時間を、風に吹き上げられるテーブルクロスのように
蒸し暑い。 昼間は晴れていたが、 近畿も今日で梅雨入りらしい。 また生協で昼食ののち、12 時半より「情報理論」。 情報源の直積、 シャノンの第一定理の一般的な証明、 簡単な具体例について直接的な計算で第一定理が成立していることを確認、 など。 生協書籍部で注文していた本、 「神話論理I:生のものと火を通したもの」 (レヴィ=ストロース著/早水洋太郎訳/みすず書房)、 を受け取って帰る。 夜は食事を作る元気もなく、一週間の疲れを抱え、 癒しを求めて雨の降る中を近所のバーへ。 静かに食事しつつ、 セネカの「幸福な人生について」(岩波文庫「人生の短さについて」所収) を読む。 セネカは癒される。
夏休みには「悲しき熱帯」を読み返すくらい、 レヴィ=ストロース好きなのだけれど、 その理由はほとんど文学か、文章の芸術として面白いからで、 これが本当に学問として成立しているのか、 哲学や思想としてそんなに本当に偉大なのか、やや疑ってはいる。 むしろ、(けして負の意味ではなくて) アマチュア的なところが偉大だと思う。 アマチュアでなくて誰が神話についての大著を、 音楽と料理のアナロジーで書くだろうか。 神話についての本の章に、 「行儀作法についてのソナタ」なんて名前を付けてしまうところがいい。 序文で長々と音楽について語って、 「音楽は時間を、風に吹き上げられるテーブルクロスのように、 捕まえ折り返す」、なんて書いちゃうところも素敵だ。 この文章は書けそうで書けない。 そして、 この本全体を「音楽に捧げる」なんて献じてしまうところも凄い。 まさに、アマチュアだ。 とは言え、 普通の人にはこんなぶ厚くて、 論理的には限りなくでたらめに近いことが一杯書いてあって、 一冊 8 千円もする本はお薦め出来ない (本当に、みすず書房って…)。 私はファンの贔屓目でこの本を買ってしまったし、 「神話論理」の続刊も出たら買いますけど。
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