河骨 / Ito33
終日、雨がち。 もう九州南部では梅雨入りしたらしい。 昼時に小雨の中を散歩した。 ふと、「水の上に咲くは河骨わが愛を錘となして一夜ただよふ」 と言う塚本邦雄の歌を思い出した。 暦上は河骨(かうほね)にはちょっと早いはずだが、 雨の日の暗い空の下はもうそれくらいの雰囲気。 以前はこの歌があまり好きでなかった。 河骨のイメージを過不足なく使い切った感じが賢しげだし、 メロドラマ的過ぎるようにも思えたので。 しかし今では、いい歌だなあとしみじみ思う。 年をとるとはこういうことなのだろうか。 今日の午後は京大でのセミナが休みなので、 比較的のんびりと自分の仕事。 夕方、買い出し。近所のワイン屋さんでチーズも買って帰る。
この前、院生室、またの名を「数ファ研」に顔を出したときのこと、 Y 田先生に、ル・モンド紙に最近(5月16日)掲載された エルカルイ女史(Nicole El Karoui)の大きな紹介記事 "La boss des mathes" を翻訳したものをいただいた。 確か、先の三月にも、 ウォールストリート・ジャーナル紙に載って話題になっていた。 エルカルイはポリテクとパリ第六の数学教授で、 専門は確率論と数理ファイナンス。 R 大学でも毎年三月恒例の国際シンポジウムに来日していただいたことがある。 雰囲気はまさにフランス流の「大マダム」で、かなりの貫禄だった。 ウォールストリート・ジャーナルによれば、 世界のクォンツたちの三分の一がフランス人で、 この流れの立役者がこのエルカルイだ、とのことだ。 ところで、このル・モンドの記事で私の目を釘付けにしたのは、 彼女のことではなく、次の一文。 「…と説明するのは、"Ito 33" と名付けられたデリバティヴ商品のポートフォリオのモデルに特化した ソフト専門家の協会の設立者の Elie Ayache 氏で…」(翻訳は Y 田先生による)。 "Ito 33" なんていうデリバティヴがあるのか! しかも、それ専用のソフトウェアまであり、 その専門家の協会まであるらしい。 勿論、この Ito は伊藤清先生の Ito でしかあり得ない。 一体、どんな仕組みの商品なんだろうか。
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