謎の料理人
夕食に肉じゃがを作る。 野菜と豚肉はそれぞれ熱湯をかけてさらし、 肉の脂身を使って野菜を炒め、 水で薄めただしで煮る。味つけは醤油と味醂のみ。 最後に肉を戻して少し煮る。やや熱がさめたころが美味しい。
料理は科学であると同時に、
どこかしら魔術的なところもある。
私の好きな小説に、「料理人」(ハリー・クレッシング/一ノ瀬直二訳/ハヤカワ文庫)
と言う「奇妙な味」ジャンルの物語がある。
私は傑作だと信じているが、あまり人から聞いたことはない。
コブと言う名前の小さな平和な町に、
黒づくめの服を着た、
異様に背の高い痩せた男が自転車に乗ってやって来る。
コンラッドと名乗るその男は超絶的な料理の技術を持ち、
町の人々の心を静かに捉えてゆく。
それと同時に、町は奇妙に変化してゆく…
と言う、それだけのお話である。
原書はランダムハウス社から出版されたが、
著者の情報は、変名であると言うこと以外に何も明かされていない。
よほど、この小説の出版に自信があったことは確かだろう。
こんな小説を書けるところからして、
有名作家が別のペンネームを利用して書いた可能性が高いと思う。
ただ私はアメリカ文学に疎いので、誰が正体かを推理することはできない。
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