Monday, December 31, 2007

大晦日

昨夜は 11 時前に寝たのに、10 時過ぎまで寝てしまった。 ほとんど半日眠っていたことになる。 どうしてこんなに眠れるのか、不思議だ。 昔からそうなのだが、何か病気じゃないのだろうかと心配になる。 年を取ると次第に睡眠時間が短くなると聞くが、 私はいまだに何の困難もなく毎日 8 時間以上眠れる。 それ以前に、 他の人に比べてかなり人生を無駄にしているのは確かだ。 例えば京極夏彦はほとんど寝ないらしい。 私に比べて一日が 5 割増しも長い人がいるのだ。

寝室のカーテンを開けると眩しいほどの晴天。 階下に降りて、 珈琲と昨日の対局中に食べていたチョコレートの残り。 冷蔵庫は既に空にしてあるので、昼食の材料がない。 米を炊けば何とかなるが半合だけ炊くのは難しい。 大蒜控えめにアーリオ・オーリオを作って、 海苔と梅肉で味つけし、ちりめんじゃことあわせた。 この貧乏パスタで、シャンパンの残りを一杯。 珈琲を飲んでから身支度をして外出、 河原町に出て年末年始用に花屋で花を見繕う。 私はかつては花束を贈らせたら関東一の腕前だったのだが、 その腕を持ってしても、 懇意の花屋がないとどうしようもない。 大晦日で花もほとんどなかったが、最善は尽した。 帰りに近所のワイン屋に寄って年始用の赤ワインを一本。 最後の用事が済んだので一旦家に戻ってから、実家に向かう。 今夜だけ実家に一泊して明日の夕方京都に帰りますので、 今夜の更新はありませんが、 明日の元日一日の夜も更新します。

今年のまとめと反省。 今年の目標は日常生活の建て直しだった。 前半はまあまあだったのだが、後半に至って委員の仕事が爆発的に忙しくなり (今も続行中で、年度末まで仕事が山積み)、それどころではなかった。 来年度に学院構想スタートと新二学部設立とカリキュラム改訂が重なると言う、 トリプル・ウィッチに教務委員になってしまったのだからしようがないが、 ここまでとは思っていなかった。
研究活動の反省。 夏休みにかなり考えられたことが良かったが、結果はゼロだった。 論文は去年の国際シンポジウムのプロシーディングが一本出版された。 その大本の論文がずっと共著者の手元で停止していたのだが、 年末に急に復活し、もうすぐ某スペインの雑誌から出版されるはず、多分。 講演は春の学会の分科会特別講演と、年末の他分野の研究会で話させてもらった。 来年は、夏の大きな国際学会で話させていただく予定。 振り返ってみると、結局、今年新たに得られたという結果は何もなく、 猛烈に反省の要あり。来年は何とかしたい。
それ以外のプロジェクト。 共訳者のところでストップしていた某数学書の翻訳が年末急に再開された。 自分の分担は済ませたが、来年出版されるかどうはまだ怪しい。 まだ原稿を書き始めたばかりだが、 次の新学期あたりにでる雑誌に一つ記事が出る。
チェスは日本橋のクラブで常連化し、 自分より200から300レイティングの高い常連メンバたちに、 ときどき勝てるようになってきた。 しかし、トーナメントは常に酷い結果だった。 忙しいときに無理矢理に遠出して出場しても結果も良くないし、 対局自体荒れてしまうなと反省。 来年はさらにタクティクスとエンドゲームの勉強が課題か。 相変わらず、まだセオリーは不要と見ている。 プログラミングの勉強の優先順位は途中から意図的に下げた。 チェロの練習も優先順位を下げた。 ファイナンス部門は後半、市場全体の下げで猛烈に下げた。 年始から比較してリスクアセットは 6 パーセントに近いマイナス。 しかし、後半いずれ買う予定だったものをかなり買い進められたので、 予定通りではあった。

Sunday, December 30, 2007

英国式庭園殺人事件

8 時起床。今年最後のゴミ出し。 最後だけにあれもこれも捨てた。 今年後半はもっと大胆に整理して、 荷物を減らすつもりだったのだが、あまり進まなかった。 朝食は珈琲とシュトーレンの最後の残り。 ちょっと定跡をさらってから、 炒飯を作って早めの昼食を取り、午後は日本橋のチェスクラブへ。 午後からの二局に参加。

第一局、かなりレイティングが上の相手に白番。 相手が序盤早々にかなり無理気味のアタックを仕掛けてきたのを、 何とか咎めることに成功して短時間で勝った。 でも正直に言って、 クイーンを 3 ピースと交換してくる手を全然読んでいなかったので、 タクティクスの果てにこちら側に手があった、と言うだけの、 単なるラッキーだった。 第二局でついに、おそらくクラブで最強と思われる方と対局。 残念ながら黒番。 微妙にメインラインの手順を換えてこられて、かなり難しかったが、 互角に指せていたと思う。 しかし中盤に入って一息ついたころで、勘違いでピースダウン。 そのまま一つ、また一つ、とピース交換され、 ついに相手だけにピース一つ残ったポーンエンドゲームになり、 なすすべもなく負けた。 流石に強い人は、一度捕まえたら最後の最後までびくとも手を緩めない。 折角の機会をポカでつまらないゲームにしてしまったのは残念。

夜はシャンパンの残りを飲みながら、DVD を観る。 今日は、「英国式庭園殺人事件」(P.グリーナウェイ監督)。

Saturday, December 29, 2007

「山猫」を観る

8 時起床。年末最後のプラスチックごみ出し。 「人間の土地」(サン=テグジュペリ/堀口大學訳/新潮文庫) を読み返して、自分のダメ人間ぶりを反省したり。 昼食は御飯を炊いて、納豆、卵、海苔などの粗食。 鍋に使った残りの白菜の根元のあたりで味噌汁。

午後は タイムとオリーヴと玉葱のパンを肴にシャンパン(ミシェル・アルノー・エ・フィス)を飲みながら、 DVD で「山猫」(ルキノ・ヴィスコンティ監督)を観た。 三時間以上もある大作なので、今日の午後全部をあてて集中して観る。 例えば「山猫」ならば、スノッブな人に、 この映画はシチリアに行ったことがなければ絶対に理解できない、 と言われたりするものだ。 (まあそもそも、自分も没落貴族でなければ、 ヴィスコンティを理解することはできないのかも知れない。) そう言う要素は確かにあるだろうが、私はあまりそういう経験主義が好きではない。 その主張とは逆に、むしろ情報に対する鈍感さ、怠惰さを感じるから。 問題は真に情報を得ようとしているか、 いかに真剣に自分の頭で考えているかだろうと思う。 とは言え、私には「山猫」が良く分からなかったが、 三時間もあったとは思えないほど楽しく観られたし、 特に主人公が新政府からの遣いと会談するシーンがしみじみとして良かった。

予約の電話を入れて、夜は久しぶりに祇園のバーに行く。 祇園の方は何かの用事でたまたま夜に街中にいて、 その帰りにちょっと立ち寄ってみようか、と言うのが普通なので、 随分とご無沙汰になっていた。 今日は、年末のご挨拶のため、予約を入れてそのためだけに祇園に出る。 ほぼ開店と同時に到着したのだが既に 4名の団体客(?)が入っていて、 開店早々に賑やかだった。 新潟のものだと言う洋梨を使ったシャンパンのカクテルを一杯のあと、 赤ワイン一杯でビーフシチューを食べて帰る。 シチューにかかったタスマニア産の胡椒が良い風味だった。 私の家の近所の姉妹店バーにも同じ料理があるが、 このスパイスは使っていない。 20 時半くらいに帰宅。

Friday, December 28, 2007

メインその1、その2

冬休みに入ったせいか、いくらでも眠れる。 10 時間は軽く寝た。 朝食はルイボス茶とシュトーレン一切れ。 昼食は鍋焼饂飩。 午後は翻訳の仕事。最終章の添削を終えた。 ついでに序文も添削して、一緒に共訳者に送った。 これで一応、私の分のチェックは終了。 次は 1 月 20 日まで原稿書きの仕事をする。 夕方から外は土砂降り。 これなら空いているかも知れないな、 と思って近所のバーに電話をかける。 大丈夫だと言うので、雨の中、バーに夕食に出かける。 食事のお供は、「美食の社会史」(北山晴一/朝日選書)。

外は大雨とは言え、 流石に今日は仕事納めの人も多いのか、店は大繁盛の様子だった。 帆立のマリネ、平目のカルパッチョをルーウェン・エステートのリースリング一杯で。 最初のアミューズの帆立のマリネがおやっと思うほど美味しかった。 カルパッチョはキウィらしき甘酸っぱい味わい。 メインその一として平目のムニエル。バルサミコに焦がしバターのソース。 レミ・ジョバールのムルソーを一杯。 骨もがっしりした随分と立派な平目で、 ほっくりと良い加減に火が通っていた。ただ、いつものように私には量が多すぎる。 とか言いながらも、メインその2の子羊のソテーを頼む。 ベルコーレを一杯。つけあわせのワイルドライスもたっぷりで、 相変わらず私には量が多すぎる。 とか言いながらも、デザートにブルーチーズと言う代わりに、 ブルーチーズのクリームソースのショートパスタを最後に。 あとはデザートと珈琲だが、 残念ながらこのバーには珈琲がないので、ここで切り上げて帰る。 自宅で珈琲と、シュトーレン。

Thursday, December 27, 2007

儀式

昨夜は随分と早い時間に眠くなってきたので、 さっさと寝てしまった。 おかげで今朝は 7 時起き。 寝床で "The Creative Habit"(T.Tharp)を読む。 丁度、「儀式」についてのところ。 著者は毎朝 5 時半に起きて、 すぐに練習着に着替えると、 家の前でタクシーを拾ってジムに行き、 二時間練習するそうだ。 しかし、毎日の練習が儀式なのではない。 私の儀式はタクシーなのだ、と彼女は書く。 運転手に「ジムまで」と言うこと、それが儀式なのだ、と。 彼女の知り合いのシェフは、 毎日をベランダに作った小さな畑に出て、 ハーブや花の香りを嗅ぐことから始めるそうだ。 ストラヴィンスキは毎朝、一番にピアノに向かい、 バッハのフーガを弾くことから始めたそうである。 やはり読んでいると自分がダメ人間に思えてくる本だ。

朝食は珈琲と、タイムとオリーヴと玉葱入りのライ麦パン。 午前中は二時間ほど翻訳の添削作業をする。 昼食はまた白菜と豚肉の鍋をして、最後に昨日のひや御飯と卵で雑炊。 食事のお供はシャンパン。まだゴセ・ブラバンが残っている。 酔い覚ましに昼風呂に入る。 湯船ではまた Donner の "The King (Chess Pieces)" から幾つか記事を読む。 酔い覚ましのつもりだったのに、身体があたたまったら眠くなってしまい、 小一時間昼寝してしまった。昨夜もたっぷり 8 時間以上は寝たのだが。 夕方もまた同じお仕事。 夕食はしめじとベーコンのパスタ。

Wednesday, December 26, 2007

パジャマ

いやあ、可愛いわ、アンナ・カリーナ。 そりゃゴダールじゃなくても結婚するね。 このパジャマ姿にノックアウトされたんだ、きっと。

9 時起床。少し寝坊。珈琲とシュトーレンを一切れ。 午前中は翻訳の仕事。 昼食には、 すじ煮込み風の強い味つけで、鍋焼き饂飩を作ってみた。 先日開けた赤ワインが残っていたので、 最後の一杯(シャルボニエールのヴォケラス '05)。 TV をつけたら、 小太りの医者と誰か有名人の娘が結婚を撤回したニュースばかり。 観ていると憂鬱になってきたので、 DVD 「アベンジャーズ」を観ながら、饂飩を食べる。 酔い覚ましに洗濯機で洗濯しながら、昼風呂。 湯船では Donner の "The King (Chess pieces)" をぺらぺらと拾い読み。 少し休んでから、午後も翻訳の添削作業。 間に珈琲の休憩を入れつつ、 夕方まで。丁度また一章が終わったので、共著者にメイルで送る。 あとは比較的短い最終章だけ。二三日もあれば終わるだろう。 夕食までは、 "The Creative Habit"(T. Tharp)を読む。 最初の一章を読んだだけで、自分の怠惰さを激しく恥じた。

夕食は久しぶりに御飯を炊いて、 白菜と豚肉の炒めもの、納豆、味噌汁などと。 "Creative Habit" を読むとやる気がでるが、 読み過ぎると自分の駄目さ加減に悲しくなってくるので、 夜は DVD で映画を観る。 今日は「数に溺れて」(P.グリーナウェイ)。 ちょっと気合を入れて観ようと思い、 ソファとモニタをそれぞれ移動して、 ソファに座って正面から観られるようにした。 かなり集中して観たのだが、 やはり 1 から 100 まで全部見つけられなかった。 今日は一歩も家から出なかったので、 ずっとパジャマ姿だった。

Tuesday, December 25, 2007

仕事納め

8 時起床。ゴミ出しをして、珈琲で目を覚まし、 いつもの朝の仕事をしてから出勤。 学生食堂で早めの昼食。 13 時から修士ゼミ。 2 次変動有限では積分が経路ごとに定義できないこと。 続いて、15:50 から卒研ゼミI。 夫婦円卓問題の続き、並べ替えの出会い問題、 ポワソン分布による近似など。 今日は今年最後のゼミ日だったが、 その合間にも教務委員の時間割作成の仕事。 ゼミが終わってやれやれと思いながら、 時間割作業のバックアップを取っていると、 学科長が研究室にやってきてまた教務問題の打ち合わせ。 でも、18時半くらいには終了して、撤収。 明日からは一斉休暇。今年の後半は長かったなあ。

20 時前に帰宅できた。また鍋を作って夕食にしようかな、 それともバーに行こうかな、 と思っていたらまた急な仕事が入り、 あれこれ調べたり、メイルを書いたり。 これでもう今年は大丈夫だろうか…

多分、これから食事して、 お風呂に入って、DVDで「女は女である」(J.L.ゴダール) でも観よう。あ、そうだ、シャンパンも冷やそう。 ゴセ・ブラバン。

Monday, December 24, 2007

普通

少し寝坊して、9 時起床。 珈琲とチョコレートの朝食をとって、衣笠キャンパスに出講。 今年最後の講義。 生協食堂で早めの昼食。 13 時から「数理の世界」。同様に確からしい、とはどういうことか、など。 1 コマ分の空き時間には、「ゆんげ」のスペースで翻訳の添削仕事。 近くのテーブルに母親らしき相手と電話している学生がいて、 「この大学に祝日なんかあらへんわ!今日も明日も普通やわ!」 と興奮気味に話していた。何か辛いことでもあったのだろうか。 16:20 から「情報の数理」。エントロピィと平均語長について。 すぐに帰ったので、18 時過ぎくらいに帰宅。 夕食はキムチ鍋。鍋ばっかりだな。 食後も添削したもののファイルへの反映作業など。

ハッピークリスマス、キョウコ。で、クリスマスだ。どうしてた? また一年が終わって、また次の一年が始まる。それで今日はクリスマスだ。 君が楽しくやってるといいな。 近しい人たち、愛する人たち、老いた人たち、若い人たちと。 ほんとうにメリークリスマス。そして新年おめでとう。 いい年になりますように。何の不安もない年に。

それで今日はクリスマスだ。弱きものにも、強きものにも、 豊かな人にも、貧しき人にも。 世界はこんなに間違ってる。でも、今日はこんなに幸せなクリスマスだ。 黒い人にも、白い人にも、黄色い人にも、赤い人にも。 全ての争いを今やめよう。 ほんとうにメリークリスマス。そして新年おめでとう。 いい年になりますように。何の不安もない年に。

で、クリスマスだ。僕らは何をしていたかな。 また一年が終わって、また次の一年が始まる。 だからメリークリスマス。 君が楽しくやってることを僕らは祈るよ。 近しい人たち、愛する人たち、老いた人たち、若い人たちと。 ほんとにメリークリスマス。そして新年おめでとう。 いい年になりますように。何の不安もない年に。 戦争は終わる、もし君がそうしたければ、戦争は今終わる。

幸せなクリスマスを。

"Happy Xmas (War is over)" (Jone Lenon and Yoko Ono)より。 原による試訳。

Sunday, December 23, 2007

趣味の問題

8 時起床。目覚しの珈琲。 猫砂が切れていたので西友まで買いに行く。 ついでに、食材を仕入れる。 昼食までは、Botvinnik の "Championship Chess (Leningrad-Moscow 1941)" から棋譜を並べたり。 スミスロフが黒番で不利なゲームをドローにした華麗な対局。 やはりスミスロフのエンドゲームのセンスは凄い。 特にキングを一杯に使うのがうまい。 早めの昼食をカルボナーラで済ませて、 午後は日本橋のチェスクラブ「アンパサン」に行く。 車中では翻訳の添削作業。

午後からの 2 局に参加。 第一局目はレイティングがずっと上の相手に黒番で勝ち。 中盤の優勢をエンドゲームにつなげて勝ち切り、 二時間をたっぷり使った充実した対局だった。 この対局の後は、自分はかなりチェスが分かってきたのではないか、 と錯覚したくらい。 そして第二局。 かなりレイティングが下の相手に序盤であっさり負け。 しかも、事実上 5 分もしない内の瞬殺。 冷水を浴びるように錯覚から目が覚め、 実際はチェスが全く分かっていないことを思い知らされた。 相手は「ブリッツァー」とでも言うか、 序盤で必ず f7 にサクリファイスする早指しの超攻撃型プレイヤで、 どうも苦手。 難しいことを色々言っても結局、 チェスは王様を相手より先に詰める、 と言うシンプルなゲームであると言う基本に目を開かされた。

帰りに家電屋で DVD プレイヤを買った。 自分へのクリスマスプレゼント。と言うわけではなくて、 執事が PlayStation2 を新居に持って行ってしまったので、 買おうと思いながら延ばし延ばしになっていたもの。 大抵のフォーマットなら再生できると言うだけで、 他に何の機能もない小型再生機を選んだ。 聞いたこともないブランド名、異様に安い。3800 円だった。 19 時くらいに帰宅して、夜はまた白菜の鍋。 たんぱく質は豚肉。鍋の後、 葱の青いところと卵を追加して饂飩にする。

テストを兼ねて、DVD で「趣味の問題」(監督脚本ベルナール・ラップ) を観る。素晴しい再生装置があるわけでもないし、 私自身、画像や音にこだわる方でもないので、 3800 円のこの機械で全然問題なく、私には十分に美しい再生ぶりだった。 一昔前の PC 用外付け CD-ROM ドライヴくらいの大きさで場所もとらない。 なかなか良い買い物をした。 ちなみに「趣味の問題」は小説とは演出がかなり違ったが、 それはそれでなかなか面白かった。 例えば、映画では主人公も含め登場人物たちそれぞれが、 「事件」について事後のインタビュを受けるシーンが要所要所に挿入されていて、 平凡な演出であるもののそれなりに効果をあげている。 原作では重要な役割を果たす某女性が、 映画ではばっさり消されているのはちょっと残念。

Saturday, December 22, 2007

雨の一日

9 時起床。寝坊。 午前中はぼんやりしていて、 昼食はキムチ豆腐鍋。 朝から降っていた雨が、午後から強く降り出した。 午後は翻訳の添削と、原稿の TeX フォーマットのチェックと少し原稿書き。 夕食は昼間の残りのだしで雑炊を作った。 一つ先日の失敗を片付けるために、 夜の雨の中をちょっと外出。阪急で河原町へ。 用は簡単に済んで時間も早かったので、 ひょっとしたら席があるかも知れないと思って 祇園のバーを覗いてみたが、 勿論のこと満席だった。 もっと月末に近付いてから出直すのが良さそうだ。 ほんの一時間ほどで帰宅。 夜も翻訳の添削。

冬休み用の本を物色中。 それに DVD で映画もちょっと観ようかな、と。 ヴィスコンティの「山猫」とかどうかなあ。 大人になるとあまりの名作は、 何故かちょっと観るのが気恥ずかしいような、 文化的吝嗇とでも言おうか、なんだか遠ざかってしまう。 たとえ、おヴィスコンティ趣味ですか、とか貶されようが、 観たいものは堂々と観なくちゃいけないね。

Friday, December 21, 2007

難所案内

8 時起床。寝床で少し読書してから起き出す。 ルイボス茶を飲みながら午前中は翻訳の添削。 昼食はしめじなど鍋用の残りの茸類でスパゲティ。 食後の散歩を兼ねて、郵便局にあれこれ用事を片付けに行く。 ついでにワイン屋で注文していたものを受け取る。 O 夫人は随分と綺麗になったなあ、と思った。 さらについでにタリーズで珈琲豆を買って帰る。 その後も翻訳の添削と、雑誌の原稿書き。 この原稿を書くのは楽しみにしていた仕事で、 ようやく書き出せて嬉しい(勿論、頭の中にはある程度書いているが)。 初学者がつまづく各分野の難所、と言った感じの特集で、 私は確率論を担当する。 学生どころか一般読者まで相手のつもりで易し過ぎるくらい易しく書いてくれ、 とのリクエストだった。 とは言え、普通の人が読む雑誌とは思えないので、 数学や物理が好きな大学新入生相手くらいを想定して書くつもり。

偶然が重なって、年末年始用にシャンパンを 5 本も買ってしまった。 内一本はかなり前からの納品の遅れが今になったもので、 一本は今月分の頒布会に入っているのを忘れていた。 三本も買っておけば十分と思っていたくらいなので、 5 本ともなると私の酒量では、毎日、しかも、 かなりやる気で飲まないと消費できない計算だ。

Thursday, December 20, 2007

Creative Habit

8 時起床。ルイボス茶を飲んですぐに出勤。 電車の中では翻訳のチェック。 午前中は出張中の先生の代講。 と言っても、試験監督なので楽。 合間の休憩時間が 20 分しかなかったので、 購買部で生協弁当を買って研究室で昼食を済ませ、 12 時半から卒研ゼミF。 ブラウン運動の期待値の色々な計算。 続いて、14:10 から卒研ゼミI。待ち行列理論。 続いて、15:50 から「プログラミング演習」。 わずかの休憩にも委員の関係の仕事などが入り、 朝から夕方までほぼノンストップで働いた。 最後のとどめに研究室に学科長が訪ねてきて、情報交換。 学科の時間割作りをもう少し進めたかったが、 今日はもう働き過ぎていると思って切り上げる。 19 時半くらいに帰宅。 適当な貧乏鍋。鍋の後の饂飩。

今日 amazon から届いた本。 "Creative Habit" (Twyla Tharp / Simon & Schuster Paperbacks). 冬休み用。 Tharp は振付師、兼ダンサー。 かっこいいぜ、トゥイラ。

私は58 歳にして、ついに「振り付けを極めた」と言うような感じを得ました。 その機会は私の 128 番目のバレエ作品、 「ブラームス=ハイドン変奏曲」でした。 私の経歴で初めて、ダンスに向かう全ての要素をコントロールしていると感じたのです。 音楽、ステップ、パターン、舞台の上の人々の配置、 目的の明晰さ。 ついに、私は私が心の中に見ているものと、 私が実際に舞台の上に得ることができるものとのギャップを、 閉じる技術を得たのです…

Twyla Tharp (Choreographer)

Wednesday, December 19, 2007

フォースを信じるんだ

8 時起床。瓶類のゴミ出し。 寒いとは言え、例年ほどじゃないように思う。 珈琲豆が切れたので、ルイボス茶。 いつもの仕事をしてから出勤。 学生食堂で早めの昼食。 午後は事務仕事に励む。具体的には専門科目の時間割作成。 16 時から、解析セミナ。 「み○ほ」から講演者を迎えて、現場での数理ファイナンス的手法の実際を聞く。 ボラティリティの変動や理論値との歪みを利用して利益を得よう、 と言う話で、非常に興味深かった。 おまけの為替ヘッジビジネスの話も面白かった。 数学の力を信じて現場で闘う人の話は面白いね。 夜は講演者を迎えて、院生、学生たちと串揚げ屋さんで会食。

数学の力を信じて、と書いたが、A 堀先生によれば、 ファイナンス業界は「フォース」を信じるものと、 「フォース」を信じないものに大別され、 その信念の度合いで区別されるのだそうだ。 「フォース」とは金融ビジネスや市場における数学の力である。 どうも我々の世代は何でもかんでもスター・ウォーズで語る傾向がある。 困ったものだ。 A 堀先生によるファイナンス業界「スター・ウォーズ」話は続く。 ヨーダが W 先生、と言うこと以外、登場人物はその場その場で違うようだ。 フォースは一つ間違うと欲望のために使用する暗黒の力となり、 そのダーク・フォースに取り込まれた者も多い。 A 堀先生によれば、私もかつてダーク・フォースに陥っていたが、 立ち直ったらしい。 しかし、フォースを信じるものは最後には、 世界に平和と調和をもたらすのである。 学生たちのほとんどが話についていけないので、 A 堀先生は「じゃ、三國志にしよう」と言って、 今度はファイナンス業界三國志について語っていた。 私は二次会には行かなかったが、 おそらく A 堀先生は今度はファイナンス業界「信長の野望」について語って、 学生たちを困らせていることだろう。 22 時過ぎに帰宅。

Tuesday, December 18, 2007

黒い白鳥、現る

8 時起床。ゴミ出しをして、 珈琲を飲みながら一時間ほど翻訳仕事をしてから出勤。 学生食堂にて早めの昼食。 肉味噌丼、法蓮草のおひたし、味噌汁。 13 時から修士ゼミ。 ヤング積分で定義されるような微分方程式の解の存在と一意性の証明。 続いて 15:50 から卒研ゼミI。 クーポン集め問題、夫婦円卓問題など。 クーポン集め問題とは、おまけ付きのお菓子などで全部の種類のおまけを集めるまでに、 どれくらいお菓子を買わなければいけないか、と言う問題。 また夫婦円卓問題とは、パーティで夫婦たちが席についたときに、 誰も自分の配偶者とは隣りあっていないような可能性はどれくらいあるか、 と言う問題。 どちらも確率マニアや娯楽数学マニアに人気のある問題で、 いまだに色んなヴァリエーションが研究されている。 卒研ゼミが済んだあとは、さっさと帰る。 夕食はキムチ鍋。鍋の後は饂飩。

今日の購入本。amazon から "The Black Swan" (N.N.Taleb / Random House)が届いていた。 "Fooled by Randomness" (「ランダムネスにだまされて」)の続編。 タイトルからして全く同じテーマ、 つまり滅多に起こるはずのないことが起こってしまうことの経済学的、 数学的、哲学的考察、と予想されるが、 "Fooled by..." が面白かったので買ってみた。 冬休みの読書用。

Monday, December 17, 2007

質問

8 時起床。珈琲。 一週間の予定とすることをレビューしてから、 翻訳の推敲仕事を少しだけして、衣笠へ出勤。 学生食堂で早めの昼食。日替わり(クリームコロッケ、焼き鳥、ポテトサラダ、 キャベツ)、高野豆腐と野菜などの和え物、玄米御飯(S)、味噌汁。 法学部の講師控室で予習をして、 13 時から「数理の世界」。複素数についてと、 確率論ヘのイントロ。 講義の後の質問は、 「では、i の平方根は 45 度回転ですか?」 と言う非常に鋭いものと、 「先生はガリレオみたいに、何でも数式で考えているんですか?」 と言う非常に何だか良く分からないものだった。 1 コマ分の空き時間は「ゆんげ」で自動販売機の珈琲を飲みながら、 翻訳の推敲仕事。なぜか「ゆんげ」のショップ自体はもう閉まっていた。 既に冬休みモードなのだろうか。 16:20 から産業社会学部で「情報の数理」。 エントロピィの性質など。 講義の後、学生の質問に答えていたら長引いて、終わったのは 18 時過ぎになった。 質問のポイントは log の計算と言うよりも、 マイナス 2 分の 1 マイナス 2 分の 1 がなぜマイナス 1 か、 と言うところのようだった。 答はマイナス 2 分の 1 かける 2 だからですね! と納得していたが、 その納得の仕方は正しいものの、難し過ぎると言うか、 何だかひねり過ぎなんじゃないかなあ…と思った。 バスで帰る。夕食は適当パスタ。珈琲とカステラ。

今日は急に冷え込んできた。足元が特に冷たい。 膝かけを導入したら、かなり暖くなって驚いた。 帽子をかぶると身体がとても暖いことに気付くのに似ている。 爺むさい話で申しわけない。

Sunday, December 16, 2007

文化の問題

いつもと同じく 8 時くらいに目が覚めた。寝床で読書など。 10 時前くらいに起き出して、珈琲とカステラの朝食。 ボトヴィニクの古典、「レニングラード=モスクワ 1941」 から棋譜を並べたり。 ボトヴィニクの解説は、 チェスが分かった気になれるので良い。 現代チェスの棋譜は、本当に良い手かどうか見せてみろ型の、 「変化を全部読んだ結果、良し」タイプの解説が多い。 私のような弱いアマチュアには読んで面白くない。 これはコンピュータ解析が原因の他には、 カスパロフ流の弊害じゃないかと思う。 一方カスパロフ自身は時々(特に誰かをけなすときには)、 はっとするようなチェス「論理」を書くところからして、 20世紀チェスと現代チェスの境目にあった人なのだろう。 例えば、2000 年サラエボでの Movsesian との対局の棋譜解説では、 こう書いている。(NIC より。強調は引用者による。)

「対局の後、モヴセシアンが言うには、 彼は ICC でこのラインを何度もファン=ウェリィ(Van Wely)相手に戦って、 この局面を研究したが、 ファン=ウェリィは一度もキャスリングしなかったそうだ。 私の見解では、これはチェスの文化の問題だ。 c3 をとってナイトが a4 に行けば、黒良し、だ。 黒は急な手を探す必要がない。 キャスリングして、ナイトを e5 において、 クイーンを c7 か a5 において…、色々な手がある。 時に、d5 地点か、または f5 も争う必要があるが、 この交換は大したことはない。 両者ともこのような攻撃に出ているときはしばしば、 ピースの質よりも量が大事なのだ。 私はモヴセシアンがこのことに気付かないのに驚いた…」

彼は計算も早くて独創的だが…しょせんカルチャーが違う、 とか、文化が違う、なんて言うのは、差別的と言うか、階級的と言うか、 あんまり良い気持ちはしない。 君とは育ちが違うよ、と言っているのだから、必殺技ではある。 そんなカルチャーを極東の地で味わおうとしている、 と言うことは、一種不可能への挑戦と言うか、まあ凄く贅沢なことなのだ。 チェスの話だけをしているのではないよ。

昼食はアーリオオーリオとオムレツ。 午後は年末のお買い物に出かける。 妹へのクリスマスプレゼントとして、 「ほぼ日手帳」を買った。 帰りに近所のワイン屋で注文していたものを受け取って、帰宅。 夕食には王将餃子を焼く。

さて今年ももう後二週間か。早いですねえ。

Saturday, December 15, 2007

価値

少し寝坊して、9 時起床。 休日。 昼食はインドカレー屋さんで、チキンカレー。 一緒に「マハラジャ」を一本。冬場は特に、昼間に飲むビールが美味しい。 午後も特に何もせず。読書とか、昼寝とか。 夕食はラーメンを作った。 珈琲ともらいもののカステラ。

「…。問題なのは、いや問題というか、興味深いのは、 以前は誰もこういうワインを必要としていなかったということだ。 ぼくが小さかったころ、ぼくの田舎ではこういうワインが世の中に 存在することさえ誰も知らなかった。 もちろん日本全体が貧しくて、外貨もなかったから、 こういうワインを輸入できなかったわけだけど、 必要としなかったんだ。 気の合った人たちと一緒に飲めるんだったら、 別にこういうすごいワインは要らない。 防腐剤の入った日本酒でも、味のない焼酎でも充分に楽しめる。 そういった社会の残骸はまだ居酒屋などに残っているけど、 そういうものもいずれ消えていくだろう。 一九七0年代のどこかの時点で、何かがこの社会から消えたんだ。 それは国民全体が共有できる悲しみだと言う人もいるが、 それが何なのかはそれほど大きな問題じゃない。 大切なのは、このワインと同じくらい価値のあるものをこの社会が示していないし、 示そうとしていないということだ。…」

「披露宴会場にて」より(「空港にて」(村上龍/文春文庫)所収)

Friday, December 14, 2007

蘭と美食と探偵と

8 時起床。珈琲。 朝から翻訳仕事にばりばりと励む。 合間の昼食はカルボナーラと、ポテトサラダ。 最後の未訳部分だった「練習問題解答」の初稿を完成させて、 共訳者にメイルで送る。 この仕事についてはここまでが年内の予定だったが、 これから年末まで比較的に暇があるので、 できるだけ全体の推敲も進めるつもり。 次に取りかかる仕事は某数理物理系の月刊誌の記事の執筆と、 学科の専門科目の時間割作成。 両方とも締切は来月の中旬なので無理をする必要はないが、 今月中に目鼻をつけておきたい。

夕食は西方に少し遠出して、瀬戸内の魚を食べに行く。 車中の読書は「料理長が多すぎる」(R.スタウト/平井イサク訳/ハヤカワミステリ文庫)。 読了。なかなか面白かった。 美食家の探偵、って誰でも思いつきそうな設定だけど、 ネロ・ウルフの後にほとんど目立つキャラクタがいないのは、 やはりウルフが強烈すぎたのだろうか。 しかし、今読み返してみると、印象深いのはウルフよりも、 助手のアーチーのように思う。 少なくともホームズとワトソンと言う伝統的コンビネーションよりも、 鋭いところもあるが概ね我侭で好き勝手にふるまう変人のご主人様と、 その賢明で有能な従僕、と言う別の伝統的ステレオタイプに近いと思う。 それはともかく、ちょっと前から予定していた忘年会その一として、 古い友人である M さんと年寄りらしく昔話モードで、瀬戸内の魚を味わう。 特に鯵が美味しかったような。 交通と技術の進んだ今や、 魚の鮮度は京都でも同じようなものだろうが、 港がすぐそこだと思う気持ちの問題だろうか。 出されるものを次々食べていたら、あっと言う間に一通りが終わってしまい、 予定以上に早く終了。かなり早い時間にお開きになって帰る。

Thursday, December 13, 2007

フォークと「銀の塔」

9 時起床。昨夜少し遅かったので寝坊。 翻訳の仕事をして出勤。 早めの昼食を生協食堂にて。 12 時半から卒研ゼミF。 ブラウン運動に関するいろいろな期待値の計算。 続いて、14:10 から卒研ゼミS。待ち行列。 続いて、15:50 から「プログラミング演習」。 その合間に、新聞社の取材のメイルでの対応とか、 事務へ提出書類の作成に提出とか、あれこれ。 18 時過ぎに、撤収。

夕食は、「華やかな食物誌」(澁澤龍彦/河出文庫)を持って、 近所のバーに行く。 春菊と海老のキッシュ、羊のソテー。 春菊の苦みとチーズが良くあって美味しかった。 羊は焼いているときの香りが食欲をそそるので、好きな食材だ。 シェフによると鞍の下あたりの腰肉で、 特に柔らかで美味しい部位だとのことである。 今日は流石に年末モードなのか忙しそうだったので、 セットを食べたらすぐに帰る。

「華やかな食物誌」によれば、 フランスで初めてフォークを導入したのはかの、 「ラ・トゥール・ダルジャン」だと言う説があるそうだ。 アンリ三世の宮廷貴族らが糊のきいた襞襟の衣服を着たまま 料理を口に運べるようにと、店主が柄の長いフォークを作らせたのだとか。 ちなみにそのころのトゥール・ダルジャンの名物料理は、 二十日鼠のパイや、蛇と海豚と白鳥のミックスパイなどだったそうで、 ぞっとしない。いや、ひょっとすると二十日鼠は美味しいかも知れない、 と思わないでもない。

明日の夜は会食の約束があるので、 更新は遅くなるか、またはキャンセルします。

Wednesday, December 12, 2007

Too many cooks spoil the broth

8 時起床。珈琲、翻訳、出勤。 学生食堂で早めの昼食。 十五穀米のトムヤム・スープライス、 きのことささみのマリネ。 研究室で少し雑用をして、 14 時から出張中の先生の代講。 実際はテストの実施だったので、試験監督。 暇なので自分も試験問題を解いていた。 でも授業に出ていないので、何を仮定してよいのか分からず、 なかなか難しかった。 例えば、ある性質を持つ集合の外に点を取ると、 その集合の中にその点からの距離が最も短くなる点があることを証明せよ、 と言うような問題があった。 コンパクト集合上の連続関数が最小値を持つことを使って良いのだろうか。 さすがにそれでは簡単すぎるので、 その集合や空間の特別な性質を使って示すのだろうか。 それとも、距離関数の連続性を示すことが題意なのだろうか。 それとも、 その外点を中心とする十分大きな球との共通部分を取ることで コンパクト集合上で考えれば十分だ、と気付いてほしい、と言う問題なのだろうか。 悩んでいる内に時間になって終了。 続いて、16 時から学科会議。一時間半ほどであっさり終了。 少し雑用をしてから帰る。 車中の読書は「料理長が多すぎる」 (R.スタウト/平井イサク訳/ハヤカワミステリ文庫)。 帰宅は 19 時半くらい。 リーゾ・パルマを作って夕食。ルイ・ジャドの白。 食後にチョコレートと珈琲。

レックス・スタウトってこんなに面白かったけ、と思いながら再読。 古典ミステリはほとんど中学生か、せいぜい高校生までに読んだのだが、 最近、有名作を読み返しては、 やはり大人向けの暇潰しだなと思う。 ところで、「料理長が多すぎる」の原書には、 登場する料理のレシピが巻末についているらしいのだが、翻訳にはない。 時々、訳書を読んでいて不愉快になるのは、 「原書には~という章(or 付録 or 図表 or 文献表 or ...) があったが、日本の読者には不要だろうと判断して割愛した」 などと書いてあるときだ。 そんなことを勝手に判断しないで欲しい、と思う。 おそらく本が厚くなると採算があわなかったりするのだろうが、 訳するのならそのまま全部訳してほしいものだ。

Tuesday, December 11, 2007

十五穀米

8 時起床。珈琲を飲んで、いつものように一時間ほど翻訳の仕事をしてから出勤。 学生食堂で早めの昼食。 麻婆豆腐と十五穀米のセット、えだ豆ひじき煮、味噌汁。 十五穀の十五種類って一体何なのだろう。 五穀米くらいなら想像もつくのだが。 13 時から修士ゼミ。 続いて、15:50 から卒研I。 負の超幾何分布についてなど。 今日は卒研ゼミを途中で切り上げて、 16 時半から教授会。多分、今年最後。 軽く 3 時間強ほど続いて、終わったのは 19:45 くらい。 夕食も学生食堂。キャベツ鶏ミンチカツ、きのことささみのマリネ、 味噌汁と御飯(S)。 そして今、帰宅。21 時半くらい。 さて、お風呂でも入ろ… 明日は学科会議だが、今年最後かなあ。そうだと良いけど。

Monday, December 10, 2007

幻のバー ("Fly me to the moon")

8 時起床。珈琲を飲んで、 いつものように一時間だけ翻訳の仕事をして、 衣笠キャンパスに出講。 一昨日も衣笠講義だったので変な感じ。 学生食堂で早めの昼食。 日替わり(ポテトコロッケ、鶏てん、マカロニサラダ、キャベツ千切り)、 紫蘇ひじき御飯(M)、味噌汁。 法学部の講師控え室で予習などして、 13 時から「数理の世界」。二次方程式と複素数など。 1 コマ分の空き時間は「ゆんげ」に行って、 200 円のカプチーノを飲みながら、数学を考える。 16:20 から今度は産業社会学部で「情報の数理」の講義。 エントロピィの定義と簡単な具体例での計算。 17:50 終了。 バスで帰る。帰宅は 18 時半くらい。 夕食は、しめじとベーコンのスパゲティを作った。 夜もまた翻訳の仕事。

「特権的情人美食」にも再録されていたのだが、 村上龍の連作短編で私の好きなものに、 幻のジャズ・バーの話がある。 何かの拍子に、とてつもなく素晴しいバーに行くのだが、 あとでどう探しても見つからない。 短いカウンターの他は、 その後ろに二つか、せいぜい三つのテーブルだけがある、 ジャズクラブのウェイティングらしきバーで、 奥のホールでは女性ヴォーカルがジャズのスタンダードナンバーを歌っているようだ。 バーテンダも照明もインテリアも何もかも控え目で、 ひっそりと静かで、遠くから「私を月まで連れてって」の歌声が聞こえ、 酒はとても素晴しい。カンパリですら北イタリアのリゾートで飲むような味がする。 主人公はその幻のバーを探して、 そこに行ったことがあると言う人物を尋ね歩くが、 ある種の人間がある種の状態のときにそのバーの扉が現れるらしい、 と言うような神秘的な感触が得られるだけ…、と言う話である。 この連作短編の最終回で、そのバーの「正体」らしきものが分かる。 それがちょっと残念なところだ。謎のままの方がいいこともある。

ちなみに私はジャズを全く知らない。 「私を月まで連れてって」なんて大人になるまで、 竹宮恵子の漫画の方がオリジナルだと思っていた。

Sunday, December 09, 2007

情人美食

8 時起床。 でも、寝床でしばらく読書していたので、 本当に起床したのは 10 時近く。 珈琲を飲みながら、翻訳の仕事を一時間ばかりして、 王将の餃子を焼いて早めの昼食を取り、 久しぶりに日本橋のチェスクラブに行く。 車中の読書は「特権的情人美食」(村上龍/KKベストセラーズ)。 うっかりタイトルで買ってしまったら、 今まで読んだことのある短編ばかりのアンソロジィでがっかり。 気付かずに買う方も悪いが、 ほとんどが「村上龍料理小説集」(講談社文庫)からの再録というのは、 どういうものか。

今日は盛況。午後からの二局に参加。 ずっとレイティングが上の強豪に白番で勝ち、 この前、名古屋で目から火花が出るようなブランダーで負けた女の子に黒番で勝って、 雪辱を果たす。今日は絶好調。 特に一局目、 序盤に敵のブランダーを突いてクイーンを取ったのは単に運が良かっただけだが、 最後までちゃんと勝ち切ったのが良かった。 クイーンを 1 ピースと交換で取り上げても、 敵にはビショップとルークが 2 つずつ全部残っていたので油断はできない。 これなら強い人の手にかかれば、どんな事件でも起こりうる。 将棋を知っている人向けに言えば、 角と飛車を二枚ずつ持っているのと同じだ。 実際かなり危なかったし、駒の能力を一杯に使えばここまで抵抗できるのか、 と逆に勉強になった。

19 時くらいに帰宅して、夕食はまた鍋。 白菜を玉で買うもので、鍋続きになってしまう。 夜はまた翻訳の仕事をする。

Saturday, December 08, 2007

閑散

8 時起床。目覚しの珈琲。 洗濯機を仕掛けて、翻訳のお仕事。 洗濯物を干してから、衣笠へ出勤。今日は月曜日の振り替え日なので。 キャンパスは閑散としている。 学生食堂で早めの昼食。 鶏の粗塩焼き、高野豆腐とひじきとじゃこの和え物、 味噌汁、御飯(S)。 法学部の講師控え室で予習のおさらいをして、 13 時から「数理の世界」。複素数の定義と二次方程式の復習など。 空いた一コマ分の休憩は、 自動販売機で珈琲を買って「ゆんげ」の入っている建物のソファで、 ヘッジファンドのストラテジーについてお勉強の読書。 次は産業社会学部に行って 16:20 から「情報の数理」。 今回は土曜日で申しわけないから、 期末レポートや評価に関係しない講義をすると言っていたら、 講義に来たのは数名だけだった。 数が減るとは思っていたが、そこまでとは。 マスプロ用の大教室で、わずか数名を相手に対数の復習。 18 時少し前に終了。バスで帰る。

夕食はまたしても鍋。白菜、豆腐、茸類、豚肉など。 クンフー娘をお伴に食す。鍋の後は雑炊。

Friday, December 07, 2007

クンフー娘

8 時起床。珈琲を飲みながら一時間ほど翻訳の仕事。 その間にも、9 時になったとたんに事務から次々メイルが入り、 対応をあれこれ。10 時半くらいに家を出る。 キャンパスに到着して、生協食堂で早めの昼食。 鯵フライ、だし巻き、豚汁、十五穀米御飯(S)。 午後はあれこれ事務仕事。最近は金曜日が事務予備日と化している。 途中で知らない学生が質問に来た。 フィボナッチ数列についての簡単な質問。 最近、質問に来る学生が多い。 私の研究室のあるフロアは他のほとんどの数学の先生がいるフロアとは違うせいか、 私がほとんど研究室にいないせいか、 あるいは気難しいと思われているのか、 ちょっと前までは質問に来る学生がほとんどいなかったのだが。 そう言えば、関係があるのかないのか、 最近、私の研究室にも言わゆる生保レディが勧誘に来るようになった。 これもちょっと前までは、噂に聞くだけで、 一切見かけたことすらなかったのだが。 午後も早い時間に音を上げてしまった頃に丁度、 研究室のカーペットの大掛かりな掃除をする係の人がやってきたので、 これ幸いと帰路につく。

夕方、帰宅。近所のワイン屋で買い物。 帰り道の「王将」で生餃子の安売りをしていたので購入。 夕食は餃子鍋にしてみた。 お供はワシントンのリースリング "Kungfu Girl" を一杯だけ。 餃子鍋にクンフー娘、なかなかいいアイデアだ。 ちなみに私はリースリングが一番好きな品種。 夜は期末レポートの課題を作成し、 さらに翻訳の仕事。 世間では明日は土曜日らしいが、 うちの大学は月曜日だと言い張るので衣笠出講。

"Problem Paradise" の最新号が届いた。 うーん、今号で解答発表されている号については、 サッパリ解けていなかったようだ。 今号からは知り合いの S さんがヘルプメイトの担当者になったので、 最初くらいは全部解いて提出したいものだ。

「猫は三次元に住む」© HARA, Keisuke 2007.

Thursday, December 06, 2007

鍋の癒し

8 時起床。珈琲。翻訳の仕事を少しだけして、出勤。 ざっとすぐに片付く事務仕事をして、早めの昼食を学生食堂で。 タイカレー風の御飯ものと、海藻サラダ、卵スープ。 12 時から私の研究室で某先生と面談。 時間割がらみで、大学院の教育問題などを話しあう。 続いて 12 時半から卒研ゼミF。ブラウン運動の定義など。 続いて 14:10 から卒研ゼミS。出生死亡連鎖についてなど。 続いて 15:50 から「プログラミング演習」。 17:20 終了して研究室に戻り、 またあれこれ時間割問題の対応。 ちょっと遅い帰宅。でも事務もまだ働いているようだ。 足を向けては寝られないなあ。

料理は癒される。 小鍋の中に綺麗に切った具材を並べているだけで癒されるし、 小さなタッパウェアに余ったしめじをきっちり並べているだけでも癒される。 しかも出来あがったものが(時には)美味しいし、 どこをとってもいいことばかりだ。 鍋の後の雑炊が炊きあがったとき、 いい具合に卵の黄身がとろけたところに、 豆腐やくずきりのかけらが散っているのを見るとなお癒される。

Wednesday, December 05, 2007

超計算屋、ワイン業界に挑む

8 時起床。資源ゴミ出し。珈琲。 小一時間ほど翻訳の仕事をして、出勤。 午前から事務仕事。 ポッカリあいた心の奥に詰め込むメシを食べさせるそんな学生食堂に行って、昼食。 すぐに帰ってきて事務に励む。 あちこちにお願いやお伺いのメイルを書き、 あちこちの研究室に行って経験者に教えを乞う。 早くも 17 時くらいに音を上げて帰る。 夕食は鍋用の残りの野菜を使って、煮込みラーメンを作った。 夜も翻訳仕事。

今日の車中の読書。 「その数学が戦略を決める」(I.エアーズ/山形浩生訳/文藝春秋)。 原題は "Super Crunchers"。 普通、クランチは「噛み砕く」と言うような意味だが、 科学分野では「ガリガリと(コンピュータで)数値計算をする」ことを、 "number crunch" と言う。 "Super crunch" とはそれの激しいもののことで、 巨大データベースでの統計処理を指すようだ。 この本の第一章は、ワインの品質をはじき出す方程式を導いた男の話。 最初にこの方程式が発表されたときには、 そんな計算でワインの繊細な味わいが予測できるはずがない、 とワイン業界で散々に叩かれたそうだ。 しかし、実際のところその方程式が意味しているのは、 例えば、偉大なボルドーワインの将来の価値(と言うより価格)は、 葡萄の育成期の気温と冬の降雨量の二つの因子だけでリーズナブルな予測ができる、 と言うことに過ぎない。 実際、ワインの専門家ならこれを否定しないと思う。 やはり自分たちの仕事をシロートに奪われてなるものか、 と良く理解しないままに攻撃してしまったのだろうか。

この本のポイントも、 数学的には初歩の統計手法に過ぎなくても、 今やそれをテラバイト級の巨大データベースがバックアップしており、 専門家の勘や経験を遥かに凌ぐ精度で予測計算できてしまうのだ、 と言うことに我々が感じる居心地の悪さにあるように思う。 例えば、 企業が消費者の行動や欲望をどこまでも計算しつくして、 利益を最大化していることは不気味だし、 「計算」の持つパワーへの素朴な恐怖感もある。 しかし、一方では "Super crunch" によって、 「専門家」はより重要な仕事ができるようになるかも知れない。 例えばワインの専門家は、 このワインの20年後の価値はどうかと言うことには、 「アッシェンフェルター方程式によれば、 現在の貨幣価値で 250万円プラスマイナス35万円の範囲に 確率 95 パーセントで収まるそうです」 とでも答えておけばいい。 実際、瓶詰めされて数年の自称グラン・ヴァンが 20 年後にどうなるかなんて、 誰にも分からないのだから。 それよりも、今飲んでいるこのワインがどのような味わいを持ち、 どんな料理と合い、どんなシチュエーションにふさわしく、 どんな物語と歴史を持ち、作り手はどんな人物で…、 と言うことに集中できた方が、もっと幸せに違いない。

Tuesday, December 04, 2007

鳩と豆

8 時起床。ゴミ出しをしてから、すぐに支度をして京大へ。 確率的問題と非線形偏微分方程式の研究会に参加。 二日間で 8 つの講演があったのだが、 その内、確率論の人が自分を含めて 4 人、 つまり半分を占めていた。 基本的に非線形偏微分方程式の研究会なのに、 (数学全体から見れば近いとは言え) 異なる分野からこんなに講演者を呼んで話を聴くとは、 なかなか出来ることではない。立派なことだ。 実際、小さいながら、非常に面白い研究会だった。 17 時半くらいに終了。 さて、今日こそは祇園へ…と思いながら、 それでもメイルをチェックすると、 また委員の仕事があれこれ。 やむなく帰宅して、 怒涛の勢いで関連各所にメイル書きをして、 10 通くらいを処理する。 私の Gmail には GTD アドオンが入っていて、 メイルを読み始めると 2 分間のカウントダウンが始まるようになっている。 その間に、返事を書くか、さもなければ、 「する」「まつ」「資料」 のどれかのラベルをつけてアーカイブするか、のどれにするかを決断する。 およそ 20 分で解決して、 近所のバーに電話をして予約を入れ、脱兎のごとく家を出る。

今夜のバーは珍しく、ひっそりとしていた。 客は私一人で、カウンタの真ん中の席で占領。 涙拭くハンカチと、壊れた心を優しく包む椅子を下さい、 と舌の先まで出かかったが、 そこは社会人なので、「シャンパン大盛りで」 と言うにとどめた。 シェフが「野鳩が入っていますので、是非」と勧めるので野鳩のソテーと、 「鳩にあわせて、豆のキッシュはどうですか」と言うので、 じゃあその二つでセットにする。 鳩と言えば豆だね、と言うと、「すみません、 このジョークは使い回しです」とのことだった。 一時間ほど、ゆっくりと食事して帰宅。 そして、この夜も働いているらしい事務からの返信を読んで、 またメイル仕事。今日の問題はほとんど解決した。 事務の方々も良く仕事するなあ…足を向けて眠れないほどだ。

Monday, December 03, 2007

鍋にシャンパン

8 時起床。 午前中は講演の準備をして、 壬生菜入りの湯豆腐で昼食をとり、 すぐに京大での確率論と非線形偏微分方程式の研究会に向かう。 私が最初の講演者。まあ無難に出来た。 あと二つの講演を聴いて、17時半くらいに終了。 一仕事終わったし、 河原町で時間をつぶして、 久しぶりに祇園のバーにでも行くかな、と思っていたのだが、 携帯電話でうっかりメイルをチェックしてしまい、 すぐに家に帰ってお仕事することに。 関係各所にメイル。 夕食は白菜の鍋。白菜の美味しい季節だ。 そして、講演も終わったことだし、 と思ってシャンパンを開ける。 おお、贅沢にも鍋にシャンパンだ。 生まれて初めてかも。そして、ワインの値段も鰻上りのご時世、 これが最後かも。 明日も朝から研究会の二日目に参加の予定。

先先週からの疲れと風邪のせいか肌が荒れ、 にきびまで出来て、大人としてはちょっと恥ずかしい。

Sunday, December 02, 2007

趣味の問題

9 時起床。寝室の前でクロが激しく鳴いている。 最近、食欲が増進しているようだ。冬季用に脂肪を蓄えているのだろうか。 目覚ましの珈琲。 午前中は講演の準備をする。 洗濯機で洗濯しながら、OHP シート書き。 私の講演スタイルは OHP シートに手書き派だ。 最近は数学の講演でも、 コンピュータで作成して直接投影する人が増えてきたので、 既に少数派になったかも知れない。 自分自身が聴く立場のときは、 コンピュータのフォントだと何故か数学が頭に入ってこないので、 自分が講演するときにも手書きのシートを作るようにしている。 しかしいずれ、 「すみません、コンピュータ用のプロジェクタしかありません」、 とオーガナイザに断られる日がやってくるかも知れない。

昼食は豚肉の鍋、その後は雑炊を作った。 食後、洗濯ものを干してから、30分ほど昼寝して(まだ寝るか)、 午後はまた OHP シート書き。 いちおうシートは出来た。 これで明日の朝におさらいしながら台詞をつけよう。 泥縄だなあ。 夕食は鮭をソテーして適当にしめじのホワイトソース、 つけあわせにフジッリを茹でた。 白ワインが切れているところにシャンパンが丁度一本あるので、 ついお供に飲みたくなるのだが、 理由もなしにそんな贅沢をしてはならん、と我慢。 夜は、「趣味の問題」(P.バラン/高橋利絵子訳/早川書房)を読む。

髪型を変えただけで国際ニュースになる政治家は、 ティモシェンコくらいですね… ひょっとしたら政治家に限らなくても、彼女だけかも (公式サイト, ウィキペディア(ja))。 なんでも彼女は日本の一部オタクには大人気だそうだ。 三つ編みに反応しているのだろうか?

Saturday, December 01, 2007

隣りの会話

9 時起床。寝床でごろごろしていたら、本当の起床は 10 時になった。 クロに御飯を与えて、自分には珈琲。 ああ、もう 12 月か。早いものであるなあ… 午前中はちょっとだけ翻訳作業。ルベーグ積分の本の練習問題解答のところ。 昼食は冷や御飯を使って、雑炊を作る。 鍋用の茸類があまっていたので、茸の雑炊。 午後は明後日の講演の準備。今日になってようやく本格的に準備を始めるとは。 予定では一ヶ月前くらいからするはずだったのだが。 夕食は鮭のクリームソースのスパゲティ。 食後もまた、講演の準備など。

一昨日、学生食堂で女子学生たちの会話に笑わせてもらった、 と言う話を書いたが、 たまたま隣りあわせた他人たちの会話が可笑しい、 と言う経験が私はわりと多い。 耳が良いので、つい聞こえてしまうのかも知れない。 山陰線の中で「モテ期は人生 3 回」理論で説教する女の子とか、 京都駅にいた、 インスタントコーヒーよりドリップした珈琲が美味しいと言う友達に、 「あんたセレブやなぁ」、と溜息をつく女子高生とか。

これはかなり前の話だが、 私は渋谷の Bunkamura の奥の方の怪しげな地域にある店で一人食事していた。 しばらくして隣りのテーブルに、 黒人の青年と渋谷のセンター街に沢山いるタイプの女の子二人、 と言ういかにもディープ渋谷らしいトリオがやって来た。 ビールジョッキで乾杯してちょっと落ち着いたころ黒人青年が、 大阪に興味があるのだがまだ行ったことがない、 一度旅行してみたい、と変な日本語で話し始めた。 それに対し、女の子の一方が、自分の実家が大阪だから連れていってあげる、 と言い出し、 実家にいきなりこのガイジンを連れていったらどうなるか、 と言う話がどんどん展開し始めた。 日本語がおかしな具合に上手い黒人青年、 べたべたの関西弁をしゃべる渋谷ギャルと、 ちょっと英語が話せる江戸っ子ギャルと言う絶妙の組み合わせで、 全員がボケかつツッコミ、かつ人の話をあまり聞かないまま暴走していく。 しかも、おそらく放送禁止と思われる発言のオンパレードだ。 信じられないほど前衛的で暴力的な可笑しさだった。

この経験を知り合いにすると、 それは漫才グランプリか何かの練習だったのではないか、 と言うのだが、マスコミに出せるネタとはとても思えない。 他人が耳をそば立てているようだと、 やはり笑わせてやろうというサーヴィス精神が働くもので、 それが過激にエスカレートしたのかも知れない。