古い教科書
生協食堂で昼食を食べ、 12時半から卒研ゼミその1。 ボレル・カンテリの補題の応用、 与えられた分布を持つ独立な確率変数の無限列が確率空間の上に構成できることなど。 夕方は学位論文公聴会と学位審議会のため、教室会議はなし。 これ幸いと他の雑用をして後、家に帰る。 夕食は豚丼。夜、講義の予習を少し。
卒研生の一人に初等解析の復習用の教科書として「解析概論」 を勧めておいたら、やっぱりあれは嫌だと言う。 何故かと尋ねると、「書き方が腹立たしい」とのこと。 確かに古い本だから日本語が床しいことは確かだが、 言うに事欠いて、高木貞治に腹立たしい、って。 「なんとなれば」のような古い言い回しがいけないのか、 それとも、「~せよ」と言った命令文がいけないのか。 兎に角、指導教員が温厚なこの私で本当に良かった。 他の先生なら、どんな雷を落とされているか想像するだに恐しい。 しかし、数学を学ぶ学生は普通、 解析概論を読むと簡潔で無駄のない文章とロジックに心が洗われる、 などと言うものだったがなあ。 まあ、数学の教科書とは言え、 段々と現代的な語り口にしていく必要はあるかも知れぬ。
丁度、今日は amazon に注文していたチェスの棋譜集が届いていた。 前にトーナメントに出たときに、 ベテラン選手とお話しする機会があって、これはチャンスだと思い、 「おすすめのチェス本はなんですか?」と尋ねたところ、 「ブロンシュタインが注釈した 1953 年チューリッヒ大会がいいです」 (渋い!) と即答され、道は険しいなあ、と思ったことであった。 勿論、私としては、 寝転んですらすら読めるくらい分かり易くて、目から鱗なことが一杯書いてあって、 読むとすぐ強くなれるような秘密の虎の巻を期待していたのだ。 これは「いい解析の教科書ないですか」と尋く学生と同じだ。 実際、ブロンシュタインの注釈は腹立たしいかも知れない。
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