普通の生活
最近ずっと早起きしていたので、同じ時間に起きてしまった。
しかし、今日はずっと寝ていても、
いささかの差し支えもなく、誰一人として邪魔をする者はいないのだ。
邪魔者がいたら、袋に詰めてボスポラス海峡に投げこんでやる。
ああ、そうするとも。原家の人間はすると言ったことの二分の一はする。
残りの四分の三については、我々だって万能でないと言うことだ。
冷房の効いた部屋で悠々と二度寝し、
とは言え、9 時頃には再び爽やかに目が覚めたので、
冷房の効いた部屋の中から表の様子を観察した。
太陽は燦々と輝き、小鳥はピーと鳴き、
猫は寝室の前の踊り場でニャーと鳴いている。
居間兼ダイニング兼キッチンでクロに朝食を与え、自分の朝食に珈琲。
神は天におわし、世はこともなし。
とりあえず一週間分の洗濯をする。
洗濯は洗濯機に任せて、読書をしたりで午前を過す。
昼頃に執事が煙のように居間に現れると、今日も仕事だと言う。
H:「なんと。こんな麗しい日に仕事をするだなんて。
きっと法律で禁じられているんじゃないかな!ハハハ、
太陽は燦々と輝き、小鳥はピー、猫は…」
B:「小鳥なんて鳴いてませんから」
H:「そうかな、さっき確かに聞こえたんだが…」
B:「小鳥だってこんな日には日影でぐったりしてますよ」
執事はこの家の主人である私を、
まるで私が音を立ててスープを食べたか、
給仕にウースターソースを頼みでもしたかのような目で眺めると、
煙のように消えて仕事へと帰って行った。
自己申告なので本当に仕事とは限らないし、また青春イベントかも知れない。
誰の背後にも私の知らない私生活と言うものがあって、
それが私にはとても不思議で奇妙なことのように思える。
昼食は近所のベンガルカレー屋でテイクアウトして、
自宅でまともな器に移しワインとともに食す。ローヌのシラー。
食後は昼寝。
夕方になって、食材の買い出し。 近所のワイン屋でコンシェルジュの M さんに選んでもらって、 ニュージーランドの白ワイン。 専門家が散らし寿司や手巻き寿司にもあうだろう、 と言うので、スーパーで鰹の叩きを買って、 夕食は鰹の叩きの散らし寿司にする。 だしを引いて、卵を落としたお澄ましも作る。 ワインとの相性はばっちり。 私は専門家の意見には常に敬意を払う。昔風の人間なのだ。 夜、お風呂あがりか、または湯船で飲もうと思って、 マティーニを作ろうとしたのだが、ベルモットが切れていた。 また買っておかねば。
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