Monday, February 26, 2007

チョコ・フォンデュ / 統計学ジョーク

地獄起きしてキャンパスへ。 Y 田先生のフランス語にしか聞こえない英語のスピーチで開幕。 さすがストラスブール学派。 今日の講演は、Marne-la-Vallee の H 先生による、 株価などのデータを短い間隔、中くらいの間隔、 長い間隔で観測したときの違いをテーマにした連続講義の第一回、 プリンストンの A-S 先生による、 ジャンプ過程を用いた最適ポートフォリオ選択問題についての連続講義の第一回と二回、 うちの W 君と京大数理研の Y 君のリサーチレヴェルの講演が二つ。

いよいよコーヒー・ブレイクの時間がやってきた。 おそるおそる会場を出ると、手作りケーキこそなかったが、甘ーい香りが。 廊下でチョコレート・フォンデュが出来上がってました… 画期的だ。休憩時間にチョコ・フォンデュが饗される数学のシンポジウムが、 未だかつてあっただろうか、いやない。まさに画期的だ。 それはともかくとして、ちゃんとドリップした珈琲がサーヴされていたことだけは、 高く評価しておこう。珈琲は数学者のガソリンだ。良質に越したことはない。

夕方から学内のレストランでウェルカム・パーティ。 例年通り、私が司会をする。 毎年、あとで「ご苦労さまでした」などと言ってもらえるのだが、 実際は司会なんて、スピーチしてくださる人を紹介するのと、 "Please help yourself to anything you want and enjoy the party" なんて決まり文句を並べるだけのもので、全然大した仕事ではない。 それより私が毎回驚くのは、 直前にスピーチを依頼した人々に、 常にすらすらと当意即妙のスピーチをしてもらえることだ。 今日はオープニングを O 川先生、 クロージングをプリンストンからの A-S 先生に依頼したが、どちらも名スピーチ。 A-S 先生に頼んだのは実際、パーティが始まってからだった。 すると、しばらくして私のところにやってきて、 「スピーチで御礼を言わなくてはならないのは誰と誰と誰にだ。 Y 田と O 川と A 堀と…」とか言うので、 「Y 田教授と O 川教授を忘レナケレバ問題にゃいノこと」と答えると、 「しかし、タイプIのエラーとタイプIIのエラーとどっちが深刻かな?」 と言って、一人で「わっはっはっは」と笑った上で、 決まった!と言いたげな顔で去って行った。 統計学ジョークだ。説明しよう。 仮説検定についての専門用語で、 本当は正しい仮説を棄却してしまうことを第一種の過誤(Type I error)、 本当は正しくない仮説を棄却しないことを第二種の過誤(Type II error)、 と言う。 今の場合、感謝すべき人に感謝しないのと、 感謝しなくていい人にまで感謝するのと、どっちがいいかね、 と言いたかったわけだ。 念のために付け加えておくと実際のスピーチで A-S 先生は、 Y 田教授と O 川教授と A 堀教授と原教授に感謝し、 その他、スタッフ全員に感謝し、 あれこれの雑用をしている学生全員と、 最後にはこの部屋にいる全員に感謝していた。

統計学ジョークにやられたわけではないが、ぐったりして帰る。 パーティが始まったのは夕方なので、帰宅したのも非常に早かった。 実際、9 時には帰宅。 お風呂に入って、グラスに少しだけ白ワインを飲みながら、 美しい言葉とはどういうものかを思い出すために、 久保田万太郎句集を読む。