フィアンセの要求
アイン・ランド「水源」読了。面白かった。ストーリーは完全にメロドラマ。 午後一時半からの東海テレビ制作連続メロドラマと言うか、 「俺の空」と言いますか…兎に角、千ページがあっと言う間に読める。 本当に連続メロドラマ化したら、 「真珠夫人」どころではなく大ヒットしそうだ。 そして、ここで描かれている思想については、 若者には刺激が強過ぎるかな、と言う気もするし、 若者でなければ冷笑的に読み過ぎてしまうだろうな、 と言う気もする。 我々がランドよりかなり後の世界に生きているので、 どうしても類型的な思想に翻訳してしまうからだろう。 しかし、実際はランドの方が根っこなわけで、 ソ連から亡命してきたランドの怒りや憎悪、歪んだ欲望や、 倒錯や混乱がごちゃまぜになったものを、そのままに味わうべきだと思う。 こんな奇妙な本は珍しい。凄い小説だ。
今日は朝から雨。入試関連もほぼ一段落して、 国際シンポジウムまでの中休みモード。 昼食には焼きそばを作った。 確定申告書の清書をしたり。 今年は何故か安いなあ、と思っていたら清書の段階で間違い発見。 やはり、例年と同じくらいの額の追加支払いだった。 夕食は御飯を炊いて、回鍋肉と若布のスープ。
執事との会話。新居探しが進展していないそうだ。
「うーむ、時期が時期だからかな?」
「いえ、そうじゃなくて、フィアンセの要求が高いのです」
「大変だな。で、どんな風に?」
「まず総フローリングじゃないと駄目だそうです」
「マンションとかじゃ今時、全部洋間だろう。
あ、でも一室くらい畳だったりするのか?茶室?」
「私の調査によれば全部洋間と言うのは案外ありません。
それに押入も嫌だそうで」
「洋間だったら自動的にクローゼットじゃん。論理的には一つの要請だな」
「それがそうでもないんです。クローゼット風でも、引き戸だったり、
開けると上下に分かれてたり」
「そういうものかねえ」
「そういうものみたいです。それに 2LDK 以上でないと」
「ま、そこは二人暮らしだからね。なるほど、案外ないものかね…
あ、ちょっと待って、良く考えたらこの家がそうじゃん。総フローリングだし、
総ウォークインクローゼットだし、3LDK だし。
僕の方が出て行ってやろうか?サーヴィスで猫もつけとくよ」
「いいえ、博士の方が新居探すの大変でしょうから。それに猫はいりません」
「いや、僕は住居に要求ほとんど無いからすぐ見つかる。どこだっていいよ」
「それは良く承知しておりますが…あ、それから猫はいりません」
「遠慮しなくてもいいのに」
「フィアンセも猫を飼いたいとは言ってるんですが、その猫はちょっと…
では失礼します」
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