+ Kc1 12.Kd4 Kb2 13.Qe2 (13.Qd2 Kb1) 13...Ka1! 14.Kc3 c1=Q+ 15.Kb3 Qb1+; 8.Qd8+ Ke2! 9.Qg5 Kd1] 8...Ke2 9.Qa2! Kd2 [9...Kd1 10.Kd4 c1=Q (10...Kd2 11.Qb2) 11.Kd3; 9...Kd3 10.Qb2 Kd2 11.Kd4] 10.Kd4 Kd1 11.Ke3 (or Kc3) [11.Kd3?? c1=N+!] 11...c1=Q+ 12.Kd3.

Saturday, May 13, 2006

ベッドは部屋の真ん中に

注文していた本棚が届く。 奥行 17 センチの薄型で、天井まで届き、 地震対策に天井に突っ張ることのできる「カシマカスタム」。 もう書庫の壁は全部使ってしまっているので、 次の手は壁際ではなく部屋の真ん中に本棚を置くか、 他の部屋を侵食するかしかない (既に LDK に二つ、寝室に一つ置いているのだが)。 結局、これからの拡張も考えて寝室の壁を使うことにした。 つまり、ベッドを壁際に置いていたのを部屋のど真ん中に移し、 壁全面を本棚用に使う。後、二つは置けそうだ。 問題点は窓からの光で本が痛むことだが、 寝室であることだし、できるだけカーテンを開けないようにしよう。 さらに寝室が完全に寝室専用になってしまって、 他のことができないことも難点。 読書と勉強は寝台で、チェロの練習は書庫でやろう…

夜は近所のワイン屋さんの勉強会。 ブルゴーニュの土壌についてなど興味深かった。 試飲では、 赤ワインばかりの中で一つだけ出た白ワインが美味しかった。 今日は仕事をする予定だったのだが、 疲れていることを理由に、完全休暇にしてしまったなあ。

Friday, May 12, 2006

ヨーグルトカレー

最近なぜか朝方、4時や5時頃に目が覚めてしまい、 もう一度寝るのだが、常に寝不足のよう。 連休の疲れがまだ取れないせいか、 それとも気候が一定しないからか。 いつものトースト、珈琲、オレンジジュースの朝食。 朝はスロウに暮らして、 昼食は近所の町屋インドカレー。 今日の野菜カレーはヨーグルトです、と言う。 興味は引かれたもののペアのカレーが豆でこちらも野菜なので、 これが失敗したらちょっと嫌だなと思い、無難に海老にしてみる。 辛くて夏向き。なかなかよろし。 そのまま、京大に向かう。 セミナまでの時間、食堂で数学を考えるつもりだった。 しかし、どうもうまく行かず集中力を失なって、 結局ほとんどの時間は「白鯨」(岩波文庫、中巻)を読みふけってしまった。

15時半から関西確率論セミナ。 数理研の K さんが、 フラクタル上のブラウン運動の分断点の話をしていた。 ここでも、SLE の話がちらっと出てきた。 最近、あちこちで SLE の名前を聞く。 数学はもちろん物理に近いあたりまで、 賢い人はみんな SLE に殺到している、と言う感じ。

エンドゲームが難しいと言っても、 流石にポーン一つずつなら間違えないよ。 見合いも、三角法も、レチのマヌーバも知ってるしさ。 と言う、そんな貴方に以下のミラクルなエンドゲームスタディ、 (N. Grigoriev, Shakhmaty v SSSR, 1932) はいかが。 白の手番で白勝ちを最後まで読み切って下さい。 解答は明後日! Grigoriev 1932

Thursday, May 11, 2006

ルーキー脱却への道

トーストと珈琲、オレンジジュースの朝食。 朝食時に少しずつ読んでいた、 Guardian の チェスコーナー の "The rookie" がついに連載に追いついてしまった。 明日からは一週間に一回しか読めない。残念だ。 出勤して生協食堂で早めの昼食(かけ蕎麦)を食べ、 12時半から「情報理論」。 Huffman コードの構成の例、 Huffman コードの最適性の証明に向けて準備。 その後は夕方まで図書館で講義の準備をして帰る。

やっぱりエンドゲームの勉強しないとねえ、 と思うことは思う。 もちろん、誰もがそう思っているのだろう。 節約はした方がいいし、毎日勉強した方がいいし、 早寝早起きした方がいいし、 適度な運動をした方がいいし、 エンドゲームも勉強した方がいい。 とは言え、正論は実行し難いものだ。

盤面はエンドゲームの初歩の初歩で必ず出てくるもの。 白の手番で、ドロー(引き分け)にせよ。 将棋の王将と同じキングと、 将棋で言うところの歩、つまりポーンが一つずつ。 ポーンは前に一マスずつ進み(最初だけ例外で二つ進める)、 取るときは斜め前の駒を取るので、 現在、白と黒のポーンが互いをブロックしていて動けない。 黒は白のポーンがいなくなれば、 あと二手で最終段に到達してクイーン(飛車と角を合わせた駒)に成れる。 さて、白の次の一手は。 キングが左か右のどちらかに一つ動くしかない。 問題になるくらいだから、答は逆説的な方で、 左に動く(1. Ka8!)のが正解。右に動くと黒勝ち。 ポイントは、黒が白ポーンを取ったとき、 次の手で白キングが f2 の地点、 つまり今の白ポーンの位置の二つ隣にいなくてはならないこと。 これで黒キングを隅に閉じ込めて、ドロー。 そして、そのタイミングで f2 に到達するには、 a7 から g1 にいたる斜めのラインに乗らなくてはならない。 よって、Ka8 から Ka7 を狙うのが正解。 言われてみればその通りなのだが、 こんな簡単な盤面ですら、 実際にその場で正着が指せるとは思えない。 ルーキー脱却の道は遠い。

Wednesday, May 10, 2006

うすいえんどう

簡単なお弁当を作って出勤。 昼食のあと、卒研ゼミのパート1、Williams のマルチンゲール本。 今日は確率変数から生成されるσ加法族の意味、 単調族定理、独立性など。 Williams の本は確かに持っているはずなのに(なにせ翻訳したくらいだし)、 どうしても見つからなくて、 ゼミで使う以上はやむをえず慌てて購入し直したら、 そのとたんに本棚の隙間から出てきた。 二冊あってもしようがないので、 まだ自分の本を買っていないという卒研学生にあげた。 これで確率論の勉学に励んでくれたまえ。 ゼミのあと、続いて学科会議。 今日は議題も少なく、短時間で終わった。 しばらくアクロスの図書館で読書などして、 バス停ラッシュをやり過してから帰る。 夕食は、豚肉と野菜を蒸してサラダを作り、キャベツパスタと。

実家の父からまた手紙が来ていた。 毎年、五月の連休にはうすいえんどうの炊き込み御飯をいただくのが恒例ですが、 今年はまだ豆の実ができていません、などと、 おっとりしたことを書いている。 でも、そんな恒例あったかなあ… 確かに季節には豆御飯が良く出たようには記憶しているが。 ところで、 関西では豆御飯と言えば、「うすいえんどう」を使うことが多い。 えんどう豆の一種なのだろうが、鞘を食べるものではない。 見た目はグリーンピースとほとんど同じ、 味はもっと繊細で甘みがあり、なかなか美味しい。 地味ながら侮れない食材である。 うすいえんどうは和歌山が有名産地の一つなので、 子供のころ色々な料理で食べたものだ。

Tuesday, May 09, 2006

リハビリ

先月の給与の端数をかけて、執事とチェス。 20分プラス 1 手 10 秒。白番、イングリッシュ。 相手の低姿勢ぶりに騙され、 図に乗ってぽんぽん指していたら、あっさり負かされる。 しかも気付いていなかった手ばかり指され、いいところなし。 盤の真ん中にクイーンを置かれてからは、チェスになっていなかった。 今年初の黒星。いかんなあ…

午前中は講義の予習。 ラグランジュの未定係数法を直観的に説明するところで、 ああ、そうだったのか、と我ながら勉強になった。 午後は少し自分の数学を考える。 しかし休暇のあとなので、 リハビリとして関係しそうなところ、 セゲーの直交多項式の本のある箇所を読んだ。 夕食は御飯を炊いて、豚肉とキャベツで回鍋肉風の炒めものなど。

Monday, May 08, 2006

不等式

今日はずいぶんと暑い。もう初夏のようだ。 そう言えば、もう立夏は過ぎたのだっけ。 猫も床に寝そべっている。

今日もまたかけ蕎麦を食べて、 12時半から卒研その2。 ヘルダーの不等式の証明とか、 ミンコフスキの不等式とか。 ミンコフスキの不等式とは通常、 Lp ノルムの三角不等式のことを言う。 しかし、Lieb-Loss の教科書では、 直積空間の上の二重積分の形で表現されていて、 積分とベキ乗の交換の間に成り立つ不等式になっている。 実際、この系として通常の三角不等式が導かれるので、 一般化であることは確かだが、 私にはやや技巧的に思える。 こんな不等式が通常の問題から必要になるとは思えないのだが、 どうだろう?私の理解が浅いのかも知れないなあ、 と考えながら、続いて「数理計画法」。 双対定理の続きと、ゲーム理論との関係。 続いて、「情報処理演習」。 変数と printf() など。

夕食は作ってあったマリナーラソースで、 トマトと茄子のパスタ。 そろそろ茄子が安くなってきた。 茄子は油と良くあう素材だ。

Sunday, May 07, 2006

柱の金貨

今日も早起き。 でも身体が疲れているのが分かる。 昨日、寝ているときに足がつったのがまだ痛い。 今日は夕方まで雨、 ずっと家で読書や書庫の整理などでのんびり過す。 またいつの間にか、寝室の床に本の山がいくつかできている。 書庫に移動させたものの、空いている本棚がもうない。 そろそろまた一つ、本棚を買わないといけないなあ (でも本棚を置く壁もなくなりつつある)。 昼食は御飯を炊いて、干し大根と高野豆腐の煮物、 若芽の味噌汁。 夕食にはオムライスを作った。

読書は、「白鯨」。岩波文庫版の上巻を読み終えて、中巻へ。 上巻の山場は、エイハブ船長が乗組員を集めて、 宿敵モービィ・ディックへの復讐という秘密の動機を明かすところ。 ここで、エイハブが金槌でマストに金貨を打ちつける有名な場面がある。 エイハブの片足を奪った白い鯨、 モービィ・ディックを最初に発見したものへの報奨金である。 原書を読んだときから、一体どうやって金貨を柱に取りつけるのか、 と疑問に思っていたのだが、 翻訳で読んでもやはり良く分からない。 とにかく、金貨を打ちつけた、としか書いていないのだ。 この前、F. ヴァルガスの「死者を起こせ」を読んでいたら、 このシーンのパロディがあった。 登場人物の一人が真犯人を見つけた者への報奨金に、 コインにわざわざ穴を空け、 そこに釘を通して、金槌で柱に取りつけるのである。 いくらなんでも、エイハブはそんなことをしそうにない。

Saturday, May 06, 2006

白鯨

ゆっくり休もうと思っていたのに随分と早く目が覚めた。 トーナメントで毎日、早起きしていたからだろう。 寝床で「白鯨」を読書。 ようやくエイハブ船長が出てきて、鯨学のところ。 以前に原書で読んだことがあって、 本当に内容が分かっていたのかなあ、 と思っていたが、 確かにどこも同じものを読んだなと言う記憶がある。 けっこう理解していたらしい。 船や漁に関係があるらしいと言う以外には、 何なのか全く見当もつかない単語が沢山でてきて、 飛ばし読みに近かったように思っていたけれど、 良く考えれば、 日本語でも意味が良く分からないですよね、例えば「支檣索」とか。 シショウサク、で読みがあっているのかも自信がない。

「白鯨」と言えば、数学者のグロタンディエクにこんな逸話がある。 グロタンディエクが初めてアメリカに渡ったとき、 英語がほとんどできない女性を連れて行った。 そして、その彼女に「これで勉強すればいい」と言って、 読み古した「白鯨」のペーパーバックを渡したそうだ。 このエピソードの意味するところはグロタンディエクが、 (1)「白鯨」が好きだったということなのか、 (2)吝嗇だったということなのか、 (3)天才は自分を基準にしてしか考えられないと言うことなのか、 解釈は難しい。

午後も読書とか、猫と昼寝とか、 ChessBase(Light) で棋譜を整理とか。 休日気分を満喫。 夕食はマリナーラソースを作って、アラビアータスパゲティ。

Friday, May 05, 2006

ルーキー3

三日目。第七局、 自分でも信じられないことに 730 点差の対戦相手に、 しかも黒番で勝った。 原因は二つあって、まず第一に相手が風邪をひいていた。 昨日も午前中は起きて来られなかったくらいだったそうだ。 そう言えば、平行開催している全日本選手権出場者を除いた、 オープン参加者でほとんど最高のレイティングなのに、 勝ち点が変に低いと思った。 第二に対局前に、昨日対戦した O さんに、 次の対戦相手の情報を教えてもらえたこと。 ほんの数分の立ち話で、 単に彼はこのギャンビット定跡が得意だよ、と言うだけなのだが、 相手が何をしてくるか知っていることはクリティカルだ。 対局内容は相手が既にポーンを捨てている上に、 さらにビショップを捨て、超タクティカルな中盤。 対局後の検討でも、こうすればさらにこれを捨ててメイト、 こうならさらにこっちを捨ててクイーン落ちと言った感じで、 自分でも何故この地雷原を切り抜けられたのか分からない。 とにかく、ルークとビショップを残したエンドゲームに落ちつき、 これもまともにやれば負けていたに違いないのだが、 私からのトラップが決まってビショップが落ち、 さすがにその後のエンドゲームは危なげなく勝った。

しかし、私の運もここまで。 この局の検討が面白くて検討室であれこれやっていたら、 昼食の時間がなく、自動販売機の珈琲だけを飲んでそのまま最終局。 レイティング差 470 点ほどの相手とまた黒番。 午前の激闘でもう集中力も体力も限界。 しかも、カフェインの濃いお茶を飲みながら指していたら、 気持ちも悪くなってきた。 簡単なポカで序盤で 1 ポーン失ない、 なんとか踏み留まったものの、 お互いにナイトとビショップを一つずつ持ったエンドゲームになり、 これはもう疲れている方が負け。 そんなわけで、合計 3.5 ポイント。 例のドロー提案に応じていれば、 4.0 ポイントで B クラス入賞していたんだがなあ… とは言え、 昨日の O さんとの満足の行く敗局と、 今日のややずるいながらミラクルな勝局があり、 楽しいトーナメントでした。

Thursday, May 04, 2006

ルーキー2

今日こそはブランダーは指さない、 と心に誓い、対局と対局の間は、 ガットに話しかけるテニス選手のように自分に暗示をかける。 一局目、昨日の相手よりさらにレイティングの高い敵に、白番であたる。 20手ほどで優位に立ったが、さすがにしぶとく容易に諦めてくれない。 40手近くまで指してようやく勝つ。 午後に入って、二局目、これもまた同じく 200 点ほどのレイティング差の黒番。 きわどいエンドゲームを競り勝つ。 良い感じの勝ち方をして、気合の二連勝で復活。 5 ゲームで 2.5 ポイントのタイに戻す。 よし三連勝するぞ、とさらにテニスラケットに話しかけつつ(比喩)、 6ラウンド目の対戦表を見に行くと、なんと次の相手は通信チェスの超強豪 O さん。 直接お会いするのは初めてだが、その強さは良く知っている。 実は通信チェスよりOTBの方が古いんだそうだ。 そして私との今日の時点でのレイティング差は、 対戦表を見るに約 600 点。勝負にならない。 この対戦組みは何かの間違いじゃないのか、と思ったが、 どうもこれが「Zスイス式」トーナメントの罠のようだ。 しかし、レイティング差が開きすぎているときは、 下手の方が極端に得ではある。 負けてもほとんど誤差だし、勝てば儲けものなので、 思い切って指せる。

で、結果は残念ながら負けたものの、自分の実力以上に指せた。 途中までひょっとしたら勝つんじゃないか、と思っていたくらいだ。 ただ中盤で1ポーンのただ取りをうっかり見逃したのが最後まで祟ったものの、 その後もテンションを高く保てたし、 二時間半の苦闘の末の悔いのない負け方だった。 やはり、強い相手と指すと楽しくいいな、と思いながら、 帰る前に明日の組み合わせ作成作業を覗き見すると、 明日の第一局目の相手とのレイティング差は、約 730 点だった。 物事には程度というものがある。 明日までに作り直してくれていると良いのだが。

Wednesday, May 03, 2006

ルーキー

今日から三日間のチェストーナメントで東京。 もうしばらく一日のコースで練習した方がよいのだが、 ちょうど連休でもあるので、思い切って本格的なトーナメントに出てみた。 レイティングで分けられているので B クラス、 もちろんその中でも一番下の方だ。 今日は二連敗の上に、信じられないようなポカを出してしまい、 それがあまりに凄いブランダーだったので、 やはりこの年になってから OTB (over the board)を始めるのは無謀過ぎる、 としばらく落ち込んだ。 なんと、相手からのドロー提案に対し、 きっぱり、「ノー!」と拒否して指した一手がルークただ取られ。 明日から気持ちを切り替えられるかが問題。

盤面を挟んでの通常の対局では、 いかにミスを避けるかとか、 いかに集中力や闘争心を途切れずに保つかとか、 いかにあきらめずに悪い盤面を耐え続けられるか、とか ある意味で盤外の力と技術が半分どころか、 ほとんど全てなんじゃないかとさえ思う。 そういうことを知ってみたい、 と思ったのが OTB トーナメントに出始めた動機なのだった。 その意味では、初日から大変に勉強になった。 いろんなことを学ぶには人生は短か過ぎるし、 だからあれこれやると何もかも中途半端になるんだけど、 それでも私はいろんなことをしてみたいんだ。 死刑を命じられたソクラテスは毒人参を飲んで死を待つ間にも、 フルートの練習を始めたというじゃないか。

Tuesday, May 02, 2006

逆色チェス盤

ドバイの羽生 vs Miroshnichenko 戦。 シシリアンのリヒター=ラウザーか… そんなレイザーシャープなラインを選ぶということは、 余程の準備をしているということだろうなあ。 将棋を指す他にそんな時間とエネルギーがあることに敬服。

ところで将棋盤はどのマスも同じ色だが、 ご存知のようにチェス盤は黒と白(とは限らないが、 とにかく暗色と明色)の「チェス盤模様」になっている。 この模様は大変便利なものではあるのだが、 本質的には大した問題ではないはずだ。 しかし、この模様はプレイヤーの思考方法に入り込んでしまっていて、 その証拠に、チェス盤の黒と白を逆にしたチェス盤で対戦すると、 トップクラスのプレイヤーでも(だからこそ、かも知れない)読みがおかしくなるそうだ。 Krogius の "Chess Psychology" (「チェスの心理学」)によれば、 プレイヤーたちにこの逆色チェス盤でキングズインディアン定跡の典型的な盤面を見せ、 その盤面評価とプランニングをさせたところ、 通常より弱い、あるいは間違った判断しかできなかったと言う。 チェス盤を90度回転して使えば簡単に実験できるので、 興味のある方はお試しあれ。 ちなみに正しい配色は、手前の左隅のマスが黒。 私は引用でこの話を読んだので、クロギウスは読んでいない。 他にもいろいろと面白い話が書かれているそうで、 是非読みたいとは思っている。

Monday, May 01, 2006

ブルーブラッド

8 時起床。 寝床でしばらく「白鯨」を読んだあと、 クロワサンと珈琲、オレンジジュースの朝食。 生協食堂で早めの昼食をとって(かけ蕎麦)、 12時半から卒研ゼミのパート2。 イェンセンの不等式、ヘルダーの不等式など。 続いて14時から「数理計画法」。 罰金法と二段階法、双対定理。 双対定理の証明を省略するかどうか随分迷った上に、してしまった。 後でやはり後悔。 ごちゃごちゃしただけで教育的意味がなかったような気がする。 続いて、「情報処理演習」。 C 言語プログラミングの流れなど。 人数も多いし情報演習だからある程度は仕方がないが、 騒がしくて大変だ。 夕方、ぐったりして帰る。

生協でハンドラーの新刊、「ブルーブラッド」(D.ハンドラー著/ 北沢あかね訳/講談社文庫)を買って帰る。 ハンドラーと言えば気障でお洒落なゴーストライター、 ホーギー(と愛犬ルル)のシリーズだが、 これは新シリーズらしく、主人公のキャラクタも思い切って変えてきたようだ。 楽しみにしていたのだけど、積読がたまってきたので、読めるのはいつになるか。 最近、読書ペースが落ちてきたなあ。