Saturday, September 30, 2006

Greeks

あっと言う間に 9 月も終わり。 この一年間は早かったなあ。色んなことがあったような。 昨夜読書で夜更かししたものだから、朝 11 時近くまで寝てしまった。 朝食はいつものごとく、珈琲だけ。 すぐに昼食の時間で御飯を炊く暇がないので、 この前 S 君にもらった柑橘類と豚肉でフォーらしきものを作った。 午後はまず洗濯。天気が良くて空気も乾いているので、 書庫の窓を開けて風通し。ついでに書庫で読書。 「まっとうな経済学」(T.ハーフォード/遠藤真美訳/ランダムハウス講談社)、 読了。理論的には既に知っていることばかりだったが、 実例がどれも面白く、楽しんで読めた。おすすめ。 「φは壊れたね」(森博嗣/講談社)、読了。 「θは遊んでくれたよ」(同上)、読みかけ。 森博嗣氏の小説は大抵、巻頭と各章の冒頭に他の本から引用がある。 それがほとんど常に、私が読んだことのある、しかも好きな本だ。 多分、唯一例外だったのは、物理学の専門書だったとき。 それは流石に知らない本だった。 ちなみに、「φ」はヴィトゲンシュタイン、 「θ」はミルの「自由論」だった。 このあたりは、まあそうだろうな、と思う範囲だが、 以前にコレットの「シェリ」だったときには驚いた。 クロックは違いますが、似たデザインの CPU です、 ということかも知れない。 夕食は御飯を炊いて、豚肉と野菜の生姜炒め、冷奴、若布の味噌汁。

世界チャンピオン統一マッチは大変なことになってしまった。 クラムニクが個室トイレに行き過ぎだとトパロフ・チームが抗議したことから、 その FIDE の対応に反発してクラムニク側が対局場に現れず。 第 5 局はトパロフの不戦勝とされた。 以降の対局もどうなるか分からない。やれやれ。 1972 年レイキャビクでの「世紀の対決」のドタバタ悲喜劇のときには、 必死にマッチを守ろうとした(または、そうしなければならなかった) 人々もいたし、そもそも世界中が興味を持って見守っていた。 この 2006 年統一マッチはどうだろう?

Friday, September 29, 2006

マスプロ

随分と朝も早い時間に衣笠の事務から自宅に電話。 月曜の文系講義の聴講登録者数が多過ぎて、 予定の教室に入り切らないので変更したい、との相談。 私の「数理の世界」に 500 人近い登録 があったそうだ。ほとんど去年の倍。 きっとどこかで、講義も出ずにレポートを出すだけで単位が取れる楽勝科目だ、 とでも紹介されたのだろう。 昼食は近所の町屋インドカレー屋。深い溜息をつきながら、食事。 締切間近なので、今日は終日プロシーディングの論文書き。 夕方に最終稿を完成させて、編集担当の A 堀先生と共著者にメイルで送る。 やれやれと思っていたら、また衣笠の事務から電話。 超マスプロ講義用の部屋がうまく予約できない、とか。 結局、しようがないので今まで通りの 370 人収容の大教室のままにして (それでもマスプロだが)、様子を見ようということになった。 勿論、お互い大人なので口には出さないが、この言外の意味は、 実際に講義に出てくる学生は登録数よりぐんと少ないので、 初日を除いては事実上の問題はなかろう、と言うことである。 それにしても、来週月曜日の初日は大変なことになりそうだ。 今からとても憂鬱だ。 今期は自分自身の心のケアが最重要課題か… 次の月曜の夜にバーで酔いつぶれている私を見ても、 そっとしておいて下さい。

今日の読書。「まっとうな経済学」(T.ハーフォード著/遠藤真美訳/ ランダムハウス講談社)。

Thursday, September 28, 2006

秋の書庫

早起きして出勤。 午前は「プログラミング演習」。 人数は思っていたより少なく、ありがたい。 これくらいの規模で TA が 5 名いれば、演習らしくなる。 生協購買部でサンドウィッチを買って、 すぐに続いて、卒研生とゼミの日程など調整の打ち合わせ。 午後は雑多な雑用(これはテッキョウバシ?)を、 ToDo リストに次々チェックを入れつつ片付ける。 amazon から届いた本、"The Perfectionist (Life and Death in Haute Cuisine)" (by R. Chelminski /Gotham Books)を持って、家に帰る。 2003 年に亡くなった、 「コート・ドール」のベルナール・ロワゾーについての本。 夕食は昨夜作っておいたマリナーラソースで、 リングイネのアラビアータと白ワイン一杯。 今日の深夜は K-T マッチはお休み。 秋の夜長を書庫の整理と、その合間の読書で過すかな…

クラムニク vs. トパロフの第四局はまたドローだった。 今回は私にはどこも難しくて良く分からなかった。 トパロフの方がかなり良く見えたときもあったけれど、 クラムニク陣には弱点がない。 トパロフが驚く様な突破口を作ってくれていれば、 どちらが勝つにしろ見所があったのだが。 しかし、如何にトパロフとは言え、ここで無理はできそうにない。 ここまでで、クラムニク 3.0 vs. 1.0 トパロフ。 二人のスタイルとこのポイントを考えると、 クラムニクが圧倒的に有利かなあ… とは言え、先はまだまだ長いので何が起こるか分からない。

Wednesday, September 27, 2006

見晴らし

京都もすっかり涼しくなってきた。 主に推敲作業。 ところで、R 大学の二条朱雀キャンパスがついにオープンするらしい。 三条商店街の宣伝で初めて知った。 京都の FM 局では、その建物の最上階に入るレストランの宣伝もしている。 ラジオで初めて知った。 R 大学の大抵のニュースは外から後で知る。 先に教えてくれても良さそうなものだが…。 すぐ近くにシネマコンプレックスも出来たし、 目の前はパチンコ屋とコンビニエンス・ストアだし、 大層便利なキャンパスではあるようだ。

クラムニクvs.トパレフの第三局はドロー。 クラムニクは白番ながらも中盤の早い段階で既に、 ドローで御の字、くらいの安全指向に見えた。 勿論、2 ポイント連取で先行しているのだから、 リスク回避最優先も当然ではある。 今回はトパレフも盤面をかきまわせず、 クラムニクらしさの方が濃厚に滲んだ局だったか。 私自身は 22. Nc6 Rxc6 23. Qxd7 のところで、 もうクラムニクの負けはないだろうな、と思った。 また強い人には当たり前の手で申し訳ないが、 感心したのは、24. Rc3 から 25. Rb1. こういう手がかなり前から見えているのだろうなあ。 第一局のナイト 2 つの使い方もそうだが、 駒が最も働くところに自然に、当然のように駒が流れて行く。 なめらかだ。 (左図は 25. Rb1 まで。二つのルークが 3 段目と b 列を見通している。)

Tuesday, September 26, 2006

スペインの、雨は、主に、平地に、降る

さて、新学期開始。キャンパスへ向かう。 卒研の調整日に来られないと言う学生と、卒研ゼミの打ち合わせ。 その学生は某国立大学院を受験していたのだが、合格した、との報告。 同じく外部受験したもう一人も辛うじて某国立大に拾ってもらえたそうだし、 また残りの一人は内部進学が決まっているので、 これで私の卒研生たち三人全員の「入院」が決定した (卒業できれば、だが)。 きっと、 ピグマリオン効果だね。 冗談はともかく正直なところは、 行き先の大学に申し訳ない程度の学生たちなので、 後半年でもうちょっと鍛えないと。 打ち合わせのあとは、 メイルなど読み書きしつつサンドウィッチの昼食を個研でとり、 午後は研究費を使った領収書を出したり、 来月の出張の旅費を申請したり、 推敲用に論文原稿をプリントアウトしに院生室に行ったり、 あれこれ雑用。 そんなことをしている内に初日は終わった。 今期の私の講義は、月曜日に衣笠キャンパスで文系向けに二つ、 木曜日に草津キャンパスで学科の学生向けに演習を一つと、 ちょっと少なめで許してもらえた。 夕方、キャンパスを後にする。学生がいっぱいだ。 夕食は御飯を炊いて、だしを引き、 じゃこ山椒やすぐきの漬物などと味噌汁で一汁一菜の粗食。夜は雨。

amazon から届いた本。 持っていたはずなのだが、引越しのときに誰かにあげたらしく、 書架に見当たらないので買い直した セシル・ビートンの「『マイ・フェア・レディ』日記」(酒井紀子訳/キネマ旬報社)、 イヴリン・ウォーの「大転落」(富山太佳夫訳/岩波文庫)、など。

Monday, September 25, 2006

散らしと煮麺

ついに明日から新学期か… 早く年末にならないかしらん。もう幾つ寝るとお正月? 昨日また夜更かししてしまったが、今日は何とか早く起きられた。 昼食には、うなぎ山椒の散らし鮨と煮麺を作る。 午後は論文推敲を少ししてから、京大数理研へ。 研究会に参加中の H さんに会って、所用を片付けるため。 研究会自体は全く門外漢のものだったが、少しだけ参加。 活発に質問と議論が飛び交う、熱のこもった研究会のようだった。 有限グラフの話はパズル的で、 何を話しているかが分かることが多くて良い。 ほとんどの数学の分野では、少し専門が違うと一言も分からない。 車内で「コンスエラ 七つの愛の狂気」(ダン・ローズ著/ 金原瑞人・野沢佳織訳/中公文庫)から短編を読みながら、 バスで大宮まで戻り、少し食材を買って帰宅。 夕食は茄子とベーコンのパスタで、また手抜き。 夜は南仏の白を一杯だけ。

昨夜のクラムニクvs.トパロフ、第二局。クラムニクの連勝。 ドローを逃した前局にもめげず、またしてもトパロフが果敢に攻める。 タクティカルな局面でクラムニクが受けを間違うブランダー、 これで勝負が決まっていたはずのところを、 トパロフがそれを咎め損なうブランダー返し、とエラーが多く、 芸術的鑑賞の立場から観戦する向きには残念だったろう。 しかし、勝負としてはとてもエキサイティングな対局で、 両者の個性が際立った良いゲームだったと思う。 序盤から中盤への両者らしい狙いの交錯、特にトパロフの激しい構想、 難しい終盤でのクラムニクの機械のような正確さ、 本来は勝っていてもおかしくなかったトパロフの数々のミステイクも含めて、 これは一つの名勝負であろう。 内容的にはトパロフが勝っていた、と言うのには意味がない。 テニスと一緒で最後に相手のコートに打ち返せなかった方が負けであり、 弱いから負けたのだ。 素直に勝者の強さを讃え、敗者の善戦の美しさを讃えたい (まあ、つまり私は何時も、敗者を愛するのだ)。 やはり、対照的な個性の対決になると、マッチは良いなあと思う。 クラムニクvs.トパロフは今日は一日お休みで、 第三局は明日の夜。 ここまではやや荒れ模様だが、一日の休暇を置いて充実した勝負が期待される。 2-0 に追い込まれたトパロフが一矢報いるのか?刮目して待て!

Sunday, September 24, 2006

ナイト・マヌーヴァ

昼くらいに N 氏が家を訪ねてきて、近所で一緒に昼食。 担々麺屋に行ったのだが、行列が出来ていたので却下。 プラン B としてベンガルカレー。 家に戻って、食休み。喉が渇いたと言うので、マティーニを作って差し上げる。 N 氏はマティーニを飲みながら、 周囲の本を適当に読んだりして、しばらく我が家で過した後、 午後の内にどこかに去っていった。 あと二三日、某旅館を根城にぶらぶらするそうだ。 昨日の夜は旅館に戻ってから寝酒を二合ほどつけてもらったら、 女将がカナダにいる親戚が送ってくれたと言って、 肴にスモークサーモンを差し入れてくれたそうで、 それが美味しかった、などと自慢していた。 うーん、ホテルではそうは行かない。 数日間を旅館に逗留して、 ゆったり過す休日と言うのは良いものだろうなあ。 私の方の夕食は、御飯を炊いてだしを引き、 うなぎ山椒のお茶漬けにしてみる。 この前、先生の奥様にいただいたすぐきの漬物を一緒に。 うなぎ山椒の残りはちらし寿司にするかな…

昨夜のクラムニク vs. トパロフの第一局はクラムニクの勝ち。 繰り返しのドローを捨てて果敢に勝ちに行ったトパロフが偉いが、 テンションを保ち続けたクラムニクも偉い。 最後の最後に出たトパロフのブランダーで勝負が決まったのは残念だったが、 両者の個性がはっきり出たいい対局だったと思う。 新手らしい 12. ... Ba6 (素人目には当たり前ぽいが…)、 強く出た 21. ... g5!, トパロフが千日手ドローのオプションを得たところからの攻防、 そして大ポカ 57. ... f5?? などが話題になっている (全部トパロフ側の手であることに注意)。 しかし、私なりにここが面白いと思った、 ということを書いておくことにも意味があるかも知れない。 クラムニクの 26. Nd6 から、Nc8, Ne7+, Nc6, そして Nc5 の一連のナイト・マヌーヴァ。 これは強い人には当然の流れだろうし、 実際、私のチェスソフトはほとんど瞬時に候補ラインに挙げた。 しかし、20手台の前半からの流れるような手順は、なるほどなあ、 と感心した。Nc8 がルークに当たり、Ne7 がチェック、など、 間然とするところがない。しかも、最後に 32. h3 が渋い。 確かに 2 段目を守った方が本当はいいのだろう。 しかし何だか、ぐっ、とくるではないか。

既に開始している今夜の白番トパロフの第二局が、 マッチの行方を決める鍵になりそうだ。今日は最後まで観よう。 現在、スラヴ・ディフェンスの序盤から中盤に入った。 14. ... Bg6 って一見悪そうだけど、どうなのかな… と思っていたら、これはペトロシアン vs. スミスロフ で指されてドローだった、と即座にコメントが。 18. ... Nf8 までのところで、 ポジショナルにやや黒良し、 タクティカルなチャンスは白にあり、 でバランス?

Saturday, September 23, 2006

smoke on the board

執事を伴なって松ヶ崎へ。駅で N 氏と待ち合わせて、 18 時からお鮨屋さんで会食。 シャンパーニュ一本と赤ワイン一本を飲みながら、 お鮨をあれこれ。 いつも、ヅケとか煮蛤など手のかかったものが安定して美味しい。 今日特に気に入ったのは、鯛のあぶりと縞鰺のスモークかな。 最後に土瓶蒸し。秋だなあ。 でもまだちょっぴり、季節に早かったかも。 結局、店に一番最初に入って、一番最後までいた客だった。 N 氏とは四条駅で別れて、今帰宅。 N 氏は旅館で二合ほどつけてもらって、 飲み直してから寝る、と言っていた。優雅だなあ。

クラムニク vs. トパロフの第一局は 20 手も行かない内に Q 交換が終わり、 今、デリケイトかつ緊張した中終盤になっている。 私の目には、ほとんどイコールに見える。 しかし、ピースがほとんど全部残っているので、 何かが起こるのかも。

モスクワ時間

また寝坊…のはずだったが、郵便屋さんに起こされる。 珈琲だけの朝食を取って、 近所のワイン屋さんに注文していたワインと、 「たけのうち」の鰻山椒を引き取りに行く。 外に出ると、思いがけないくらい日射しが強い。 店の前で看板を出している社長に御挨拶したのが、 丸三日ぶりくらいの人との直接の会話。 家に帰って、昨日の残りの冷や御飯で雑炊を作って昼食。 午後は PC の定期フルスキャン作業。 茂吉の「万葉秀歌」(斎藤茂吉/岩波新書)の上巻を読みながら、 待ち合わせの時間まで。 夕方 18 時から松ヶ崎のお鮨屋さんで、 晴海のネットワーク・ハッカー N 氏と会食の予定。

クラムニク vs. トパロフの世界チャンピオンマッチ、いよいよ今日、 クラムニクの白番で第一局が対局される。 公式サイト で無料のライブ中継(同サイトの "Games" より)。 対局開始時刻がモスクワ時間の 15 時ということは、 日本時間で 21 時? 同サイトには GMT+3 とあったが、夏時間なら日本では 20 時かも。 うーん、N 氏が AirH" 差したノート PC 持ち歩いてないかなあ… 1. Nf3 から両者とも様子見で、 序盤は手順を変えたイングリッシュ、 と勝手な予想をしておこう。

Friday, September 22, 2006

ゆべし/消火活動

どうも早起きできなくなってきた。新学期も近いのにまずい。 午後はぎゅっと集中して原稿書き。 とりあえず最後まで書いた。ほとんど滅茶苦茶だけど。 添削モードに切り替えるため、 「英語科学論文の書き方」みたいな本の数冊を引っぱり出してきて、 気分を盛り上げる。 夕食は御飯を炊いて、オクラの味噌汁で粗食。 夜はルネ・ジョフロワのブリュット・ゼロの最後の一杯。 肴はこの前、K 大の S 君に奥様からだと言ってもらった 「ゆべし」(Wikipedia に項目があって驚いた) なる奇妙な食べ物。 柚子を味噌らしきものでかちかちに固めたもので、 他に似た食べ物がなく喩えようもない。 日本には色々な食べ物があるなあ。 それはさておき、S 君と奥様、シアトルでも御元気で。 帰ってきたら、また京都で飲みましょう。

これで三日間、ほとんど外にも出ず、(猫を除いて)誰とも口をきかず。 と言っても、そんなに朝から晩まで仕事をしているわけではなく、 単に外出する用がなかったからで、 仕事は圧縮すれば正味二時間/日くらいじゃないか、と思う。 ただ実際は、その圧縮率に耐えられないので、かなり長くなるのだけど。 明日は世間に復帰しよう。

東京晴海のネットワーク・ハッカー N 氏がこの週末に上洛の予定。 明日の夜に夕食をご一緒する。他の予定は知らない。 N 氏はパラレルに走る数々のプロジェクトのトラブル鎮火に大忙しらしい。 来られるかどうか、また直前まで分からないんじゃないの、 と心配していたのだが、 今回は「火消しが間に合わなければ、 全部灰燼にしてから土曜日には参りますので、ご安心ください」 とのことである。

Thursday, September 21, 2006

僧推敲月下門

昨夜なかなか寝付けなくて、 秋らしく遅くまで本など読んでしまったものだから、 今朝はかなりの寝坊。 午前中は仕事にならなかった。 昼食は御飯を炊いて、オクラと油揚げの味噌汁を作り、 一汁一菜の粗食。 午後に論文を書くお仕事。 多分、明日で一通り初稿は出来そうな気配。 夜は、冷や御飯を使って、オムライスを作ってみた。 ときどき作らないとオムレツの作り方を忘れるので。

私は論文に限らず何でも文章を書くときは、 兎に角ざっと最初から最後まで一筆書きで書いてしまって、 後から添削、推敲して徐々に仕上げる。 執筆そのものより、推敲作業が好きなのだろう。 既にある文章を手直しするのは私にとっては楽な作業で、 ほとんど楽しい、と言ってもいいくらいだ。 だから、 やっつけ仕事でいいから初稿を勢いで作ってしまって、 その後、それを他人が書いた原稿だと思って (下手な文章だなあ、とか、まるでなっちゃいないなあ、 と思いながら)、添削・推敲・訂正する。 つまり「推敲」と言う名の下に、実際は執筆をするわけで、 自分を騙しているだけなのだが、有効ではある。

Wednesday, September 20, 2006

再統一マッチ

昨夜から急にまた涼しくなって、良く寝てしまった。 昼間はまだ暑いのに、朝夕はもう肌寒いことがある。 今日から、土曜の夕方までずっと月末締切の Proceeding 論文書き。 まとめて時間がとれるのがここだけなので、できるだけ集中する。 昼食は若布饂飩、夕食は茄子とベーコンのスパゲティとシャンパンの残り。 つい安易に流れて、麺類にしてしまう。 今日は夕方、食材と珈琲豆の買い出しに行っただけが唯一の外出で、 他には誰とも会わず、一言も発さなかった。

明日 21 日からチェス・ファンにとっては、 歴史的な大イベントがエリスタで開かれる。 第一局は 23 日で、10 月 13 日までの 12 ラウンド制。 カスパロフとのマッチを破って「世界チャンピオン」になった クラムニク (Kramnik, V.)(リンク先は chessgames.com)と、 去年の FIDE 世界選手権で「世界チャンピオン」になった トパロフ (Topalov, V.)との、 世界タイトル分裂再統一マッチがついに実現。 無料のライヴ中継があるか良く分からないし、 さすがに 4 時間も 5 時間も観ている暇がないので、 私自身は多分、翌日の結果待ちになると思う。 実は私はクラムニクが好きなので (と言うと反応はいつも「はあ、そうですか…」くらいで話が盛り上がらない)、 勿論こちらを応援。やはり盤面の調和の感覚が凄いと思う。 ずっと体調を崩していたが、最近は全盛期の調子を戻しているとの噂もあるし、 相手はレコではなくてトパロフだしで、きっとエキサイティングなマッチになるだろう。 私の予想は、単なる贔屓が理由で、クラムニクの圧勝。

Tuesday, September 19, 2006

「夢と希望の違いって何?」

かなり寝坊。 慌てて支度をして、家を出る。今日も夏のように日射し厳しく暑い。 大阪市立大学で日本数学会の年会に向かう。 阪和線の杉本町が最寄りで、京都からだと随分と遠い。 しかも、環状線が途中で一時ストップしたため、 到着がさらに遅れてしまった。 確率論は主に初日に講演が集まっている。 とは言え、学会の意味は、 (全国から人々が集まるので) さまざまなレヴェルの会議、委員会、打ち合わせをあちこちで開くこととか、 (数学専門書輸入販売会社の各社がブースを開くので) 本を買うことなど、講演以外に主眼があるような気がする。 午前中の確率論関係の一般講演に顔を出して、 昼は非公式の某委員会に出て、 午後は本を買って、少し専門外のところの話を聞いて、 午後の早い時間に帰る。

夕食はまた素麺。 夜はシャンパン、ジョフロワのブリュット・ゼロを開けて、 年を一つとった祝いに一杯だけ飲みながら、今年一年の反省をし、 これからのことを考えることにしよう。

Monday, September 18, 2006

Love in the afternoon

昼はホテルオークラの中華料理屋で、 師匠の T 先生の還暦祝いの食事会。 参加者は先生と奥様の他、弟子の内から四人。 そのあと、近所の先生宅にお邪魔して、 お茶などをご馳走になる。 しかし、あっと言う間に月日は流れるものだ。 ついこの前、T 先生の卒研に配属されたような気がするのだが。 「原君、来年はどうするの」、 「大学院に進学してみようかなーと」、 「うん、むいてるかもね」という感じの会話を交わしたのが、 つい昨日のようだ。 そのとき人生が、がちゃん、と音を立てたような気がしたのだった。

夜、遅くに帰宅したら、 「今日がお誕生日であったと思いまして」と、 執事から近所のワイン屋で買ったらしい随分上等のワインと、 「昼下りの情事」の DVD をもらった。 最近はハウスキープの仕事をサボりがちだが、 まだ使用人としての徳は失なっていないようだ。 しかし、何故、「昼下りの情事」なのだろう。 必ず最後には泣ける、名作だとは思うが。 主人公がチェロを弾くからか?

Sunday, September 17, 2006

鴨川沿いのカップル

17 日分の追加。
S 君とホテルの前で待ち合わせる。 S 君とは学生時代からのつきあいで、 私の知り合いの中で最も頭の良い人間の一人だが、 最近では滅多に会えなくて残念だ。 とてもお腹がすいていて、鰻がいいかな、と言うので、 近所の「かねよ」に行く。 鰻丼を食べているときの雑談で、 S 君が最近「脳年齢」とやらを某携帯ゲーム機で測ったら、 50 歳近かったとか聞いて、大笑いする。 きっと傍でそれを見ていたら、「そんなの S 君じゃない!」 と叫んで少し泣いたと思う。 食事のあと、南座の近くの焼き鳥屋に向かう。 S 君は近々、一年間の予定でアメリカに旅立つので、 シャンパンでもご馳走しようかと思って。 大橋を渡っていると、 鴨川沿いに並んでいるカップルたちを見て S 君が、 「これはポワソン分布ではない。なぜなら、リパルシブだから。」 と証明付きの定理を述べていた。 焼き鳥屋に到着したが、残念ながら満員。 やむなくそのすぐ近くのアイリッシュパブで、 ギネスビールを飲みながら、あれこれずっと雑談。 結局、ビールをおごっただけになってしまい、恐縮。 23 時くらいに別れて、今帰宅。

計算力

午前中は快晴、午後は曇り時々雨。 全般にとても蒸し暑かった。 自宅で比較的、のんびりと過す。 夕方、K 大の S 君が京都に来るらしいので、 夕食を一緒にする予定。

Khmelnitsky の "Chess Exam and Training Guide" を終わらせた。 本当は腰をすえて取り組むべきなのだろうが、 ほとんどを通勤時間とか、空いた時間に少しずつ解いていた。 結果は、まあこれくらいの得点だろうな、 と自分でも思うあたりに各能力が分布していたのだが、 "calculation"(計算力)、つまり、 「こう指せば相手はこう来るから、 そこでこう指して、対して相手はこう指して…」と、 読む能力だけが突出して低かった。 素人同然くらいの圧倒的な低さ。どうも私は、 「計算が全く苦手で、主に感覚で指している、 しかし中盤に最も強い、どちらかと言えば戦略的なプレイヤー」 であるようだ。 うーん、チェスだけでなく、人格を判定されたような。 これはこの問題集の大半を電車の中で解いた、 という状況を判定しているだけだと思いたい。

Saturday, September 16, 2006

白い僧院の殺人

朝、少し雨が降っていたが、後は終日曇り空。 午前中は読書などして、昼食は近所のベンガルカレー。 午後は少し論文書き。 夕方、暇そうにしている執事をつかまえて先月分のチェスをする。 20分プラス一手10秒。白番。 相当に優勢に指していたのだが、今一つ攻め切れず。 最近の課題として直感のサクリファイス(捨て駒)をしてみる。
B:「余程優勢だと思っているんですね?」
H: 「うーん、ゲームに趣きを加えようかと」。
確かに趣きは加わったも知れないが、 実はそんなに手にはなっていなくて、 結局、時間がなくなって負け。 夕食はトマトとベーコンのパスタなど。

他の時間はバリンジャーの「歯と爪」 (B.S.バリンジャー/大久保康雄訳/創元推理文庫)を読んでいた。 「意外な結末」ジャンルでは有名な古典だが、 ずーっと昔に読んだときにはそれほど感心しなかった記憶が。 当時の私はがちがちの本格派だったからかなあ、 と思って、バリンジャーを読み直してみることにした。 私は子供の頃に古典と言われる大抵の翻訳ミステリは読んだ。 と言うのも、父方の叔父の一人がミステリマニアで、 子供の頃に何百冊もの創元推理文庫と、 ハヤカワミステリ文庫をゆずってくれたのだ。 一度にではなくて、何かの用事のたびに、 数十冊くらいずつもらいに行ったのだが、 その帰りは毎回、大変に幸福な気持ちだったものだ。 今でも、父に送ってもらった車の中で、 夜だから暗くてあまり見えないのに、 「白い僧院の殺人」の表紙を撫でるようにして、 何度も眺めながら帰ったことを思い出せる。 今のデザインはぱっとしないが、 かつては、青黒い背景におとぎ話のような小さな僧院が描かれ、 その上に銀色の雪と足跡が浮いた綺麗な表紙だった。

Friday, September 15, 2006

選挙

キャンパスに出勤。 まず、総長選関係の不在者投票をしに学部長室に行く。 TV の二時間サスペンスドラマでは、 大学総長選どころか学部長選とか、 果ては教授昇進人事程度の些事を巡って、 虚々実々の裏取引やら、 策謀やらが華やかに繰り広げられるものなのに、 実際は大変につまらない、形骸化し、ひっそりとしたものだ。 それとも私の与り知らぬところで、 理事長夫人に取り入るためにお庭の芝刈りをしに行ったり、 学園運営の秘密ファイルを巡って総務部の秘書と計算づくの不倫関係になったり、 そういうドラマが進行しているのか? それはともかく、選挙権を行使しないことには始まらないので、 一応、ちゃんと投票をしてきた。 次は生協書籍部に行って、 B.S.バリンジャーのサスペンス小説三冊など、 注文していた本を受け取る。 そして、午後のメインのお仕事。 かなり神経を使う仕事で疲れた。 とは言え、通常の時間に帰ることができた。 家に帰ると、両親から手紙が来ていて、 貧しい暮らしでろくなものは食べていないだろうから、 これでたまには良いものを食べなさい、とお金が包んであった。 親とは有り難いものである。

Thursday, September 14, 2006

世界で一番有名な数学者

午後は京大の時計台へ。 伊藤博士、と言うべきなのかも知れないが、 我々にとっては伊藤先生だろう、 伊藤清先生の ガウス賞 受賞の伝達式に出席。 国際数学連合の総裁 J. Ball 卿が直接、 伊藤先生にメダルを手渡すために来日する、と言うことだったので、 伊藤先生自らが会場に現れるのではないかとの噂だったが、 残念ながら、そうはいかなかったようだ。 ただ、Ball 卿が確かに直接手渡されたことは確かで、 そのときの模様を録画したヴィデオ映像が紹介されていた。

伝達式で秀逸だったのは、H 中先生のスピーチである。 その少し前に、文部科学省の偉い人が、 2000年以降に日本の数学研究のレヴェルが少し落ちているらしい、 ということをちらっと述べていたのだが、 それに対し、 「さきほど、そこの官僚(the bureaucrat) が日本の数学のレヴェルが落ちている、と言ったが、私はそうは思わない! 今の若者たちは、 数学と言うものをより広い意味で考えるようになっているだけだ! あと 20 年待っていろ!!」 と言い放ち、会場の数学者から拍手を受けていた。 その趣旨は、昔は数学者は一生その狭い分野の中で研究し、 一刻も早く世界の先端に立とうとしていたのだが、 今はそうではなく、分野の垣根を越えて興味のある問題にチャレンジし、 より広い意味で数学や科学をとらえるようになりつつあるのであって、 我々はむしろ、より豊かに、 より成熟したものに、なろうとしているのだ、と言う文脈だったようだ。 流石、伊達にフィールズ賞をとっていない。 しかし私が思うには、確かに 2000 年以降、 数学に限らず日本の科学研究のアクティヴィティはやや下がっていて、 それは勿論、大学の独立法人化のせいだ。 独立法人化が良いとか悪いとかではなくて、単に、 優秀かつ指導的な立場の科学者たちの膨大な研究時間が、 会議に吸い取られているからである。 だから、政府の人たちがちょっと考え直して、 これからはもっと数学を応援しよう、と思っていてくれるなら、 まあ、それは大変に結構なことではあり、 水を差すこともないんじゃないかな、とも思った。

伝達式の後は、記念講演が二つ。 経済畑の人による、 伊藤先生の業績が経済学に与えたインパクトについての概説と、 確率解析の F 先生による伊藤先生の数学的業績 (つまり全ての業績に他ならないが)の概説。 前者のタイトルは、「ウォール街で最も有名で最も尊敬されている日本人」 と言う感じだった。 これは事実だろうが、他にもヴァリエーションがある。 私が以前に最初に聞いたヴァージョンでは、 世界で最も有名な(現存する)数学者は伊藤先生だ、と言うもので、 「そんなことはないだろう」と言い返されると、 「だって、銀行員だって伊藤清の名前を知ってるんだぜ」 と答える一種のジョークである。これも事実ではあるが。

今日のセレモニー自体は、その意味の重さに関わらず、 大変に質素なものではあった。おそらく日本のマスコミとしては、 京都ローカルニュースで 30 秒くらい流れればいい方かな、という程度。 しかし、それでいいのだ。 我々は伊藤先生がこの世界を永久に変えたと言うことを知っているし、 伊藤先生が我々の世界の中に、 そして我々の中に生き続けることが既に最高の栄誉であり、 先生の一部が我々の中にあるように、 我々が触れた人々の中にも先生のかけらが伝えられ、 それは永遠に消えることはないのだ。

帰りに、一人で祇園のバーに寄って、 お祝いの意味でシャンパンを飲んで帰る。 一杯だけ飲んで帰ろうと思っていたのだが、 たまたまやってきたお客に、 「そこのお兄さんにもあげて」とおごってもらうことになり、 結局、一杯分しか払っていないのに、 シャンパンを三杯も(しかも全部違う種類で)飲むことになってしまった。 今日は皆が伊藤博士をお祝いしているのだろう。

Wednesday, September 13, 2006

悲鳴

秋雨らしい。 急に冷えてきた。朝から晩まで終日、しとしとと雨が続く。 昨日の夜は遅かったのに、いつも通りに 8 時起床。 猫が部屋の外で鳴いているので、 ドアを開けてやって寝台に戻ってそのまま横になっていると、 飛び乗ってきた猫に鼻の頭を思い切り噛まれた。 ナ行のどれかの音に濁点をつけたような短い悲鳴をあげてしまった。 余程、お腹が空いていたのだろうか。 階下でクロに朝御飯を与え、自分には珈琲をいれる。 鏡を見たら、鼻に歯型は残っていないようで安心した。 昼食は豚丼。 夕食は、 昼に余った豚丼のつゆで肉抜きの肉豆腐を作り、 かけ饂飩と食す。 気温が下がってくると、饂飩が美味しいな。

今日は終日、家から一歩も出ず、あれこれ雑用。

バローロ/バルバレスコ

今日も涼しい。曇り空だが、湿度もそれほど感じない。 午後からキャンパスに出勤して、 夕方から解析学セミナ。 この前、広尾で会ったばかりのフランス人二人が来ていて、 スピーカはその内の一人。 今日の話もウェーヴレットがらみだったが、 アイデアのポイントがどうも捕めず。 今一つよく分からなかった。 夜はこの二人を迎えての会食があったが、 先に入れた予定があったので失礼する。

そのまま移動して、京都駅で地下鉄に乗り換え、五条で降りて、 某イタリアン・レストランへ。 ご近所のワイン屋さんの企画による、 イタリアの某ワイナリーの次期当主を迎えての食事会に参加。 あわてて移動してきた上に、歩いて喉が渇いていたので、 最初のスパークリングがやたらに美味しかった。 一緒に食べた前菜の、 生ハムのパンナコッタと無花果のスープも、 スパークリングと相性が良かった。 メインの前のパスタ料理もなかなかよろし。 お開きのあと、ここから壬生まではうまく帰る方法がないなあ、 と思っていたところに、 私の家の近所のバーまでタクシーで行く、 と言う方がおられたので、ご一緒させていただく。 ついでにそのバーまでご一緒して、 アイス・ワインを一杯だけ飲んで、今、帰宅。

Monday, September 11, 2006

ガラスの文鎮

今日はいくらか涼しい。一雨ごとに涼しくなるようだ。 家で論文書き。 今週は京大で確率解析の日独シンポジウムが開催されているが、 参加申し込みを忘れていたのと、 締切までに論文を書く方が優先なのでサボり。 流石に木曜日の、 伊藤先生のガウス賞受賞の伝達式とその記念講演だけは行くかな。 昼食はカルボナーラと、トマトとオクラのサラダ。 午後は集中的に仕事。 夕方、近所のワイン屋に、 注文していたシャンパンを受け取りに行く。 夕食は肉玉若布饂飩。
明日の夜は会食があるので、更新は深夜です。

うーむ、やはり、カポーティの文章は凄い。 天才と言うのはこういうものだろうか。 エッセイのカポーティは、小説のカポーティとも、 ノンフィクションのカポーティとも違うのだが、 文章が凄い、と言うことだけは同じだ。 あざとさのぎりぎり手前で止まった比喩と言い、 一瞬意味が取れないのだが、 良く良く考えるとああそういうことか、と、 その努力に対して人生の小さな秘密を授けられたような、 または、 ビリヤードでわざと難しい所に運んだ玉を華麗なショットで最後に落とすような、 ねじれたロジックと言い、他の誰にも真似できない文章を書く。 例えば、パリでコレットに会ったときのことを書いた、 数ページほどのエッセイ「白バラ」など最高だ。

「つまりそれは、作られたアイデンティティの限界、 他人に押しつけられた分類を、 知覚することも容認することもできないという危険、 その宿命である ― 自分が犬であると信じこむ小鳥、 自分が絵描きであると主張したヴァン・ゴッホ、 自分が詩人であると主張したエミリー・ディキンソンのように。 だがそのような誤解と信念がなくても、 海は眠るだろうし、万年雪は足跡に汚されないままだろう」 (「ローカル・カラー/観察記録」(T.カポーティ/小田島雄志訳/早川 epi 文庫)、 著者による序文より)。

Sunday, September 10, 2006

犬は吠える、がキャラヴァンは進む

昨夜、夜更かししたせいで起床は昼時近く。 寝起き悪し… 20 代の頃は朝方寝て、昼近くに起きて、ようやく午後から起動、 と言う生活をずっとしていて、それが自分には一番あっているのだ、 と思っていたものだ。 しかし、もうそういうリズムは身体に合わないようだ。 それに今では、頭が一番良く働くのは深夜だ、と言う俗説を信じていない。 ただ深夜は、自分がとても有能に仕事をしている、 と言う気分にだけはなるのと、 後は寝るだけなので時間に融通が効く、と言う利点がある。 欠点の方は、実は気分に反してそれほど仕事が進んでいないのと、 第二に脳が興奮しているので眠れない。 それが数学者がアルコール依存症になる主原因だと言う話も聞く。

朝食の珈琲を飲んで、ぼんやりしている内に昼。 昼食は御飯を炊いて、若布の味噌汁、納豆、沢庵、出来合いの餃子など。 午後はしばらく寝台に横になって論文の構想を考えてから、 PC に向かって書き始める。 今日はこんなところかな、と思ったところで夕方。 夕食は昼間炊いた御飯で、タイカレー。 夜は、本当の才能とはどういうものかを思い出すために、 カポーティの初期のエッセイ集を読む。 最近、急にカポーティの翻訳が文庫で沢山出ていて、 大変結構なことではあるが、 一体どうしたことだろうかな、と思っていたのだが、 どうもカポーティの伝記映画みたいなもの (映画「カポーティ」) がアカデミー賞(主演男優賞)を受賞したのが理由らしい。

Saturday, September 09, 2006

素麺

完全休日にする。 9 時に起床。蒸し暑い。家の中で暮らす。 チェス・プロブレムを考えたりしている内に、 いつの間にか昼食。 「南向きに芝生に面した八畳の間の縁側で日向ぼっこしながら、 ずっと向こうの花壇に四季咲きの薔薇の花が風に揺れているのを眺めて、 そろそろ昼飯の時間じゃないだろうかと思う、 という風な身分になったらどんな気持ちがするだろう…」(吉田健一)。 昼食は明太子を使い切るために、また明太子パスタ。 午後は少し昼寝をしたり、読書をしたり。 夕方になって少しは涼しくなったかと思い、 食材を買いに外出。 しかし、まだひどい蒸し暑さ。特に湿度が凄い。まだ夏だったか。 夕食は素麺と冷奴、オクラなどあっさりしたもの。 夏が始まる前に、妹が素麺を 3 キロ送ってくれたのだが、 まだ半分くらい残っている。 流石に一人で一夏 3 キロも食べられないよなあ… 秋、冬は煮麺にしていくか。 夜も読書などでゆっくりと過す。 明日からは月末締切の論文書きにかかろう。

Friday, September 08, 2006

モヒートと指輪

7 日の夜に移動、予定より早く着いたので、 食事を済ませて、渋谷の「黒い月」に行く。 慌てて来たのと、湿度の高い暑さで喉が渇いたので、 モヒートを作ってもらう。 落ち着いてから、ポマールのマール・ド・ブルゴーニュを一杯。 年代不明のデッド・ストック。 バー犬のコシュを横に座らせて無花果をやりながら、 一人でマールを飲んでいると、 挙動不審な男性がドアのあたりで居心地悪そうにしている。 バーテンダの R 嬢が対応に行って、何か探したり、何か渡したりしていた。 どうしたのかな、と思っていると、 「結婚指輪の忘れものです」とのこと。 昨日、指輪をなくして、ここじゃないかと探しに来たんだそうだ。 どうしてバーでそんな指輪を外すのか定かではないが… 早く帰って、翌日朝からの研究会に備える。

8 日。朝から広尾の統計数理研究所で研究会。 今日の東京は猛烈に蒸し暑い。 フランスから研究者を二人招いての小さな研究会で、 ウェーヴレットの話が主だった。 統計とともに、 ウェーヴレット解析を含めた数値計算は後々の人生に役立つだろうと思って、 密かに勉強の対象にしているので、最新情報を得るため参加した。 昼食は、胃腸の調子が今一つだったので、 消化の良いものにしようと思い、 坂を降りたところの「スープストック」でランチ。 午後の講演も最後のショートコミュニケーションまで参加。 一つポイントが分かった気がして、なかなか面白い研究会だった。 夜はフランスからのゲストを招いて会食があったようだが、 遠慮してそのまま新幹線で帰路につく。 夕食は車内で駅弁。 そして、今、帰宅。 明日はゆっくり自宅で静養しよう。

Thursday, September 07, 2006

明太子スパ

昨夜、涼しかったせいで、よく眠れた。 爽やかに早朝に起床。 午前中はあれこれ雑務。昼食には明太子スパゲティを作った。 明太子スパゲティは白ワインの効かせ方がポイントかな。

今夜の内に東京に移動して、 明日の朝からの研究会に参加する予定。 次の更新は明日8日の夜です。

Wednesday, September 06, 2006

竜安寺の再会

今日は衣笠のキャンパスに出勤。 意外に早く仕事が片付いて、15時には閑になったので、 ふと思いついて、 キャンパス近くの竜安寺に散歩に行くことにした。

庭を散策した後、 石庭を小一時間ほど眺めながらぼうっとしていると、 外国人の一団ががやがやとやって来た。 ちょっと早いが秋は観光のシーズンであるなあ、 と思っていると、その中の一人にどうも見覚えがある。 ひょろっと背の高い白人で、 「キル・ビル」でユマ・サーマンが着ていたような、 無地の生地に頼りない文字で「一期一会」 と書かれた T シャツを着ている。 オックスフォードで同じセミナに出ていた、当時学生だったか、 PD だったかと良く似ているが、他人の空似かな、と思っていた。 しかし、しばらくして向こうから「ハロ」と声をかけられて、 やはりその人だと分かった。 全く偶然の再会。 今週京大で開かれている研究会に参加するために来日して、 そのエクスカーションで竜安寺に来た、と言うことだった。 しばらく、天気の話とか、コレジの庭の話とか、 雑談をした後に 「ソノ T しゃつ、イイね ("I like that T-shirt.")」 と言うと、 「いやー、友人にもらったんだけどね。 禅寺には丁度いいだろう」と照れ臭そうに笑っていた。 後から、京大の学生さんとかもやってきて、しばし数学の話とか。 その一団が帰ったあと、雨が降ってきたので、雨宿りのためやむを得ず、 拝観終了時間までずっと石庭を見て、 今までとこれからの人生について考えていた。 しかし結局、雨は降り止まず、強い雨の中をバス停まで歩き、 びしょぬれになって帰宅した。

すぐにお風呂に入って、身体をあたため、 夕食は明太子炒飯。 夜も雨は続いている。空気はひんやりとして、 そう言えば、これはもう秋雨と呼ぶのかなあ。

Tuesday, September 05, 2006

秋の天の川

今日は少し、気温が高め。もう秋とは言え、昼間の日差しはまだ夏か。 古今和歌集を読んでいると、 秋の歌のところに、天の川や織姫の歌が沢山出ていて、 ああそうか、旧暦では七夕は秋で、 立秋よりもしばらく後のことだったのだ、 と当たり前のことに驚く。 秋風の吹きにし日より久方のあまのかはらにたゝぬ日はなし。 キャンパスに出勤。午後は集中的に作業。 もうちょっと面倒かなと思っていたのだが、 一緒に作業する方が、 もう一つの会議よりこちらを優先してくれたので、 案外、早く済んだ。夕方に終了。 帰宅して、夕食にはカルボナーラを作った。

明日も業務でキャンパスに出勤。 明後日は金曜日の朝からの研究会のため、 東京に移動。

Monday, September 04, 2006

サイレンス

家の裏で工事らしき騒音が始まり、目が覚める。 8 時だ。私はびっくりするほどの田舎で生まれ育ったので、 騒音や大きな音が苦手だ。おそらく普通の人よりずっと耐性が低い。 日本の家屋は音に対して無防備過ぎる。 なぜだろうかと考えつつ、階下のキッチンに降り、 「科学の耳せんサイレンシア」の威力で静寂を得て、朝食の珈琲を飲む。 さて、今日は 9/10 締切の仕事を済ませよう、 と仕事にとりかかる。しばらく集中。 昼食に納豆パスタを作って、 DVD で「羊たちの沈黙」の最後のあたり、 レクター博士とクラリスの再会から、 レクター逃亡までのシーンを観ながら昼食。 午後も仕事の続き。午前中にほとんど出来ていたので、 添削をするくらい。 10 日締切の方は一応、格好はついた。 あとは締切までに何か思いつけば、追加していこう。 明日からは 30 日締切の方に取りかからねば。 夕食は御飯を炊いて、鰻丼。 夜はちょっとだけチェロを弾く。 二日続けると、もうビブラートが痛いなあ。

今日もまた、一歩も外に出ずに家にいたので、 誰とも顔をあわさず、一言も話さず。 明日と明後日はキャンパス出勤。

Sunday, September 03, 2006

マッドサイエンティスト

今日も健やかに目覚めた。 古今和歌集の秋の巻を読んだりしている内に、昼。 昼食は冷や御飯で一汁一菜。 午後は少し昼寝をしてから、 日の高い内にお風呂に入り、 クロード・シャノン の伝記的な文章を読んだ。 通常書かれる伝記とは違い、 シャノンの数学者としての活躍が事実上終わった後に焦点があって、 そこが面白い。 その後、シャノンはルーレットと株式市場に勝つ研究をしていたのだ。 クレイジィで素敵だ。科学者はこうありたい。 やはり行き着く先は、未来予測かタイムマシンの作成が王道だ。

夕食には月見肉饂飩を作った。 食後は少しチェロを弾く。 指慣らしをしてから、G 線上のアリア。 今日はずっと家にいたので、誰とも顔をあわせず。

Saturday, September 02, 2006

ワインの後味

いつの間にやら長月。光陰矢の如し。 昨夜も涼しかったからだろうか、早朝に爽やかに起床。 日中はまだ気温が高いとは言え、風は既に夏のものでない。 袖の上の露けかりつる今宵かな これや秋立つはじめなるらむ (紀伊君)。 9 月はまだ夏休み中とは言え、あれこれと忙しい。 午前中はスケジュールをレヴュしながら、 各仕事への時間の振り分けを考え、 できるものには最初の筋道をつける。 せいぜいがタイトルだけ書いておく、 とか、空のフォルダ(ディレクトリ)、またはファイルだけ作っておく、 程度だけれど。 仕事は取りかかるのが一番難しいのだが、 今日はファイルの名前だけつければいいんだ、 と思えばこのハードルを越え易い。 そして作ってみたら、意外とするすると仕事が進む。 私と同じく怠け者の方はお試しあれ。 9 月末だと思い込んでいた論文の締切が、 実は 8 月末で、しかし、9月末に延長されたことを一通のメイルで知る。 損をしたような、得をしたような…

午後は少し昼寝をしてから、読書など休日モード。 伝説の傑作と呼び声も高い、「ハマースミスのうじ虫」。 比較的短い小説なので夕方までに読了。 兎に角、イギリスらしい小説。 グレアム・グリーンや、 イヴリン・ウォー と同族か。 人間に対する悪意のこもった好奇心とスポーツマン精神と言う相容れない要素が、 階級社会の中でブレンドされた、とでも言いますか、 知りたくなかったことを知ってしまった、 と言う感じの純潔の喪失感とでも言いましょうか、 形容のし難い後味の悪さ。 ところで、小説の主人公もワイン業者だが、 作者のモールもワインと関係がある。 モールは MI5 の諜報員だった一方で、 義父は代々続いたワイン醸造家の家柄だったし、 モール自身、"Gods, Men and Wine" (by William Younger, 1966) と言うワイン通史も本名で書いている。 その業界では権威のある本だそうだ。 amazon.co.jp で調べたら、確かに売っていた。 しかし、528 ページもあるハードカヴァの本なのに、税込 1065 円。 何かの間違いでは。 夕食は鰻の蒲焼を買ってきて、御飯を炊いて鰻丼。 卵を落としたお澄ましも作った。

Friday, September 01, 2006

放物線

明け方まで雨が降り続き、 久しぶりに涼しい夜だった。 ずっと家にいて、あれこれの雑用を片付けていた。 夕方になって、買い出しに出る。秋の気配。 秋来ぬと目にはさやかに見えねども。 本屋で「殺人者の放物線」(アンドレア・H・ジャップ/ 藤田真利子訳/創元推理文庫)と、 「ハマースミスのうじ虫」の新訳(W.モール/霧島義明訳/創元推理文庫)を買い、 ワイン屋さんへ。 注文していたワインを受け取って帰る。 夕食にはスパゲティ・アラビアータと、 ポテトサラダを作った。

夜は「殺人者の放物線」を読む。 天才的女性数学者が FBI からの依頼を受けて連続殺人犯を追う、 と言う今までありそうでなかった設定。 天才的能力を持ちながら大学に残らずに、 統計分析と予測をビジネスにして隠遁生活をしている、 というヒロインの造型が興味深い。 このシリーズの原書は既に 6 作出版されていて、 これはその一作目の初翻訳。 米国在住のフランス人である著者も科学者で、 食の安全についての啓蒙書を書いたり、 NASA で働いたり、 TV 番組のシナリオを書いたり、 パトリシア・コーンウェルのミステリを仏語に翻訳したり、 色々なことをしている才女らしい。 うーむ、おかしな人がいるものだ。 「ハマースミス」の方は言わずと知れた古典で、 女王陛下もお気に入りだと言うイギリス・ミステリの傑作。 新訳が出たので再読してみようと思って買った。

今は東京の晴海あたりで働いているらしい、 万能のネットワーク・ハッカー、N 氏から連絡。 9 月の下旬に京都に逃避するから、夕食でも一緒にしようとのこと。