毎日、
暇があれば数学の研究や勉強に勤しんでいる、と言う人が心底うらやましい。
どうしたらそういうことが可能なのか、
本当に教えて欲しい。
そうしたくないのではない。そうしたいと思っているのに出来ないのだ。
数学者の Web 日記を見ると、
通勤電車の中でフランス語でグロタンディエクの茶本だか赤本だかを読んだ、
とか、
少し時間があったので数学、なんてことを毎日書いてあったりする。
本当なのか。
私について言えば、調子の良い日、
あるいは少なくとも少しは数学の研究らしきものをした日、
ですら、「ジョエル・オン・ソフトウェア」からの引用である以下の如しだ。
「(1)仕事に取りかかる。
(2) e-mail をチェックしたり、Web を見たり、その他のことをする。
(3) 仕事に取りかかる前にランチを取った方がいいと判断する。
(4) ランチから戻る。
(5) e-mail をチェックしたり、Web を見たり、その他のことをする。
(6) いい加減始めた方がいいと心を決める。
(7) e-mail をチェックしたり、Web を見たり、その他のことをする。
(8) 本当に始めなきゃいけない、と再び決心する。
(9) くそエディタを立ち上げる。
(10) ノンストップでコードを書いていると、いつのまにか午後7:30になっている。」
以上で一日終了。
ジョエルによれば、これでも良い方だそうで、
ステップ (8) とステップ (9) の間にバグがあるらしく、
常にこの溝を越えられるわけではないと言う。
まったく同感だ。
私の人生においては、
このステップ (1) から (8) の無限ループだけで過ぎた一週間が、
数え切れないほどある。
どうすればいいのだろうか。
ジョエルによれば、「ただ始めること」だと言う。
言い代えれば、「射撃しつつ前進」だと言う。
人生のほとんど全ての局面において、
何かを成し遂げることの究極の秘密は、
「射撃しつつ前進」、これだろう。
漱石も若き芥川を励ますのに、
とにかく毎日押せ、牛のように超然と押せ、
と書いている。
しかし、それがなかなか凡人には出来ないことなのである。