Friday, June 30, 2006

ラスカーの謎2

午前中は講義の予習と、期末試験の作問。 昼食は納豆パスタ。 午後は京大の確率論関西セミナへ。 外に出ると、お湯の中を歩いているようなものすごい湿度。 今にも雨になりそうな曇りで、気温も高い。 セミナは O 大の H さんによる、 ランダム・ヤング図形の極限についてのサーベイ的な話。 直接の興味はないが、最近の動向が分かって良かった。 セミナのあと、買い出しなどをして帰宅。 自宅で夕食を作る。焼き茄子、鶏肝の生姜煮、素麺など。 また素麺だ。暑いと、どうしても御飯を炊く気がしない。

"Why Lasker Matters" (A.Soltis / Batsford Chess) が典型例として挙げているのが、次の盤面 (Ilyn-Genevsky-Lasker, Moscow 1925., "Why Lasker.." pp.273, Game87)。 白が 13. Nce2 (この本では "?!")と引いてクイーン交換を誘ったところ。 ここから黒のラスカーは長考の末に、何と 13. ... Qxa2。 この手が指された瞬間には、 当時の観客はこれをひどいポカだと考えたようだし、 対局相手もそう思ったらしい。 勿論、クイーンはトラップされて取られてしまう (14. Ra1 Qxb2 15. Rfb1 Qxb1+ 16. Rxb1)。 つまりラスカーは Q を B+R+P と交換したことになる。 この交換レート自体はそう悪くはないものの、 特に攻撃の狙いがあるでなし、 イニシアチヴが取れるわけでもない。 そもそも、13. ... Qxd2 としても黒は全く問題ない。 とにかく、ラスカーは勝った。 この手は、老練な勝負師ラスカーの「心理学的作戦」とされているようだ。 例えば、カスパロフの「我が偉大なる先人たち」 の第一巻 pp.221 の Game72 がこの局の分析だが、 黒の 13 手目に "!!" をつけているものの(白の 13 手目には "!")、 Vainstein による心理戦的な見解の引用をしているのみである (「ここでおそらくラスカーの心には次の考えが浮かんだのだろう: 昨日 Ilyn-Genevsky は同じくシシリアン定跡でキャパブランカにクイーンを捨てて勝った。 今度はこっちが同じことをしてやろう」)。 なお、カスパロフのラスカー評はおおむねボトヴィニクに従っている。 "Why Lasker.." の著者 Soltis は、 このようにラスカーの着手を安易に "psychology" に帰する傾向の主犯として、 レティの名前を挙げているが、 カスパロフ本までそうなのだから、この見方は支配的なのだろう。 しかし、Soltis が言うには、この手は現代から見れば全く妥当であり、 グランドマスター級なら数分で、 コンピュータなら瞬間に見つけるタイプの好手だろう、 実際、この一手は盤面の最善手だ、と。 私自身、シュタイニッツ、ラスカーと言った、 ロマン派から現代への流れをあまりに紋切り型に考えていたように思う。 やはり偉大な思想家は常に、一筋縄で捉えられる存在ではない。

Thursday, June 29, 2006

ラスカーの謎

今日の最高気温は 32 度らしい。本格的に夏だ。 行きのバスの中で、 去年私の卒研生だった O 大の院生 T 君に会った。 定期的に R 大に来て、数ファ研で学生の相手をしてくれているようだ。 生協食堂で昼食をとって、 12 時半から「情報理論」。 システム・エントロピィについて。 一般論の後、二進対称経路の入出力エントロピィの大小を調べるために、 関数の凸性の復習をしたところまで。 夕食は簡単なサラダと、また素麺。 妹からの連絡では、この週末に素麺を送ってくれるそうだ。

amazon で買った本の一つは、 "Why Lasker Matters"(by A. Soltis/ Batsford Chess). ラスカーの棋譜集で、100 ゲームが分析されている。 タイトルが面白いので買ってしまった。 (前にも書いたように 、ラスカーは数学者でもあったので、 特に私の興味をひくと言うこともある。) ラスカーは 27 年間にも渡って世界チャンピオンの座を守り、 ほとんど神秘的な強さを誇った。 しかし、何故そんなに強かったのか良く分からない。 様々な意見はあるものの、 ラスカーは盤面の真実を探すのではなく、 あくまで人間を相手に闘う勝負の天才だった、 と言うことでは一致しているようだ。 つまり、(Euwe の言葉らしいが) 我々はラスカーに驚くことができるだけで、 真似することはできないし、学べることすらあまりない。 フィッシャーはラスカーを「コーヒーハウス・プレイヤー」(縁台将棋?) と切り捨てているし、 ラーセンは「私はラスカーを尊敬していた…棋譜を調べるまでは」 とけなしてもいるように、棋譜を全く評価しない人も少なからずいる。 しかし考えてみれば、シュタイニッツのあと、 19世紀末から20世紀初頭の四分の一世紀を王座にあり続けたと言うことは、 現代チェスの成立を考える上で深い意味があるはずだ。 通俗的なラスカー評はいずれ完全に覆されるかも知れない。

Wednesday, June 28, 2006

ワンクリック

生協食堂で昼食のあと、12 時半から卒研ゼミその1。 Williams で大数の強法則、 フビニの定理など。 夕方から少し調べものをして、 再び生協食堂で夕食のあと、 18 時から院生の自主ゼミに参加。 21 時に終了。今、オフィスより更新。

5 月から 6 月にかけてから amazon で大量に本を買ってしまい、 ちょっと反省中。 チェス関連を始め、流し読みしてもしようがない類の本ばかりだから、 どう考えても全部読む時間があるとは思えない。 しばらく節制しよう。 amazon の「ワンクリック」は本当に悪魔の発明の一つだ。 悪いことは言わないから、このオプションは外しておいた方がいい。

Tuesday, June 27, 2006

フェードル

今日は論文の改訂作業をするぞ、 と思っていたのだが、取りかかったのはやはり午後遅くなってから。 でも始めてみたら次々に解決、結構すぐに出来てしまった。 あとは、直した箇所のリストを作って、 改訂版の最終ファイルを作ることなど、 単純作業だから今週後半の合間に出来るだろう。 何でも始めるまでが難しい。 射撃しつつ前進

昼食は一皿の盛り蕎麦。 夕方になって、買い出しに出かける。 近所のワイン屋でアルザスのワインを二本、見繕ってもらう。 夕食はアルザスワインで、ジャーマンポテトと冷蔵庫の残り物パスタなど。 昼間ずいぶん仕事をしたから(って正味二時間くらいのような)、 と夜はのんびり読書。ラシーヌの「フェードル」(内藤濯訳/岩波文庫)。 昨晩、 寝る前に六畳あまりの書庫を歩いていたら何となく目にとまり、 就眠儀式に第一幕だけ読んだので。

Monday, June 26, 2006

ダンス

雨のおかげで涼しくて、よく眠れる。 ちょっとよく眠れ過ぎのような気もする。 午前は少しお仕事をしてから、 生協食堂で一杯のかけ蕎麦。 12 時半から卒研ゼミその2。 Lp 空間での射影の残り、 Lp 空間上の線形汎関数、Lp 空間の双対空間など。 続いて 14 時から「数理計画法」。 具体的な例で、二期間二項モデルを使ってコールオプションの価格を計算。 少し、ポートフォリオ選択問題に入った。 続いて 15 時 50 分から「情報処理演習」。 ニュートン法の実装など。

家に帰って、足元で踊る猫に御飯をやる。 私はそれを眺めている、 夏の、夜は、既に、暗く、蒼く… (昨日に続き、昭和の名曲シリーズ)。 夕食は自宅で。 じゃが芋のサラダ、後、素麺。どうも素麺に頼りがちの昨今。 と思っているところに、つい最近、妹からメイルで、 実家で素麺を注文することにしたから、 欲しければついでに頼んでやると連絡があった。 一体、どれだけ買うつもりなのだろう。

Sunday, June 25, 2006

雨音

今日も雨。本格的に梅雨。 傘をさすのが面倒な以外は、雨の日は嫌いじゃない。 昼食はレトルトのタイ式グリーンカレー。 意外に美味しかった。最近のレトルト食品は侮れないな… 夕食は御飯と一汁一菜の粗食。 食後、お風呂に入ってから、少しチェロを弾く。 雨の日に楽器を弾くのは何故か、気分がいい。 雨音はショパンの調べ…と、ふと思って年齢を感じたり。 80 年代は既に、懐かしのメロディなんだろうなあ。

今日は論文校正の仕事をしようと思っていたのだが、 よっこらしょ、とようやく手をつけたのは夕方だった。 正直に言うと今日の朝からではなく、 二週間ほど前から常にそうしようと思っていて、 ついに手をつけたのが今日。自分の怠惰さに愕然とする。 取り敢えず、レフェリ・リポートに目を通して、 単に英語の文章表現を直せばいい程度の箇所と、 数学や文案を考えなければいけないところを振り分け整理。 ついでに前者の部分は LaTeX ファイル上で直しておくことにした。 そこは始めるとすぐに出来る。 実際、15 分もかからなかった。単純作業は得意だ。 難しいところは、今週中くらいを目処に作業しよう。

Saturday, June 24, 2006

世界の終わり

先週の週末はトーナメントだったので、 久しぶりの完全休日。ほとんど何もしなかった。 昼寝をして、家事をして、少しだけ本を読んだくらい。 読書は J.G.バラードの「コカイン・ナイト」を読了。 かつてバラードは世界の終わりばかりを書く変な SF 作家だった。 風がどんどん強くなるとか、 雨が止まらなくなるとか、どんどん気温が上がるとか、 とにかくあの手この手で人類を滅亡させ続けていた。 この「コカイン・ナイト」もミステリ仕立てではあるが、 やはりある意味での世界の終わりを描いている。 私が一番好きだった作品は、 何故かあらゆる物質が徐々に結晶化し始めて、 宇宙全体が結晶になってしまうと言うものだ。 タイトルはそのまま「結晶世界」だったかな。 そう言えば、ヴォネガットの小説にも、 通常よりも融点が高い水の結晶(つまり氷)が偶然できてしまい それが結晶の種になることで、 地球上の(そしていずれは全宇宙の)水が全て凍ってしまう、 と言う話があったっけ。

図は先週のトーナメントの私の勝局の中で、唯一のメイト図 (正確にはメイトの一手前)。 普通はメイトのかなり前にリザイン(投了)することが多い。 メイトまで指されるときのほとんどの場合は、 詰められる方も協力するのだと思う。 ところで、チェス好きならすぐに分かるように、 これはマーシャルアタックがヴァイオレントに決まった形だ。 ちなみに、家に帰ってから調べたら、 お互いの 16 手目まで(将棋の数え方で 32 手まで)は、 サイドラインとは言え "theory" だった。 マーシャルアタックはラインによっては、 白黒合わせて 60 手を越えるまで調べられていて、 "theoretical" な定跡として悪名高い。

Friday, June 23, 2006

SLE

午前中は講義の予習。 何とか少し貯金があるくらいまでは出来た。 昼食は一汁一菜の粗食。 午後もう少し予習をしてから、京大の関西確率論セミナに出席。 コーネル大の Lawler さんによる、話題の SLE (Schramm-Loewner Evolution)の話。 さすがに大盛況(と言っても、25人くらいだけど)。 確率レヴナー方程式(Stochastic Loewner Equation) の頭文字だと思っていたのだけれど、 話が大きくなってきて、 最初にアイデアを持ち来んだ Schramm の名前が冠されたようだ。 あちこちで SLE 流行の昨今、 全く知らないでは済まされないだろうと思っていたところだが、 大体どんなものなのか、おおよその感じだけでも掴めて良かった。

夕食には豚丼を作る。 食後からは明日も含めた休日モード。 お風呂に入ってから、 チェスの勉強とか。 1974 年のレニングラード、 Karpov-Spassky マッチ第九局の分析。 左の画像は、お風呂場のコンラッド君。

Thursday, June 22, 2006

鮎のわた

雨。生協食堂で早めの昼食をとって、12 時半から「情報理論」。 今日も学生アンケート。 このアンケートも数年前のいつの間にやら導入されて、 しかも毎年フォーマル度が増し、 今ではアンケート用紙を教員が見ないように集めて、 封筒に入れ、それを封じるところを学生に見せなさい、 と言うことになっている。公正さを保証するためだそうだ。 この十年間で、大学は猛烈な勢いで変化している。 少なくとも年年と世知辛くなっていくようだ。 そして勿論、このアンケートをどうしていくべきかを議論しては、 毎年改訂している委員会もある。 その委員会をどうしていくべきかを議論する委員会もあるに違いない。 「チャンスを与えよう。誰が、気付くだろう。 頭脳明晰な人たちよ。己を拘束している、形もなく、 目に見えることもなく、しかも存在さえしない呪縛の鎖を、 解きたまえ」(真賀田四季)。

今日の「情報理論」は情報経路の和と積を定義して、 さらに二進対称経路について後ろ向き確率などを具体的に計算。 研究室に戻って、情報処理演習のレポートを見る。 一応、50名 ほど全員にメイルで返事。 さらに、メイルベースのお仕事をもう一件。 続いて、数ファ研に行って、 レフェリ・リポートと投稿論文の原稿、 ついでに興味のある論文もプリントアウト (私は自分でプリンタを持っていないので)、 改稿作業の準備だけ整える。 さて、帰ろうかなと思ってバス停まで来るも、 どこまでも行列が続いているのを見て、 アクロスの図書室に逃げ込む。 とにかく、到達してしまった技術の前に、人の数が多すぎる。 これもまた、真賀田博士の言葉だったかな。 少し雑用しながら、人が減るのを待って帰る。

夕食は近所のバーにて。鮎のコンフィなど。 四季のものはいい。 ささくれた心が癒される。 鮎のわたの苦みを味わっていると、 嗚呼、自分は怒っているのかもしれぬ、と思った。 何にだろう、大学にか。それとも人間たちにか。 いや、きっと、自分自身の無能さにだろう。

Wednesday, June 21, 2006

全力投球

いよいよ夏か…夏は苦手だ。 生協食堂で昼食をとって、 12 時半から卒研ゼミその1。 卒研でも学生アンケートを取る。 「教員の熱意、ってどこにマークすればいいですか」 とか訊くので、 「最高、におっきくマークしといて。 三割くらいの力の流し打ちで生きてるように見られがちなんだけど、 本当は常に全力投球してるんだよー」 と答えておく。 学生が一人から三人くらいの卒研でアンケートとる意味ってあるのかな… Lp 空間の完備性、L2 空間の直交射影、 確率分布と密度の復習など。 続いて 16 時から学科会議。 今日は比較的あっさりと終わった。

夕食はまた素麺と豚しゃぶサラダ。 ちょっと暑くなると素麺に頼りがちだ。 麺つゆは自分で作っているけど。 最近は生協食堂と麺類で暮らしているような。 鮎のコンフィは明日まであるのかなあ。 食後は講義の予習。

Tuesday, June 20, 2006

イギリスのスパークリング

蒸し暑い。もう夏。少し寝坊。 火曜日は時に教授会が入ることがあるものの、 大抵は講義も会議もなく、 丸一日自分のペースで仕事ができる日なので有り難い。 でも、この前の土日をトーナメントで使ってしまったので、 今日は講義の予習一色。 論文の revise 作業も今月中には上げたいと思っているのだが、 なかなか時間を割り当てられない。 夕食は自宅で、素麺とだし巻き卵。

夕方から、近所のワイン屋さんにシャンパン二本を受け取りに行く。 正確に言うと、一本はシャンパーニュではなく、 イギリスのスパークリングワインだった。 ワインの産地としてイギリス、という発想はなかなか浮かばないが、 温暖化による気候の変化もあって、 より冷涼な気候のイギリスが注目されつつあるそうだ。 土壌もフランスの白亜質が続いていて、 シャンパーニュ地方の地続きにあたるのだとか。 そんなわけで、特にスパークリングワインの評価は高いらしい。

今日の晩酌はこの二本のどちらかを開けて、 トーナメントの成果を祝いつつ棋譜の整理でもしよう。

Monday, June 19, 2006

それがセオリー

さて、また一週間だ。 生協食堂で昼食をとって、 12 時半から卒研ゼミその2。 ハンナーの不等式の証明が何かおかしいと思って、 原論文を調べるようにさえ言っていたのだが、 あっさり解決。単なる勘違いだった。 Lp 空間の完備性の証明、Lp 空間での射影など。 続いて、講義を二つ。 今週は顧客満足度調査、もとい、学生アンケート週間。 講義中や演習中に時間をとってアンケートをとる。 「数理計画法」では、二期間二項モデルでオプション価格を計算した。 続いて、「情報処理演習」。 またアンケートを取ってから、 今日の演習内容を説明、演習をしてもらう。

チェスの文献を読んでいると、 "theory"(理論)と言う言葉の使い方が気になる。 どうやらチェスの世界では、 かなり深いところまでの枝葉が詳細に調べられている定跡、 特に鋭くタクティカルなラインを持つ定跡のことを "theoretical" (理論的)と呼び、その情報を "theory" (理論)と言うようだ。 そしてその反対語と言わないまでも、 対立する概念は "strategy", "strategical" (戦略、戦略的)らしい。 つまり、直接的な読みに頼れず、 一般論や抽象的なアイデアが中心になる局面や定跡を戦略的と言う。 これは普通の言葉使いでは、むしろ逆ではないか? 少なくとも科学の分野では、 チェスで言う "strategy" のことを "theory" と呼んでいるのでないだろうか。 そしてチェスで言う "theory" は単に "data" としか言わないのでは。

Sunday, June 18, 2006

シャンパンを二本

快速戦トーナメントの二日目。 午前第 5ラウンドの黒番は、ベテランに時間切れで負け。 続いて第 6 ラウンドも黒番、小学生みたいな男の子に時間切れで負け。 両方とも序盤、中盤と優勢だったのだが、やはりなかなか勝たせてくれない。 特にこの子が、1 ピース取られてから強かった。 さらに局後検討も強かった。対局で勝ち、感想戦でも勝つタイプだ。 午前終了して昨日のまま 2.5 ポイント。 しかし戦績表を見るに B クラスではまだ三位のようだ。 気分を一新して午後の対局。 第 7 ラウンドはようやく白番。ここで勝たねば後がない。 優勢の中盤から大駒を立て続けに交換してエンドゲームに変換し、 ツークツヴァンクを利用して気分良く勝った。 ナイトとポーンだけになったところで残り 5 分しかなかったが、 このエンドゲームは読み切った(多分)。 これで、B クラスで同率 3.5 ポイントの首位。 最終第 8 ラウンドは黒番、 同じく 3.5 ポイントの中学生と B クラス優勝をかけて対局。 ドローでも入賞は確実だから、静かな定跡を選ぶだろうと期待していたのだが、 ジオッコ・ピアノ、かと思ったら、さらにエバンス・ギャンビット。 持ち時間が短い対局では、良く知らないギャンビット系の定跡は辛い。 しかし、あれこれのタクティクスを切り抜けて、 次々と駒を交換し有利なエンドゲームに持ち込んだ。 最後は時間に追われた相手がピースただ取られのブランダーを指して、勝ち。

結果は単独の 4.5 ポイントで B クラス優勝。 ついでに、A クラスでも三位に入賞した。 今回、A クラスは上下から叩かれて、パフォーマンスが悪かったようだ。 一年以内に B クラス優勝という目標を運良く達成。 次は二年以内に A クラス優勝を目標にしよう。 そう言えば、午前に負かされた男の子は A クラスで優勝していた。 小学生かと思っていたら、表彰式で聞くに中学生だった。 昨日の「小学生」も中学生だったようだ。 最近、中学生くらいだと皆、すごく子供に見えるんだよなあ (それが年を取った証拠)。 それはさておき、賞罰に全く縁のない人生だったので、 一度にトロフィを二つももらって嬉しかったです。 確か、近所のワイン屋さんの今月の頒布会が、 シャンパン二本だったような記憶があるので、 丁度良かった。そうでなくても自分で買おう。 一つのトーナメントでシャンパン二本。

Saturday, June 17, 2006

スイス・ギャンビット

持ち時間 30 分の快速戦トーナメント、初日。 私のレイティングのデータが紛失されたようで、 参加者リストの最下位からスタート。 今回のトーナメントはかなり参加人数が少ない。 持ち時間の短い対局では、 うっかり格下に負けてしまう可能性が高いので、 レイティングの高い人は敬遠しがちだと言うことだ。 初日の私の戦績は 4 ゲームで、2.5 ポイント(2 勝 1 敗 1 ドロー)。 午前で B クラスの相手二人に連勝した後、 午後 は A クラス、オープンクラスの格上の相手と対戦し、 A クラスの小学生に負け、オープンの相手とは引き分けた。 この小学生は筋が荒っぽいながら、なかなか強かった。 時間があれば勝てた相手だと思うのだが…、と悔しがってみる。 明日もがんばろう。

ところで、トーナメントで総当たりほどの試合回数を行えないとき、 「スイス式」と言う方法が取られることが多い。 思想としては、トーナメント進行中の結果を基にして作為的に対戦を組み合わせ、 少ない試合数でも強さの順位をできるだけ正確に導こうとするものである。 ちょっと想像する以上には有効なヴァリエーションがいくつかあって、 特に最上位者近辺のランキングは信頼性が高いそうだ。 しかし、言うは易し行うは難し、 実際の対戦組みルールは非常に複雑になってしまう。 私が思うにスイス式のもう一つの難点は、 その方法に対して一種の捨て駒作戦がありうるところだ。 つまり、ルールに合わせたタイミングで負けることで有利な対戦組みを期待し、 トーナメント成績を上げようとする (チェスプレイヤーはこれを「スイス・ギャンビット」と呼ぶらしいが、本当かどうか知らない)。 この二つを解決するには、もっと積極的にランダムネスを利用すべきだと思う。 全くランダムな対戦組みによるトーナメントは多分、 普通の人が想像している以上に有効なはずで、 それに「スイス式」的な作為を僅かに添加する程度がベストだと思う。 これは、なかなかいい確率論の応用問題なんじゃないだろうか。 適正な選挙方式のデザインはなかなか難しい数学的問題として有名だが、 トーナメントはそれよりも数段難しいはずだ。

Friday, June 16, 2006

Я чайка

雨があがって今日は晴天。 今日も金曜セミナはお休みで、わりとゆっくり。 夕方、東京に移動。 土日二日間のトーナメントに参加のため。 今回は持ち時間 30 分の "rapid" を一日四局ずつ、計八局。 今夜はプレパレーション用のファイルをちょっとさらって、 早めに寝よう。

読書。 リンドバーグ夫人の「海からの贈り物」(吉田健一訳/新潮文庫)。 リンドバーグ夫人もご主人同様に飛行機乗りだったそうだ。知らなかった。 サン・テグジュペリもそうだけど昔の飛行機乗りは、哲学者だなあ。 それに比べて現代のパイロットたち、 つまり宇宙飛行士たちが大したことを言いも書きもしないのは何故だろう。 唯一の名文句と言えば、私は鴎、くらいで、 宇宙からは国境は見えません、なんてその紋切り型に腹が立つ。 しかも、その「私はカモメ」すら、 実は宇宙船のコードネームが「カモメ」だったので、 「こちらはカモメです」が通信の第一声だっただけなのだ。 これを知ったときには、がっかりした。 「カモメのジョナサン」も読んで感動していた、 世界中の少年少女たちの夢をどうしてくれるのだ。 それはさておき話を戻すと、思うに、 宇宙に出るという経験が強烈過ぎて人間の許容範囲を越えていて、 ほとんど誰もが地表を這っていた時代にたった一人で空を飛ぶ、 と言う経験に比べて、人間を深めないんじゃないだろうか。

Thursday, June 15, 2006

女王の blog

終日、雨。 生協食堂で昼食のあと、12 時半から「情報理論」。 通信経路の問題について定義と記号の用意、 前向き確率、後ろ向き確率、経路行列、経路関係式など。 夕食には、また生ハムのパスタを作った。 余熱で少し火が通った生ハムが美味しい。 ついでに一分間の炎の芸術の練習。 つまりオムレツ。パセリのオムレツにしてみた。 今日の出来は完璧だ。

「チェス・ドクターの日々」で、 スーザン・ポルガーの blog の記事 を読んで感動した。 私はチェスを指す全ての女性が好きだが、 特にスーザン・ポルガーが好きになった。 (Susan Polgar Chess Blog と、 上記事の原文。 意識的にそうしているのだろう、文章がとても明解で読み易い。)

Blogger によると、 メンテナンスのため 8:23AM (PST) 時に一時アクセス停止するそうです。 Susan Polgar Chess Blog も Blogger なので、念のため。 ユーザが多いこともあるのだろうけど、 Blogger は結構トラブルが多いような。

Wednesday, June 14, 2006

トリアージ

冷や御飯を詰めて簡単なお弁当を作り、出勤。 研究室で昼食のあと、12 時半から卒研その1。 イェンセンの不等式、 Lp 空間、L2 空間の幾何など。 生協食堂で早めの夕食のあと、 院生の自主ゼミに参加。 8 時くらいに終了。 今、帰宅。

生協書籍部で、「デスマーチ (第二版) ソフトウェア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか」 (E.ヨードン著/松原友夫、山浦恒央訳/日経BP社)を買う。 デスマーチの定義は、 「開発日程、予算、人員、その他の開発資源が通常の 50 ~ 100 パーセント少ないプロジェクト」らしい。 ソフトウェア会社だけのことかと思っていたら、 他の分野にも結構あるんじゃないかなあ、こういうプロジェクト… 例えば、学校法人とかにも? ちなみに別の目安としては、デスマーチとは、 「公正かつ客観的にプロジェクトのリスク分析をした場合、 失敗する確率が 50 パーセントを越えるもの」だそうだ。 デスマーチが発動する主原因は、 第一に政治、第二に政治、そして第三に政治であり、 その他には、 経営陣や営業部の天真爛漫な将来展望、 若者や企業立ち上げ時の楽観主義、 海兵隊方式の社内文化、市場国際化による競争激化、 予期せぬ公的規制、予測不能の事件と事故、などがある。

Tuesday, June 13, 2006

生者と死者と

蒸し暑い京都の夏。 講義の予習の一日。 昼食は生ハムのパスタ。 夕食は肉じゃがの残りを使って、 韮と卵の煮物を作り、一汁一菜の粗食。

昨日は母方の祖母の命日。 去年が三回忌だったから、今日で丁度三年経ったことになる。 私が気付いたときには、 親より上の世代はとうの昔にほぼ全滅していた。 そのせいで、 私にとっては母方の祖母が初めての親族の死だったし、 今のところ唯一の死である。 今年も法事に出るつもりはなかったし、 両親から呼ばれることもなかった。 毎年、同じことを思う。 未だ人に事ふること能はず、焉んぞ能く鬼に事へん。 未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん。 未だに人に仕えることが良くできないのに、 どうして死者とうまくつきあえよう。 未だに生きることが良く分からないのに、 どうして死について分かることがあろう。 まだ私は法事に出る気がしない。 機会があるごとに墓参するのみである。

Monday, June 12, 2006

絶望のポジション

トーストと珈琲とヨーグルトの朝食のあと、出勤。 研究室でメイルを書き、生協食堂で昼食。 午後は卒研その2から。 ハンナーの不等式の証明はやはり一箇所詰められず。 どうも教科書の証明がおかしい気がする。 何か勘違いしてるのかな… 卒研の範囲は越えるが、 ハンナー自身のものとリーブらの関係論文二本の、 原論文にあたってみるように言っておく。 他は Lp ノルムの微分、Lp 空間の完備性など。 続いて 14 時 10 分から「数理計画法」。 一期間二項モデルによるデリバティブの価格付け。 リスク中立確率測度を使う方法と、 複製ポートフォリオによる方法の二通りで、 コールオプションの価格を計算してみせる。 続いて、15 時 50 分より「情報処理演習」。 講義の方では一通りの文法は終わったそうなので、自由課題。 サンプルとして、 入力された数までの素数表を表示するプログラムと、 入力された数までの完全数をその約数の和で表示するプログラムを その場で書いてみせた。 夕食は肉じゃがの残りと冷や御飯など。

ときどきチェス。 負け試合を闘うと言えば、左の局面をご覧いただきたい。 ちょっとチェスを知っている方ならすぐに分かるように、 黒のポジションは酷い。酷過ぎる。 一言で言えば "disaster"。 クイーン側はほとんどの駒が身動きが取れず、 キング側ではキングを守る駒がなく、 しかもキャスリングの権利を失なっている。 これはよほどの素人が、 まあまあ指せる白に遊ばれているところだろう、 と思われるかも知れない。 しかし、なんとこの局面は 1889 年世界タイトルマッチ第十五局、 白チゴリン vs. 黒シュタイニッツ、白の十五手目後である。 シュタイニッツはこのような絶望的な局面に、 望んでたどりつくことが少なくなかったと言う。 この絶望のボジションからの、 初代世界チャンピオンの華麗なディフェンスをご覧あれ。 15. ... f6 16. Nf3 Bc5 17. e5! b5 18. Bxb5 cxb5 19. Nxb5 Ne6! 20. exf6 gxf6 21. Qh4 Kf7 22. Qh5+ Kg8? 23. Qg4? Kf7 24. Qh5+ Kg7! 25. Nfd4 Bxd4 26. Nxd4 Rf8! 27. Rd3 Bb7 28. Nxe6+ dxe6 29. Rh3 Be4 30. Qg4+ Bg6. この6手後、白チゴリンは投了。

Sunday, June 11, 2006

撤退戦

昼食にアスパラガスのパスタを作っていたら、 執事がふらふらしながら家にやって来る。 執事は、 私の家のすぐ近所のゲームソフトウェア会社で働いているプログラマで、 私の雑用(ゴミ出しとか、ハウスキープとか、留守中の猫の世話とか) をすることと引き換えに、 格安の家賃で我が家の二階の隅の一室を占拠している青年である。 それはさておき、最近あまり見かけないのは、 トラブルが燃えさかっているラインに助っ人として放り込まれて、 地獄の日々が続いているせいらしい。 すぐに仕事場に戻るところを引き止めて、 昨日あけたシャンパンの残りを一杯ごちそうする。

「戦況は?」 「もう、どうやって撤退するか考えているところです」 「撤退戦が一番難しい。そもそも人生とは一個の撤退戦なのだよ」 と、とっておきの英知を授けてやったのに、 「人生の最初から撤退してるのは博士だけですよ…」 と捨て台詞を残して、また戦場へと帰って行った。 そうではなくて、誰の人生も所詮、負けることが運命づけられたゲーム。 全ては奪い去られる宿命なのだが、 その撤退戦において如何に被害を最小限にとどめ、 如何に虚しい宿命を雄々しく闘い、 如何に美しく敗北するかが、問題なのだ。 言い代えれば、負け試合を楽しむことが人生の目的だ。 クリケットの試合は一ゲームに数日かかるので、 負けが事実上確定しても、まるまる何日も試合が続行されることがある。 そのときにこそ、誰が本当の紳士であるか、 そして真の強さとは何かが分かるのであり、 それはスケールの大小こそあれ何でも同じなのだ。 まあ、後十年ほどして私くらいの年になれば分かるだろう。 その後ろ姿に合掌。

午後は講義の予習と読書など。 「コカイン・ナイト」(J.G.バラード著/山田和子訳/新潮文庫)。 バラードって世界の終わり症候群の SF 作家だと思っていたら、 いつの間にか現代文学のカリスマみたいな扱いになっていてちょっと驚き。 妹から何やら宅配便。 開けてみると、上海旅行のお土産だと言って、 上海スターバックスの T シャツ … うーん、相変わらず謎めいた趣味。未だにもう一つ良く理解できない妹だ。 夕食には肉じゃがを作った。 夜はチェロの練習。バッハのメヌエットとか。 難しい曲が弾けないものだから簡単な曲を、と思うのだが、 簡単な曲を音楽らしく弾くのも結局、同じくらい難しい。

Saturday, June 10, 2006

シャンパンの理由

今日は完全休日。 猫と昼寝をした以外は、 チェスの序盤定跡の勉強で日中を過す。チェス強化週間に入った。 昼食は鶏レバーを使い切るためレバ韮炒めで一汁一菜。 夕方、近所のワイン屋にシャンパンを買いに行く。 夕食に冷やし肉玉饂飩を作った。 お風呂あがりに、論文(仮)採択記念のシャンパン。 クリストファ・ミニョンの Heritier Eugene Prudhomme (Extra Brut).

シャンパンは美味しいけれど、 個人的にはやっぱり何かの言い訳があるときにだけ飲むのがいいと思う。 そうでなければ何が楽しくての人生であろう。 とは言え、段々と理屈が薄くなってきて、 最近では友達に久しぶりに会ったから、くらいの理由で飲むし、 いずれは今日は良い天気だから、とか言い出しかねないが。 ふと思い出したけれど、 学生時代に院生室の近所に生物系の研究室があって、 そこでは廊下に面したスチールの棚の中に、 シャンパンの空瓶が飾ってあった。 何だろうと思って通り過がりに見てみると、 一本一本のラベルに日付と、 このときに○○○が発見された、 とか、○○現象が観測された、と書かれていた。 勿論、科学研究はそれ自体が面白いからするのだが、 ささやかなご褒美とお祝いがあるのもよろしいではないか。 私はそのとき、この研究室のチームはいい仕事をしているだろうな、 と思った。

Friday, June 09, 2006

idiomatic

夜、オックスフォードの L 先生からレフェリ・リポートのコピーがメイルで届く。 投稿していた共著論文が仮採択された模様。 (私が書いたので)英語が "idiomatic" でない箇所が多々あるから訂正せよ (「英語が酷いから以下のように直せ」の婉曲表現らしい)、 と言うことと、 introduction をもっと良く書け、 と言う二点が主な改訂要求だが、細かい数学的な指摘も色々。 しかし全体は "a very interesting paper", "The applications ... are very nice." と言う非常に好意的なものだった。 いやあ、めでたい。 改訂がうまく行くか不安材料はあるが、 その作業は比較的楽しい部類だ。 シャンパンでも買いに行くかなあ。

金曜恒例の関西確率論セミナは今週はなし。 昼食は一汁一菜の粗食。 夕方、買い出しに。 朝食用のパンを買って、 ワイン屋でチーズを購入、 スーパーで食材を仕入れ、 珈琲豆を求めて帰宅。 夕食は鶏レバーのパスタ、 グリーンアスパラガスのサラダなど。

Thursday, June 08, 2006

時間を、風に吹き上げられるテーブルクロスのように

蒸し暑い。 昼間は晴れていたが、 近畿も今日で梅雨入りらしい。 また生協で昼食ののち、12 時半より「情報理論」。 情報源の直積、 シャノンの第一定理の一般的な証明、 簡単な具体例について直接的な計算で第一定理が成立していることを確認、 など。 生協書籍部で注文していた本、 「神話論理I:生のものと火を通したもの」 (レヴィ=ストロース著/早水洋太郎訳/みすず書房)、 を受け取って帰る。 夜は食事を作る元気もなく、一週間の疲れを抱え、 癒しを求めて雨の降る中を近所のバーへ。 静かに食事しつつ、 セネカの「幸福な人生について」(岩波文庫「人生の短さについて」所収) を読む。 セネカは癒される。

夏休みには「悲しき熱帯」を読み返すくらい、 レヴィ=ストロース好きなのだけれど、 その理由はほとんど文学か、文章の芸術として面白いからで、 これが本当に学問として成立しているのか、 哲学や思想としてそんなに本当に偉大なのか、やや疑ってはいる。 むしろ、(けして負の意味ではなくて) アマチュア的なところが偉大だと思う。 アマチュアでなくて誰が神話についての大著を、 音楽と料理のアナロジーで書くだろうか。 神話についての本の章に、 「行儀作法についてのソナタ」なんて名前を付けてしまうところがいい。 序文で長々と音楽について語って、 「音楽は時間を、風に吹き上げられるテーブルクロスのように、 捕まえ折り返す」、なんて書いちゃうところも素敵だ。 この文章は書けそうで書けない。 そして、 この本全体を「音楽に捧げる」なんて献じてしまうところも凄い。 まさに、アマチュアだ。 とは言え、 普通の人にはこんなぶ厚くて、 論理的には限りなくでたらめに近いことが一杯書いてあって、 一冊 8 千円もする本はお薦め出来ない (本当に、みすず書房って…)。 私はファンの贔屓目でこの本を買ってしまったし、 「神話論理」の続刊も出たら買いますけど。

Wednesday, June 07, 2006

記号の趣味

今日も昼も夜も生協食堂。 12 時半から卒研ゼミその1。 積分の定義のあと、単調収束定理の応用、 シェフェの補題、スタンダードマシン、 期待値など。 Williams の教科書では測度の括弧の中に関数を書くと、 その測度によるその関数の積分を意味するのだが、 どうも趣味が悪いような気がしてならない。 便利な時もないではないけれども、 確率論に入って P(X) = E(X) なんて書いてあると一瞬ぎょっとする。 早い夕食のあとは、院生の自主ゼミ。 今日はけっこう早く 20 時頃に終了。

卒研の学生にも、 「先生、ずいぶんお疲れのようですね」とか、 「風邪ですか?」などと言われる。疲れてますとも…。 あ、明日の講義の準備がまだ終わってなかった。 これからやらねば。

Tuesday, June 06, 2006

猫は会議をしない

夕方、17時半から会議、 と言うか、説明会と言うか。 休憩が入ることもなく延々と続いて、 終わったのは22時過ぎ。 終わった途端に席を蹴るようにして立って、 そのままバス停に向かって帰ったが、 帰宅したのは今。つまり23時半。

仕事の内だからしようがないものの、 私は会議が苦手だ。身体にとても悪い。 実際、今日は途中で二回ほど意識を失いかけた。 座っているだけで、足と頭の先から生命エネルギィが抜き取れられていくような気がする。 実際にそうだと思う。 多分、寿命が二年くらい縮んだかも知れない。 他の人はどうして平気なのだろう。 会議のない国に行きたい。 二度と会議に出なくていいなら、即金で三千万円まで払ってもいい。 誰に払えばいいのか良く分からないけど。 もう少し年をとって、もう少し時間が惜しくなってきたら、 即金で一億円くらい払ってもいいと思うようになるかも知れない。 そのときは、自分に一億円払って仕事を辞めればいいのか。 二条駅に着いたら、若者たちが自転車で曲芸乗りをしたり、 煙草を吸ったりして、たむろしていた。 彼等がうらやましい。何せ、会議に出なくていいのだ。 途中でコンビニエンスストアの前を通った。 その店員が輝いて見えた。コンビニの店員は会議に出なくていいのだ。 ラーメン屋もいいな。何せ、会議に出なくていいのだ。 家に帰ったら、猫が出迎えてくれた。 猫がうらやましい。猫は会議をしない。

ミモザ

出勤前からふらふらしている。 生協食堂で昼食。 12時半から卒研ゼミその2。 ハンナーの不等式の証明。 あと一箇所だけ詰め切れていないところが残った。 14時から「数理計画法」。 裁定機会がないことと、リスク中立確率測度の存在が同値であることの証明。 その簡単な具体例。 15時50分より「情報処理演習」。 関数について。 演習の後に、TA の人に、「昨日はN 先生の結婚式に出席していたんですか?」 と尋ねられた。 どうも昨日は、数理ファイナンス業界の某 N 先生の結婚式でもあったらしい。 きっと六月の吉日で祝いごとが多かったのだろう。 念のために言っておけば、 私が出たのは某 A 社の天才プログラマ K 氏の結婚式。

夜は、K 大の S 君が留学用のヴィザ取得に関西に来ていると言うので、 T 師匠とその奥様をまじえ、四人で河原町で夕食。 師匠の奥様と S 君の広島コンビに、 煮干しでだしを引くことの威力を説得される。 だしは昆布と鰹節の一番だしに決まっているでしょう、 と言う私の意見も二人そろってのパワーに圧倒された。 そうか、煮干しも使ってみるべし。

その後は、S 君と二人で祇園のクープ・ド・WG に移動して、 シャンパンとフレッシュジュースのカクテルを飲みつつ、 次の秋に予定されている師匠の祝還暦シンポジウムについて、 叩き台とすべく議論をする。 既に酔っぱらっていたのでやや怪しいが、 私が書記役を務めてメモをとっておいたので、 それを基本に明日午前中に整理する予定。

Sunday, June 04, 2006

電撃的

ルームサーヴィスでイギリス式朝食を食べて、 身支度をし、10 時半から結婚式。 昨晩の内に、わざわざ新郎新婦お二人が部屋にご挨拶に来てくれていたので、 さすがに式当日に新婦の顔を初めて知るわけではない。 昨夜はお二人の訪問が急だったので、 お風呂に入った後のバスローブ姿で二人を出迎え、 薄暗い部屋の中、ベッドにはチェス盤、 テーブルにはコンピュータ、 ソファには脱ぎ散らかした服、という有様で、 (新郎はもちろん何の反応もしなかったが) 新婦にはかなり良くない印象を与えたようだった。

それはともかく、急な御結婚だった。 あとで得た情報によると、 お二人が出会ってからわずか一、二ヶ月で結婚式の日取りの相談をするに至る、 急展開だったらしい。 新婦が産婦人科のお医者さんなので、大変にご多忙だということもあるのだろうか、 それにしても電撃的だ。まさか、K氏が結婚とは。 まさに電撃結婚だ。これを電撃的と言わずとして何をか言わん。 K氏は一年くらい前には、 結婚が決まった秘書に結婚というものがいかに良くないか、 本まで与えて説教していたらしいのに、 運命の出会いというやつだろうか。 それとも、犀川先生風に言うと、 「天才も年を取って、他人に興味を持つほど頭が悪くなったのさ…」、 ということだろうか。

披露宴会場は新郎側が恩師の(TRONの)S村先生、 某A社の社長、副社長はじめ関係者たち、 新婦側には某医科大学の人々のテーブルが占めていた。 私は中央「新郎のご友人テーブル」で、 中古車販売会社をやっているギタリストHさんの隣。 水族館をイメージして水中花などを目立たない程度に配置した、 会場全体のエスタブリッシュな雰囲気の中、 黒スーツに白シャツを着ると何故かカタギでない空気の漂ってしまう、 Hさんと私の長髪の二人だけが浮いている。まあ、これも一つのアクセント。 披露宴はなかなかシックかつ心温まるものであった。 Hさんと二人で、Kさんが結婚とはなんだかしみじみとするね、 などと語り合う。

披露宴の終了後は、A社の女王様こと、 サディスティック・マネージャOさんの仕切りの下、 近所のレストランに移動、二次会の準備をちょっぴり手伝う。 夕方より二次会。 他に知り合いもあまりいないので、 またHさんと二人で音楽の話など。 一応はご挨拶しておこう、と二人そろって新郎新婦席に行くも、 まるでヤクザものが因縁を付けに来たようにしか見えないのか、 テーブルの周りはすっかり人気がなくなってしまうのだった。 新婦は随分としっかりしたご家庭のお嬢様のようで、 おかしな友人たちにやや戸惑っていたかも知れない。 敏腕マネージャOさんの仕切りだけに、 一分の狂いもなく予定時刻きっかりに二次会も終了して、 慌てて新幹線で帰宅。 かなり驚きはしたものの、 兎に角、本当におめでたいことであった。 運命的な結婚というものがあるのですね。 Kさんご夫妻、末永くお幸せに。 京都にいらっしゃる際には是非ご連絡を。

Saturday, June 03, 2006

バビロン再訪/白いアヒル

新幹線の中で、フィッツジェラルドの短編を二つ読んだ。 午後に東京到着。 下北沢でN氏と待ち合わせて、「マジックスパイス」でカレーの昼食。 前回はレヴェル「虚空」だったので、 今回は一段階上げて裏メニュー「虚空50」。 まだまだ平気な辛さ。 相変わらず何かマジックなスパイスが入っているらしく、 食後少しく気持ちがハイになった。 ちなみに、「マジックスパイス」は最近大阪なんばにも出店したらしいです。

N氏と別れて、新橋のホテルへ。 最近出来たらしい新しいホテル。 ここも高層ビルの途中の階から上層部が客室、と言う、 パークハイアット東京方式(?)で、 街の雑踏とは隔絶された落ち着いた雰囲気。 部屋は流石に綺麗だが、このバスルームと寝室との関係は落ち着かないなあ。 おっ、そしてこれがうわさの白いアヒル。 ウースター家の若旦那も辛いことがあると、 湯船で黄色いアヒルちゃんのおもちゃで遊んで元気を取り戻すようだし、 やはり湯船にはアヒルだ。 白いアヒル、おみやげに持って帰ろう… (持ち帰りOKだそうです。確認しました)。 ところで、 テレビにブラウザが搭載されていたけど、 勿論、某 A 社製でしょうね。 そして明日はその作者である天才プログラマK氏の結婚式。 その縁でこのホテルに?

Friday, June 02, 2006

都会の夜

自宅で家事を色々片付けて、 粗食の昼食を取り、郵便局で雑用をし、 京都大学へ向かう。 金曜日の関西確率論セミナ。 K 大の H 君の発表。なかなか面白かった。 帰りに大宮駅近辺まで乗り過して、 ワイン屋で注文していた二本を受け取って帰宅。 自宅で簡単な食事をしてから、 近所のバーへ。 今月からのスタッフ再編によって、 F シェフが祇園から六角新町に戻ってきたと言うので、 その様子を偵察に。 また客が来なくて一人でボヤいているんじゃないかと思っていたのだが、 何と大入り満員でスタッフ全員が天手古舞していた。 カウンターでシャンパンを飲みながらカポーティの短編集「夜の樹」 (川本三郎訳/新潮文庫) から一編だけ読んで帰る。 やっぱりこれからは今まで通り、平日の早い時間に行く方がいいかな。

「ブルー・ブラッド」(D.ハンドラー著/北沢あかね訳/講談社文庫)、 移動時間などを使って一日で読了。 お洒落な会話を書かせたらミステリ界では並ぶものなし、 ハンドラーの新シリーズ。 ゴーストライターのホーギーに代わって主人公として登場するのは、 映画評論家ミッチ。 ストーリー自体は全盛期から随分、力が落ちている気がする。 正直に言うと、 MWA 賞受賞作「フィッツジェラルドをめざした男」(同じく北沢訳、講談社文庫) で既に頂点で、後はその続編として読んでいるようなものだったから、 新シリーズではますます弱い。 舞台が都会でないことも欠点。 ハンドラーは町を離れると文章の魅力が落ちる。 海に浮かぶ宝石のような夜の摩天楼、 フルートグラスのぶつかる音、汐のように満ち干きするジャズ、 才能豊かで職業不明の美男美女たち、映画の名台詞も裸足のへらず口、 おそらく現在のアメリカには存在しない、 シャンパンの香りが大気に漂っているような大都会の夜こそ、 ハンドラーの真骨頂が発揮される場所だ。 なお、「フィッツジェラルドをめざした男」 は本当に傑作なのに、 講談社文庫の海外ミステリにありがちの品切れ。

明日から東京に一泊。 汐留のコンラッド東京にて、友人の結婚式に出席のため。

Thursday, June 01, 2006

アッシャー家の崩壊

生協食堂で昼食をとって、 12時半から「情報理論」。 Shannon-Fano コードとその性質など。 雑用をして、 夕方から会議。 終了は、20時過ぎ。 また生協食堂で夕食をとって帰る。

昨日、神田の崇文荘書店から目録が届いていた。 買えなくもない値段でちょっと魅かれたのは、 アラステアの彩色石版画 5 枚が入ったポーの「アッシャー家の崩壊」くらいか。 あまり注文しないと目録を送ってくれなくなるので、 もう二三日待って誰かのものになったところを見計らって、注文するかな。 バルビエ挿画のラクロ「危険な関係」がまた出ていた。 でも、この値段じゃあ流石に買えないな。