Thursday, March 08, 2007

若き君への手紙

8 時起床。朝食は珈琲のみ。 昼食は御飯を炊いて、麻婆豆腐を作って麻婆丼。 午後からキャンパスへ。あれこれ雑務。 生協書籍部で、「若き数学者への手紙」(I.スチュアート/冨永星訳/ 日経BP社)を買って、車中で読みながら帰る。 読了。イギリスの大学に勤める数学者である主人公が、 アメリカに住む姪のメグからの相談に答える手紙の形で、 数学と数学者の世界について語る、と言う仕掛け。 この "Letters to a Young ..." はシリーズらしくて (勿論リルケの「若き詩人への手紙」のもじりである)、 俳優編、シェフ編、弁護士編、などもあるそうだ。 「若き数学者への手紙」では、 最初メグは進路に迷う高校生で、大学に入り、 数学科に進み、大学院に進学し、ポスドクになり、 助教授になり、最後にはテニュアを得る。 大変に面白く読めた。数学に興味を持つ一般の人々にも、 数学の世界に入ろうとする学生たちにも勧められる本だと思う。 ただ、これは長所でも短所でもあると思うのだが、 ちょっと「軽い」かな、と思った。 この設定で書くなら、 数学者と言う道を選び、そこで生きていくことの、 大変シリアスで重い話をいくらでも書けるはずで、 もうちょっと掘り下げても良かったのではないか、と残念だ。 (と、私が言っても説得力はないだろうが…) でもこれは著者のキャラクタもあるんじゃないかな、と思う。

イアン・スチュアートはイギリスの Warwick 大学数学科の先生で、 私が半年、Warwick 大数学研究所に滞在していたときに、たまに姿を見かけた。 大変忙しくて滅多につかまらない、と言われていたが、 「動物の行動と数学」 と言った感じのシンポジウムを組織していたときに見かけたのと、 一番後ろの席で何かの校正をしているらしき姿を定例セミナで見たことがある。 一度、セミナの後のワインつき軽食会でも見かけたかも。 最初はリー環論から出発したらしいが、 主にありとあらゆる境界領域的な研究をしている。 また啓蒙活動にも熱心で、沢山の一般向けの本を書く一方、 マスメディアへの露出も多い。 それどころか、「ディスク・ワールド」と言う(イギリスでは) 有名なファンタジィ小説シリーズの著者と 共著でディスク・ワールドものを書いていたりもする。 何となくこれで雰囲気は伝わったと思うが、けして普通の数学者ではない。 誤解を怖れずに言えば、 溢れる元気と才能の溢れるがままに、 田舎の大学を拠点に好き勝手やってる才人と言いますか、 私などは、ある意味、これこそ本当の数学者、 科学者と言う気もしないではないが、そう思うのは少数派だろう。