北向き / 物件談(その三)
8 時起床。珈琲だけの朝食。洗濯機に洗濯を任せつつ、ファイナンス仕事など。 掃除機がけをして、洗濯ものを干し、あれこれ雑用。 廃棄する PC のハードディスクを壊したり。 昼食はしめじのスパゲティーニ・アーリオオーリオ。 午後は郵便局に行っていくつか用事を片付け、 その後はのんびりモードで雑用あれこれ。 木曜日は、 つい後回しにしてしまった細かい雑用あれこれをバッチ処理する日になってしまう。 夕食はまた鍋にしてしまった。あとは饂飩。 夜は趣味のプログラミングと読書など。
東京物件談、その三。 おそらく 15 件目くらいの内見だろうか、 「予算内に収まってますし、このお値段でこの広さは珍しいですよ。 中古ですが設備も充実です」などと聞きつつ、現地に歩いて行く。 駅から随分と歩いて、大通りから脇に入った途端に、 しっとりした雰囲気の住宅地になった。 しかし、まだ到着しない。もう10分は歩いただろうか。 「やっぱり、かなり安いのは、駅から遠いからですか」 「いえ、都心だとあまり関係ないです。多分、北向きが効いてるかなと」 「北向きだとそんなに駄目ですか」 「ええ、北向きの図面だけで却下、ってお客様も多いです」。 ふむ…それはグッドニュースだ。 確かリンボウ先生が、家を南向きに建てるのは農家の発想だとして、 北向きの合理性を説いていた。 私も林先生邸と同じく北向きにしたいと思っていたところだ。 遠いあまり、道に迷ってうろうろしていると、 向こうの方に怖そうなおじさんが立っているのが見えた。 「あ、あれですね!」。この物件を管理している不動産屋さんらしい。
いかにも昔気質の不動産屋と言う感じの、その怖そうなおじさんに内見させてもらう。 廊下のつきあたりなので、玄関の前に少しスペースがあって、鉄柵がついている。 中に入って、まずはリビングを見る。 いきなり「北向きです。」と、 怖そうなおじさんがぶっきらぼうに言う。 「やー、広いですね!十分明るいですしね」。 と、私担当のいつもの不動産屋さん(H さん)はご機嫌だが、おじさんは反応なし。 H さんがまだ負けずに、 「これはかなりおトクなんじゃないですか?」と食い下がると、 怖いおじさんはぶっきらぼうに、 この近所の大手マンションの値段をいくつか挙げて、 それに比べればずっと安いが、昨今の状況を考えるともう少し下げるべきかも知れない、 しかし同じ間取りがこの値段で最近売れたばかりなので売値の方は下げられない、と答えた。 一つ売れたので、こちらは賃貸でも、とオーナーがお考えになったらしい。 「いやー広いし、綺麗ですね!」 とテンションが上がっている H さんと、他の部屋を見ていく。 北向きのリビングがお供を引き連れるような形で、 西翼、東翼にそれぞれ部屋が一つずつある。 構造上の理由で、三部屋とも一風変わった形だ。 バスルームも広くて綺麗だし、特にキッチンが素晴しい。 オーナーが随分とお金をかけた上に、丁寧にお使いになっていたと思われる。 内心、「これだな」と思い始めた。 それに、不動産屋さんの無愛想な態度が気に入った。 「このスイッチは何ですか?」とか 「オーヴンの隣のこれは何ですか?」と尋ねてようやく、 「床暖房です」「食洗機です」と教えてくれるのだ。
そのあといつもの不動産屋さんに戻る。 購入の内見予定がいくつか入っているようだし、 今すぐ申し込みした方がいいのではないか、と H さんは言うのだが、 私は数日は下調べして、 再度内見させてもらってから判断することにした。 結局、二回目の内見のあと、申し込みをして審査などを受け、新居が決定した。 ところで、その怖い方の不動産屋さんだが、契約が終了したあとには、 設備の些細な注意点を説明するためにわざわざ新居までついて来てくれたり、 私の猫の写真を見て相好を崩して絶賛してみたり、 意外と(?)いい人であることが分かった。
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