石垣の数式
8 時起床。今日も京大正門前へ。 朝は最適輸送問題の第三回レクチャーと、 ラフパス入門の第三回レクチャー。 昼休憩の間は、進々堂で講演の準備などをした。 今日の午後はヴァラエティに富んだ話が色々あって、 お茶の時間の後、今日の最後の招待講演は私。 相変わらずひどい発表だったが、まあ災害は避けられたか。 講演の後、すぐに L 先生がやってきて、 「なんて控え目なんだ。どうしてもっと非線形フーリエ変換の話をしない」 と怒られたが、まあお喜びのようだった。 そのあとは会場に誰もいなくなって、 オーガナイザに追い出されるまでずっと数学の話をされ、 結局バス停まで一緒に行くことになった。
もちろん一方的に数学の話が続く。 歩きながら、ここは紙に書かないと良く分からない、 とおっしゃり始めたのだが、そのまま聞き流していると、 ついに L 先生は立ち止まって石垣の岩に指で数式を書き始めた。 どうやら書き出しは何かのフーリエ変換らしかったのだが、 見ている内に既に数式は二行目に入ったらしくて、 もう何やら分からない。 そこは私も伊達に一年間オックスフォードにいたわけではないので、 ずばり、「スミマセンガ、てりー、ソレ見えマセン」 と途中でやめてもらった。 バス停に到着しても勢いは止まらず、 L 先生が乗るバスが来ても、まだ話している。 「さっきの講演の条件は微分についてだったが、 F のダッシュダッシュを考えると二次のラフパス条件に…」 「てりー、バス来マシタ」。 L 先生は後ろ向きにバスに乗りつつも、 バス停で手を振っている私に向かってまだ大声で話し続けている。 「これから予想するに三次の微分を使った条件で三 (ぷしゅー:バスのドアの閉まる音) (次のラフパス条件が得られることは帰納的に…)」 あたりでバスが遠過ぎて姿が見えなくなった。 ドアが閉まったあとは身振りだけしか分からなかったが、 多分、上の通りだろう。 しかし、バスの中の他の乗客はどう思っていたのだろうか。 そんな L 先生を見送ったあと、 百万遍まで歩き、バスで家に帰る。
19 時前に帰宅して、近所のバーに電話を入れて、夕食に行く。 シャンパーニュを一杯。 一仕事終わったのだから、これくらいの贅沢はいいだろう。 ラタトゥイユのキッシュと、鱧のソテーのマデラソース。 20 時半くらいに帰宅。 MSJ-SI は来週まで続くが、自分の講演が終わってあとは気楽。