公園のチェス王
スーザン・ポルガーのブログ で紹介されていた、AFP (フランス通信社)の "Homeless man is chess king of Washington" (11 Oct. 2007) と言う記事が大変面白かったので、以下に翻訳してみた (オリジナルはこちら)。 ちなみに今夜は会食があるので、 夜の更新はありません。
彼はベンチで寝起きしているが、 ワシントン・デュポン・サークル公園にいる日はチェスの王だ。 彼はこの公園の石作りのテーブルのチェス盤上の妙手で、 初心者からマスターまでを同じように魅了している。
トム・マーフィ(49歳)は通行人に、 数ドルと引き換えに彼の驚くべきチェスの知識を教えることで、 ささやかな収入を得ている。 「彼はチェスのエキスパートの称号を持っているんだ。 これはアメリカ国内の称号では二番目に高いものだから、 かなりのプレイヤーだと言うことになる」、 とワシントン・チェスセンター長のデイヴィッド・メーラーは言う。 数学と科学を専攻していたマーフィは、 アマチュアチェス界の有名人である。 デュポン・サークル公園をニューヨークの有名なワシントン・スクェア後で もっとも有名で格式あるチェス公園にしたのは彼だ、 と言うチェス愛好家もいる。 「数学的な方程式はいつも私を夢中にさせてきた。 それに仲間たちと、この雰囲気と、広がる大空がつけくわわれば、 ほとんど抵抗できないさ」とマーフィは言う。 学生、医者、法律家、酔っ払いたち、 あらゆる通行人を相手にチェス盤を見つめながら。
おしゃべりで聡明なマーフィは北キャロライナ、 フィラデルフィア、ペンシルヴァニアで育った。 このうちの二つは有名なチェスの中心地である。 そして、マーフィは「ブリッツ(電撃戦)」と言う名前で知られる チェスの高速対局を専門にするようになった。 通常の対局の加速版であるこの対局では、 各プレイヤーに全部の手をあわせて 5 分間の持ち時間しかなく、 一つの対局が 10 分以内に終わる。 「ブリッツの面白さは、おそらく 2 分か 5 分の間に、 残りの長い人生にもずっと残るような芸術をやってのけられるかも知れない、 ってことだ」と彼は独特のスタイルでチェスの基本を語る。 彼が言うには、このゲームは三つの原則: キングの安全、中心を求めて戦う、全ての駒に仕事をさせる、 で成り立っている。 恵まれない子供たちに十五年間このボードゲームを教えているメーラーは、 「ブリッツでは、彼は非常に強いプレイヤだ。 彼は頭の回転が非常に速く、極めて素早くコンビネーションを見つける。 読みがとても速いね」と言う。
マーフィは数々のチェストーナメントで勝ち、 2005 年の世界ブリッツ王座戦を 15 位で終えた。 彼はいつも一文無しと言うわけではないが、 酒への耽溺のためにしばしば路上生活をすることになる。 「エゴの追求と精神(訳注:spirit, アルコールにかけているのかも知れない) の追求は、時にぶつかるのさ」と彼は説明する。 「私はちょっとばかり飲むのを楽しみ過ぎるんだ」。 彼はアルコール依存症治療の匿名ミーティングに参加しているし、 「飲まなければ、私のチェスはもっと良くなるだろうね」 と認めてもいる。 マーフィはチェスの世界でさらに上達して、 マスターの称号を得ることを目指している。 「私はこの道を続けて、 マスターのレイティングを得たいと本当に思っているよ。 なぜなら、チェスの教授料を値上げできるからね」と彼は言う。 「もうすぐ感謝祭のトーナメント(11 月 22 日)が フィラデルフィアであるんだ。うまくいきそうだよ」、 と彼はつけくわえた。 今のところ、このホームレスのチェス教師は、 一時間あたり 20 ドルから 30 ドルの値段をつけているが、 これは彼が一回の対局あたり誰でも 2 ドルから 5 ドルで相手している ことからすれば妥当だろう。 「グランドマスターは一時間 100 ドルとか 200 ドルで教えているし、 マスターなら最低でも 50 はもらえる。それなら悪くないよね」 と彼は言った。
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