Saturday, August 18, 2007

検算

9 時起床。珈琲。午前中はプロブレムを考える。 昼食はトマトソースの残りと、玉葱とオクラでスパゲティを作った。 少し休憩してから、いよいよ検算作業に入る。 しかし、間違いは見つからなかった。 ひょっとして本当に出来たのだろうか。 特に華麗なテクニックを使ったわけでも、 新しいアイデアがあるわけでもなく、 やや要領良くやったかな、と言う程度。 今は、これでいいはずだ、と言う気持ちと、 まさかこんなに簡単に出来るはずがない、と言う気持の半々くらい。 どこかで勘違いをしているに違いない。 10 ページくらい不等式評価を続けるので、 間違う箇所に事欠かないことは確か。

地球上でこの問題を真面目に考えたことがあるのは、 私の知る限り三人だけで、 その内一人はこんな些細な問題を考えるには多忙過ぎるし、 一人は既に他界している。 つまり、この世で私だけしか考えていないと思われる上に、 優先権を争うほど重要性のある問題でもない。 まあ、ゆっくりプレプリントでも作りながら、間違い探しをしよう。 夕方、証明を最初から最後まで一通り清書して、今日はおしまい。 とりあえず、頭を冷やすために、二三日は数学を考えない予定。 つまり、本当に夏休みを取ります。

お風呂に入ってから、夜は久しぶりに近所のバーへ。 電話で予約してから、 「幸福論」(斎藤一郎/平凡社新書)を持って歩いて行く。 この前の日曜日以来、6 日ぶりに外出して、しかも人間と話をした。 まずテタンジェを一杯。白ワインと、 挽肉と甘長唐辛子とチーズのキッシュ、 鯛のポワレ、アメリケーヌソース。つけ合わせはグリーンアスパラガス。 食後にデザートワインとウォッシュタイプのチーズ。 お盆は暇と言う話だったが、 7 時過ぎくらいから段々とお客も入って、 電話の予約もいくつか入り始めたので、 8時頃、お邪魔にならない内に帰る。

「冷たい密室と博士たち」の犀川先生の言葉を思い出しながら、 家までの 15 分ほどの道をほろ酔いで歩いて帰る。 「学問というのは本来虚しいものですよ。(…) 学問の虚しさを知ることが、学問の第一歩です。 テストで満点をとったとき、初めて知る虚しさです。 それが学問の始まりなんですよ」…。 この真実を今、知っているのはこの世界に自分だけなのだ、 と言う幻想の虚しさ、幻想の孤独を知ることが、 学問をする価値かも知れない。