「…それに、このさき残っている時間は、今までより少ないかもしれない。そんな状態で、 これまでの積み重ねをすべて捨ててしまうことは、なかなかできるものじゃない」 「すべてを捨てるわけではないわ。自分はここにいる。叔父様が三十六年間で築き上げたほとんど すべてのものが、今、この車に乗っているのよ。しがらみというのは全部、叔父様以外のものです」
帰宅したらいつになくクロソフスカヤが甘い声でなついてくるので、 今朝、キャットフードが切れていて御飯を少ししか与えなかったことを思い出した。 面倒だがやむを得ない。 自分の食事は後回しにして、 大宮駅の前のコンビニエンスストアまでキャットフードを買いに行く。 再度、帰宅してクロに食事を与え、 しめじとベーコンのスパゲティを作る。 食べるものを食べたら、何のお愛想もしてくれなくなった。 これだから女って(差別的発言)。 「この雌猫!」と言いながら、ブラッシングをしてやる。
「現実のグラデーション」
posted by Keisuke HARA at 9:01 PM
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老猫一匹との隠居暮らし。著書に「測度・確率・ルベーグ積分」(講談社)、訳書に「世界を変えた手紙」(デブリン著/岩波書店)など。
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