離れるのは少し死ぬこと
よく寝た。珈琲だけの朝食を取りながら、ChessBase で棋譜の整理。 当たり前だが、 勝つときは駒があるべきところにあるために勝ち、 負けるときは駒がおかしなところにあるので負けるように思う。 サッカーとかアイスホッケーの世界では、 「良い選手はボール(パック)を追いかけるのではなくて、 ボールが飛んでくる所にいる」などと言うのに似ているが、 それよりはもうちょっと静的な概念かも知れない。 やはり正しい駒の配置は既にそのたたずまいに調和がある。 問題は対局中には何故か、選択肢が自由にあるときでさえ、 おかしな所に駒を置いてしまうことなのだが。
昼食は家の一番近所のベンガルカレー屋さん。 午後は来週の学会出張の準備。ただし講演準備以外のパート。 ホテルや JR の予約とか、そういうトリヴィアルなもの。 夕方、買い物に出かけて、 そのついでに本屋で少し悩んだあとに、 やはり「ロング・グッドバイ」(レイモンド・チャンドラー/村上春樹訳/早川書房) を買ってしまう。 (このチップ・キッドによる装丁は気に入らないが。) 清水訳は名訳ではあるが原文をはしょった箇所がかなりあることは有名だし、 訳者の技量と入れ込みようからしても、 この村上訳の方がこれからの決定版になるだろう。 さらに、あとがきとして 40 ページ以上書かれている 訳者による「ロング・グッドバイ」論が大変面白い。 失礼な言い方になってしまうが、 村上春樹が珍しく自分の頭の良さを隠していない。 ところで、この「長いお別れ」は私が時に読み返す小説の一つである。 この小説に登場する酔っぱらい、テリー・レノックスは架空の人物の中で、 最も興味深い人間だとさえ思う。 私が「時に読み返す小説」は十冊くらいある。残りは秘密。
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