Sunday, November 09, 2008

ディキンスン / 扁炉

8 時起床。シリアルと珈琲の朝食。今期で初めて暖房を入れた。 私は寒さには強いので、厳冬にしか暖房の必要は感じないが、 暖房機のチェックを兼ねて朝方だけ。 カフェオレを作って、寝床に戻りしばらく読書。 ディキンスンの「毒の神託」(浅羽莢子訳/原書房)。 ディキンスン作品の特徴である極端な設定。 小さな石油王国が舞台で、 それ自体が我々にはエキゾチックなイスラム文化だが、 さらにその領内に、 完全に隔絶された独自の文化と特異な言語を持つ少数民族「沼族」 が住む沼地がある。主人公は心理言語学者のイギリス人で、 王のオックスフォード時代の学友だったことが縁で動物園を任され、 天才チンパンジーに言語を教えることと、「沼語」の研究で暇つぶしをしながら、 拉致同然の生活を送っている。 ディキンスンは沼語の特異な文法まで詳細に説明しながら、 異様な舞台設定を徹底的に書き込んで行く。 ディキンスンはいつもこの調子である。

そのあとは家事。二週間分の洗濯とか。昼食にはカルボナーラを作った。 疲れをとるため今日は一日何もせずに単なるお休み。 湯船で長々と読書。天気が悪いので、日差しが弱いのが残念だが。 さらに昼寝。と言っても、2 時間近くも熟睡してしまった。 スーパーに食材を買いに行く。ついでに珈琲豆も購入して、帰宅。 夜は今期初のピェンロー(中華風の白菜鍋)にした。 季節にはまだ早いものの冬気分だったので。 私の冬の定番メニュで、白菜の一番美味しい頃がよろしい。 妹尾河童で知った料理だが、私の作り方はさらに単純。 椎茸でだしを取りさえしない。レシピと言うにも馬鹿馬鹿しいくらいで、 白菜と鶏肉と豚肉を鍋に入れて煮て、途中で胡麻油をさし、 日本人の感覚ではちょっと煮過ぎなくらいに煮たら、 最後に春雨の類を入れて完成。 良い胡麻油があるなら、仕上げの香りづけにちょっと追加するとよい。 これを椀の方で、塩と一味で好みの味つけをしながら食べる。 あとは必ず雑炊にする(こちらが本番)。それだけの料理なのだが、 白菜の季節だとこれがとても美味しい。

夜はまた、ディキンスンの作り上げた奇妙な世界を読んで過ごす。 沼語には因果関係を表すための単語や文法構造がなく、 原因や結果にまつわる概念もない。 沼地は閉ざされた小さな世界で、 ほぼ全てのものが具体的に知られているため固有名詞を持ち、 したがって普通名詞もほとんどない。 そんな言語で考えるとはどういうことなのだろうか……、 などと考えつつの冬の夜。