after your study
木曜日のソーシャルディナはレバノン料理だった。 そして参加者と話しているとまたしても、 「勉強(study)が終わったあと、 進路はどうするの?」 と訊かれた。つまり学生だと思われているわけだが、 真面目に答える気になれなくて、 「研究(study)にヲワりはナイです」 と言ったのだが、「は?」という感じの顔をしている。さらに、 「ジャ、研究がヲワたら、リタイアーしマす」 と答え直しても、「えっ?ウェイターになるって?」 と話が通じない。 二回続けたジョークを説明するのは二倍恥ずかしいので困っていると、 現地の参加者が「彼はプロフェッサなんだよ」 と助け船を出してくれたのだった。 「ソーみえナイいカモシれまセんが、モう四十です」 と言うと、随分驚いていた。
最終日はホテルでゆっくり朝を過してから、直接空港へ行こう、 と思っていたのだが、やはり研究会に行くことになった。 昨夜の会食のときにオーガナイザに、 せめて最初のお茶の時間までは研究会に顔を出して、 記念撮影のカメラにおさまってから帰ったらどうだ、 と説得されてやむなく。そして、記念撮影に参加してから、 秘書にタクシーの手配を頼んで、大学から空港へ。 数日の滞在だったので、メルボルン出張の印象は、 数理ファイナンス業界での A 堀先生の大物っぷりと、 こちらの鳥の鳴き声が全然違うことくらい。どの鳥も電子音みたいな声だった。
午後の出発でメルボルン空港からクワラルンプール空港へ。 7 時間かけて到着。乗り換えまで 3 時間。 空港中に麺屋の強烈な匂いが漂っているので、 ついまた食べてしまった。きっと味蕾がいくらか死んだに違いない。 まだまだ時間が余っているので、SBUX でカプチーノを飲みながら時間待ち。 真夜中の出発で、クワラルンプール空港から関西空港へ。 帰りは往きより早いらしく、6 時間弱で到着。 日本はどれだけ寒いかと期待していたのだが、 早朝なのに気温は 9 度と随分と暖い。 残った外国紙幣を日本円に両替して小銭は寄付し、 暖くて着る必要もないコートと襟巻を手荷物預かり所で受け取って、 「はるか」で京都に帰る。 帰宅は 9 時半くらい。 猫に食事を与えて、洗濯をしながらとりあえずお風呂に入り、 掃除機がけをして、洗濯ものを干す。 飛行機で不必要に食べさせられたので昼食は抜いて、二時間ほど昼寝。 夕方まで読書などしてゆっくり休み、夕食はほぼ開店時間に電話をして、 近所のバーにて。山芋のキッシュとホロホロ鳥のロースト、マデラソース。 ローストはローヌのシラーを一杯と。
昔、イギリスにハーディと言う数学者がいた。 かなり神経症的なところのある人で、 エルデシュと同じように、 人生は彼に敵意を持っているらしい神との個人的な戦いだと考えると同時に、 (明らかに矛盾しているが)無神論者でもあった。 ハーディはある船旅をする前、 知り合いに「リーマン予想を解決したようだ」と手紙を書いたと言う。 なぜなら、もし船が沈没して死ぬようなことがあったら、 ハーディはひょっとしてリーマン予想を解決していたのではないか、 と人々は思うだろう。神はそれを大層不愉快に思うはずだ。 だから神はハーディを沈没の災難にあわせる楽しさよりも、 むしろ船を沈めないことを選ぶだろう、と言うロジックである。 もちろんハーディだからこそ他の人が「もしかしたら」 と思ってくれるので、私がそう書いたとしても悪い冗談である。 ハーディの時代には現在ほどには、 リーマン予想の解決が難しいとは考えられていなかった、 と言うこともあるけれど。
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