Tuesday, July 31, 2007

究極の選択

8 時起床。ゴミ出しをして、目覚しの珈琲。 アイスコーヒーにしてみた。 朝方はまだ暮らしやすいが、今日も良い天気で気温が上がりそうだ。 採点のために出勤。 早めの昼食は生協食堂にて。大蒜の芽ともやしと鶏肉の甘辛炒め定食。 午後一杯、採点に励む。 夕方一段落ついて、キャンパスを後にする。 夕食は御飯を炊いて、鰻丼。ついでに、 ちょっと貧乏臭いが、 余った鰻のたれが勿体ないような気がして、 たれをつけて長葱の串を焼いた。卵の御澄ましも作る。

「暗殺のアルゴリズム」(R.ラドラム/山本光伸訳/新潮文庫)に、 悪魔の組織に変貌してしまった巨大慈善団体が出てくる。 ワクチンを配布すれば何万人と言う子供たちを救えるのに、 嗚呼、なんと言うことだ、 この貧しい小国を私物化している悪徳大統領がそれを許可しない。 このたった一人の邪悪な人間さえ「排除」すれば… まあ、 バフェットかソロスの慈善団体が似たようなことを、 現実に実行してそうな気がしないでもないが、 「神は妄想である」(R.ドーキンス/垂水雄二訳/早川書房) で読んだ倫理テストのことを思い出した。 ハーヴァード大のマーク・ハウザーと言う生物学者が、 「究極の選択」タイプの問題を利用して、 人間の倫理や道徳がどのように形成されたのかを研究しているそうだ。 例えば、こんな問題。

路面電車が暴走していて、 本線の先の線路の上で 5 人の人間が動けなくなっている。 しかし、たまたまあなたが線路の切り替えポイントの所に立っていて、 電車の行く先を本線から待避線に切り変えて、 この 5 人の命を救うことができるとせよ。 ところが間の悪いことに待避線の方にも、 一人の人間が線路の上で動けなくなっているのだ。 あなたは行く先を切り替えて 5 人の命を救うために一人を犠牲にできるか?
第二問。 再び、路面電車が暴走していて、 本線の先には 5 人の人間が動けなくなっている。 しかし今回のあなたは切り替えポイントではなくて、 線路にかかった小さな橋の上にいて、 その橋の欄干に大変太った男が座っている。 電車が通るタイミングでこの男を下に突き落とせば電車を止められる。 あなたはこの男を突き落とせるか?
第三問。 またまた、電車が暴走していて、本線の先では 5 人が動けなくなっている。 あなたは行く先を切り替えるポイントの側に立っているが、 今度の待避線はループになっていて、 5 人の犠牲予定者の直前でまた本線に合流してしまう。 よって、普通なら待避線に切り替えても意味がない。 しかし、 たまたまその待避線の途中で大変に太った男が動けなくなっていて、 この男の重量で電車が止まることは間違いない。 あなたはこの電車の行き先を切り替えられるか?
第四問。前問と同じ設定だが、 今回はループ待避線の方に太った男ではなくて、 大きな砂山があるので安全に電車は停止する。 ところが間の悪いことに、 丁度電車とぶつかるタイミングで、 歩行者がその砂山の少し手前で線路を横断しようとしているのだ。 あなたはこの電車の行き先を切り替えられるか?

こんな調子で、倫理テストは少しずつ複雑に、トリッキィになっていく。 単純化すれば全て、 5 人の命を救うために一人の命を犠牲にできるか、 と言う問題だが、何かが、どこかが違うように思われる。 あるものはやむを得ない選択として許されるように思え、 あるものは許されないこととして抵抗を感じる。 (ちなみに私の答は全て「イエス」だが、 これは意識的、または論理的に考えてしまっているからだろう)。 ハウザーの実験と統計的研究によれば、 これは文化や信仰と関係なく、 意識下のレベルでプログラミングされているのだそうだ。 面白いところは、 今や生物学者が倫理学を研究する時代なのだね、と言うことだろうか。

Monday, July 30, 2007

夏の薫り

8 時起床。目覚ましのアイスティ。 結局、社会には、○ぶちゃんマンの歌を歌わせている人と、 歌わせられている人の二通りしかないのかも知れないなあ…と思いつつ。 そのどちらにもなりたくないのだけれど。 土用丑の日、と言うことで、 昼食は御飯を炊いて、いただきものの鰻の蒲焼を食べる。 午前中は曇り空で気温も低かったが、 午後になって快晴になり、気温もぐんぐん上がってきた。 夕方になって少し涼しくなるのを待ち、買い物に出る。 近所のワイン屋で注文していたものを受け取り、 その近くのスーパーで食材を買い、 そのまた近くのタリーズで珈琲豆を買って帰る。 夕食は夏野菜の炒めものと冷や御飯。

定期試験期間はあと三日間。 その後、学生は九月の下旬まで二ヶ月弱の夏休み。 私の科目は既に整理された答案が揃ったので、 採点を開始している。 100 名以上が受験した「情報理論」が山場。 今週中に採点報告書の提出まで全部、終わらせたい。 それが終われば一応は夏休みで、 多分、八月一杯はゆっくり自分のために時間が使える、 いや使えると思う。いや使えるんじゃないかな、 ま、ちょっと覚悟はしておけ。

切子に入ってますが、マティーニです。 カクテル関連は全て執事の所有物だったので、 グラスもなくなってしまった。

Sunday, July 29, 2007

シャーデンフロイデ

9 時起床。今日も暑くなりそうだ。 洗面台の鏡の前で、こんなに切られちゃったか、と思う。 うーん、まるでチキン・リトル… 冷たいルイボスティを飲んで、まず選挙のため近所の小学校へ。 そのまま定食屋で早めの昼食をとってから、阪急で大阪へ。 車中で「暗殺のアルゴリズム」(R.ラドラム/山本光伸訳/新潮文庫)を読みながら、 大阪のチェスクラブ「アンパサン」に向かう。

もう夏休みのシーズンだからか、選挙の影響か、 参加者は前クラブ・チャンピオン O さんと私の二人きり。 結局、二人で手番を持ち替えての二局。 実力差が随分あるが、以前に一度だけ対局したときにはミラクルが起こり、 クイーンを取られたところから、 クイーンを取り返してエンドゲームを勝った。 今回も油断するとまた噛み付きますよ、との気合で立ち向かったが、 一局目の黒番は簡単に負け。 ペトロフ定跡を 3 手目から外され、 中盤のエクスチェンジ・サクリファイスから簡単に攻め潰された。 二局目の白番はスコッチ定跡で善戦したのだが、 不利なエンドゲームをしのげず、 最後にはステイルメイトまで狙ったが、66 手で投了。 また今日もレイティングを下げた。 最近、まったく勝っていないような。 まあどちらも自分が良く使う定跡のサイドラインの穴が分かって良かった、 と思おう。 18 時少し前に終了、19 時に大宮に帰ってくる。

私の友人に選挙報道が大好きな人がいて、 選挙の夜にはビールや焼き鳥などを買い込んできて、 家でゆっくり飲みながら特別報道番組を観るのが何よりの楽しみだ、 と聞いたことがある。 私は選挙を楽しむための予備知識がまるでないこともあって、 それほど楽しめはしないのだが、一応は観てみるか、と。 今回は自民党が大敗しそうなのが、 人々のシャーデンフロイデを誘っているのかなあ。

Saturday, July 28, 2007

朝のよろこび

どうも最近よく眠れないな… と言いつつ、10 時起床。 寝台の上で過す時間は普通の人よりずっと長い。多分。 学生、院生時代は狭いアパートに住んでいたので、 机やテーブルを置く場所がなくて、 読書や勉強や数学などを寝台の上でしていた。 いや正直に言って、ほとんどの時間を過していたかも。 当時から全ての壁を書架に使っていたので、 部屋が二まわりほど小さくなる。 寝台を置いたらもう何も置けない。 およそ十年間もそんな調子で暮らしたので、 寝台生活癖はなかなか抜けずに、今に至っている。 ずいぶん更生したとは思うけど。 俯せに寝て書き物をしたり PC に向かうのはかなり腰に負担がかかるので、 とても出来ないと言う人が多いが、私は今でも結構平気。

二階の寝室から外を見るに、今日も激しい日射し。今日も暑くなりそう。 ちなみに昨日の京都は 34 度との予報だったが、 街中では間違いなく 35 度を越えていたと思う。 しばらく寝台で「ジーヴスと朝のよろこび」 (P.G.ウッドハウス/森村たまき訳/国書刊行会)を読む。 「猫の手」と言う熟語の由来をジーヴスが説明し出したところに、 バーティが「どうぶつ王国のところはとばしてくれ」 と言う下りに爆笑している内に、もう 10 時だ。 森村たまきさんは天才だな。 もの凄くお硬い法律学が専門の方のはずだが、 ここまでの笑いの才能が埋もれていたことも、発見されたことも驚きだ。 階下のキッチンで目覚しの珈琲。 昼食は冷や御飯を使って、炒飯。 午後は家事と雑用に集中。 夕方、少し暑さが収まるのを待って外出。 散髪に行ってから、 帰りに近所のドラッグストアで消耗品をあれこれ購入。 夕食は最近の贅沢を反省して、かけ饂飩。梅肉とかつお節。 夜のお茶は、水出しのルイボスティ。 「サハラ」と言う名前のブレンド。 けっこう気に入ってしまった。

Friday, July 27, 2007

ヴィジョン

8 時起床。 快晴。今日は暑くなりそうだな… 目覚しの珈琲。 午前中は家計簿を整理したり。 昼食は御飯を炊いてだしを引き、 納豆、胡瓜の浅漬、長葱の味噌汁など。

午後は京大に行く前に、 近所の朱雀キャンパスでの騒ぎを少しだけ見学に行く。 何でも経営者が辞める前に退職金を二倍にしたとかで、 例えば D 志社大と比べると 10 倍くらいの額だそうだ。 もちろん理事会は自分たちで退職金を決定できるので、 多分、何ら違法ではないはずだ。 上に立つものとしてやや、見苦しいだけで。 一方で、二年前から全職員の給料を、まったく一方的かつ強制的に、 年に一ヶ月分ずつカットしているが、 そうする必然性があるのだ、と経営陣が判断したのならしようがないし、 おそらく違法ではないと思われる。 上に立つものとしてやや、みっともないだけで。 実際は高度に政治的、かつ未来を見据えた深い戦略なのだろう。 普通では見えない遠くまでのヴィジョンを持つ能力ゆえに、 経営者なのだから。 一番遠くまで見える者が、群れのリーダーになるのが鉄則だ。 とは言え、下々が誰も後について来てくれないとき、 特に、誰も信じてくれないとき、 そのヴィジョンは意味を持たない。

京大での関西確率論セミナ。 オーストリアはウィーンからのゲスト、W 先生の講演。 日本語では点灯過程とでも言うのだろうか、 ランダムウォークが歩きながら、 通り道の街灯をランダムに点けたり消したりして行く、 と言うちょっと面白いお話だった。 セミナの後は、河原町に夏物のシャツを買いに出たのだが、 あまりの蒸し暑さに、つい祇園のバーに寄ってしまう。 そろそろ桃です、とのことで、ベリーニを作ってもらう。 ベースはギィ・シャルルマーニュ。 カクテルを一杯だけ飲んで帰ろうと思っていたのだが、 目の前にキッシュの皿が置いてあったもので、つい注文してしまう。 鱸とトマトとイタリアの何とか言うチーズのキッシュ。白ワインと。 白だけではバランスが悪いような気がして、 つい赤のグラスワインとテリーヌも頼んでしまった。 贅沢し過ぎ。反省。 19 時半くらいに店を出て、20 時前に帰宅。

花の中の花びら。

Thursday, July 26, 2007

人生に三回

8 時起床。目覚しの珈琲。 曇り空だが、蒸し暑い。 電車の中で、女の子が携帯電話で話し相手を叱っていた。 「あんた、折角のモテ期をそんなんで無駄にしたらあかんでほんま、 このモテ期に一夏の思い出を一杯作ろう、とかアホなこと思てんちゃうの。 人生にモテ期は三回だけなんやで!ほんーま、後悔するで…」 とのことだった。 人生には三回の○○がある、と言う言葉は良く聞くが、 なんとなくそれなりに説得力を感じるのが不思議なところだ。 例えば、人間は人生に三回、大事なものを失なうんだよ、 まず最初は○○、そして○○、それから○○。 とか、女はね、人生に三人、本当に大事な人に出会うんだって、とか。 「3」と言う数字が多くもなく少なくもなく、 誰でも心あたりがあるようで、 今までになければないで、これからあと一つか二つ、 合わせて人生全体で三つくらいはありそう、と思えるところが絶妙なのだろうか。 三つめでオチをつけられるところもいいのかも知れない。 などと考えている間にも、 「でも気付かん内にモテ期が過ぎてるときもあんねん、 小学校のときに二回くらい過ぎてたらどうする? そやろ?だ、か、ら、こそ、モテ期を大事にせなあかんねん」 と、まだガールズトークは続いていたらしかった。

キャンパスに到着して、また生協食堂で早めの昼食。 鯖の味噌煮、菠薐草のおひたしなどと、玄米御飯(S)、味噌汁。 午後は「情報理論」の試験監督。 いつもの教室かと思ったら会場は別の建物の大講義室で、 受験生が 100 人以上もいたのに驚いた。 こんなに受講登録してたんだなあ… 実際、講義を受けてるのはこの 5 分の 1 くらいだけど。 出席を取らないことが如何に強力な学生除けの手段かが分かった。 出席点なし、持ち込み自由にすると、 とても綺麗に整理された板書ノートのコピーや(これは商品として売られている)、 教科書や参考書を沢山持ち込んで、 その場でいきなり解こうとする人が多い。 そんなことができるほど器用で賢ければ、将来の活躍が期待される。 その後は、「暗号理論」の採点。 これは 50 人程度なので比較的に楽。 20 分採点して 10 分休憩、のセットを夕方まで繰り返して終了。

19 時少し前に帰宅。 夕食はジェノヴェーゼ・ソースを使ってスパゲティ。 やっぱり良いオリーヴオイルを買っておいて良かった、 と思う料理だ。 JCA の機関誌が届いていたので、 私が寄稿したところを見たら、脱字があったり、 変なところに変な語が紛れ込んでいたりでがっかり。 まあ校正が一切ないんだからしようがないけど…

玄関にしどけなく寝そべるマダム・クロソフスカヤ

Wednesday, July 25, 2007

蝉の声

9 時起床。今日も快晴、蝉の鳴き声が聞こえる。 ああ、いつの間にやら夏だ。 目覚ましの珈琲で一息ついて、洗濯など家事をしてから出勤。 昼食は今日も生協食堂。茄子はさみ揚げ定食(ハーフサイズ)。 午後は「シミュレーション技法」の試験監督から。 試験時間は 60 分、持ち込み自由、問題は一問だけ。 「ある企業の株価をシミュレーションし、 それに基いて投資を行なうことで利益を得たい。 どのように考えて、どんなシステムを設計すればよいか、 数学的モデルを少なくとも一つ立てて自由に論じなさい」、 と言う感じ。 ちょっと見て周ったら、ずいぶんと採点が楽そうだった。 でも、がんばって「行間」を読み取らないとね。 研究室に帰って、新学部の数学教育関連のメイル仕事をし、 数学論文の再査読のレフェリーレポートを書いて返却し、 ワイヤレス・ブロードバンド通信関連の技術系論文の査読をし、 合間に短編集を一冊読み、 合間に珈琲を一杯飲んだ。 18 時から数理ファイナンスセミナ、特別編。 修士課程から O 大に移った T 君の発表。難しそうな計算を一杯していた。 このテーマはとても重要なのだが、 計算がやたら面倒なのが参入障壁になっているよな… 四年生の時には私が半年、卒研を指導した縁もあるので、 これから一緒に歓迎会に参加。

Tuesday, July 24, 2007

ミニ名刺

昨夜は良く眠れず、5 時頃に目が覚めてしまった。二度寝。 8 時起床。カーテンを通しても日射しの強さが分かる。 ゴミ出しに外に出ると、すっかり蒸し暑い京都の夏。 昨日は夜まで不思議に涼しい一日だった。 まさに季節の変わり目を体感。 目覚しの珈琲を飲んで、支度をしてから出勤。 こちらのキャンパスは白っぽい建物が多く、とても眩しい。 サングラスが必須。以前に比べれば緑が増えてきているけど、 まだ大学らしくない。

昼食は生協食堂にて。鶏南蛮定食。 そのあと、すぐに「暗号理論」の試験監督。 監督控室に行くと例年と部屋の雰囲気が違う。 監督補助の体制がかなり変わったようだ。 助手の方々の代わりに事務バイトが主体になったのかな。 試験時間は 60 分。持ち込みは何でも自由。 RSA 系の原理を小さな数を使った具体的な計算で説明しなさい、 と言う一問だけ。 試験の後は、今期最後の教授会。 もう危険な曲がり角を曲がった後なので、 報告事項などで淡々とした会議。 あっさりと短時間で終了。 前に座っていた学科長に訊いたら、 明日の学科会議もないそうだ。ラッキィ。 部屋に戻ってメイルベースの雑用をしていると、 さっき「暗号理論」の試験を受けていた学生が質問に来た。 試験の内容とは関係ない、随分とマニアックな質問だった。 夕方、キャンパスを後にする。西日が激しく、夕方になっても蒸し暑い。 昨日の涼やかな夜が夢のよう。

夕食は御飯を炊く元気がなくて、納豆スパゲティ。 大蒜を刻んだついでに、ジェノヴェーゼ・ソースも作りおきしておく。 この前、良いエクストラ・ヴァージンのオリーヴ・オイルを買ったのを、 早速使ってみる。 食後に珈琲ではなくて、ルイボス・ティ。 カフェイン・レスなので、夜眠れなくなったりしなくていいかな、と。

つい、インタネット印刷屋 "MOO" で「名刺(ミニカード)」を注文してしまった。 今日、ロンドンより海を越えて到着。 「チェス」と「サイコロ」の 2 ヴァージョンあります。 使う場所が全く思いつかないけど…(笑)
(以下の画像はサイコロの方。裏面は同じ。)

Monday, July 23, 2007

perfectionist

眼鏡を新調してしばらくは、 眼鏡屋さんの言いつけを守ってできるだけ丁寧に扱おうとするのだが、 段々といい加減になってくる。 クリスチアナ・ブランドの「眼鏡の教訓」を思い出した。 ブランドは私の最も好きなミステリ作家の一人で、 その巧緻で複雑な設計とモダンなセンスに特徴がある。 私はこのエピソードを H.R.F. キーティングのエッセイで読んだ。 ブランドが小説家志望の人たちの集まりに招かれたときのこと、 おそらく良い文章を書く秘訣を訊ねられてのことだろう。 彼女はかけていた眼鏡を外すと、レンズを下にしてテーブルに置いて見せ、 こう言った。 「こうしたからと言って、 レンズには目に見えないほんの微かな傷がつくだけです。 けれども、これを何回かくり返すと、知らないうちにレンズが傷だらけになり、 眼鏡をかけたときに視界がぼやけてしまうのです」。

一箇所において、細部に気をつけること、細やかな心遣いを持つこと、 正確であることはそれほど難しくはないし、多分、誰にでもできる。 しかし、それを常に、どこでも、最後まで続けることは多分、誰にもできない。 いつかは、いや、おそらくはしょっちゅう、 レンズを下にして置いて、微かな傷をつけてしまう。 一つ一つは大したことではない。しかし結果は違う。 全ての適切な場所で適切な言葉を使うこと、 全ての局面で正しい一手を選ぶこと、 全ての適切な状況とタイミングでお客の要望に適切に応えること、 この目標はとてつもなく高い。 実際は不可能で、これが出来るようなら神人だ。 それに近付いただけで、 その分野では名手、名人、マエストロと呼ばれるだろう。 問題はその不可能な目標を持つことのできる意思だ。 そしてそのための一歩は、単にこの今、 レンズを下にして置かない、というだけのことなのだが…

Sunday, July 22, 2007

プレリュード

10 時起床。昨夜はなかなか寝付けなかったので、あまり眠れていない。 目覚しの珈琲。 昼食は長葱と卵の炒飯。葱のスープ。白ワインを一杯だけ。 シャワーを浴びて、少し昼寝してから、 近所の小学校に選挙に行く。と思ったら、選挙は来週だった。 何だかこのまま家に帰るのもおかしな気がして、 ついでに駅まで歩いて河原町方面に出る。

BAL ビルの上階の本屋で料理本を物色していると、 偶然、思いがけないカップルに出会った。 京都は狭いね。油断大敵。 ラヴリィなお二人とは本棚の前でお別れする。 幸せそうで羨ましい。あやかりたいなあ。 こう言うのを何と言うのだったっけ… 巴里の仇を京都で討つ?ちょっと違うか。 料理本を何冊かとビルスマのインタヴュの載った雑誌を購入、 一階のエスカレータの前にある紅茶葉屋に立ち寄ってから帰る。 悩んだ末に今日こそルイボスティを買った。 高いなあ、ルイボスって。夕方帰宅。

夕食はトマトソースの五回目。 最初に戻って、シンプルにトマトとバジルだけのスパゲティ。 ようやくこれでトマトソースを使い切った。 ビルスマのインタヴュを読んだこともあって、 久しぶりにチェロを弾く。一つ覚えで、 バッハ無伴奏組曲一番のプレリュード。 また弾けなくなっていて、ほとんど譜読みから。

大きい方がジャンドロン版、 小さい方がアンナ・マグダレーナ写譜版。 スラーの違いに注目。

Saturday, July 21, 2007

自堕落な土曜日

9 時起床。あまり良く眠れず。 目覚めの珈琲。 珈琲豆が最後に少ししか残っていなくて、薄い珈琲。 朝から調子悪いなあ… 昨日、市川美日子のような麻の制服姿の店員に熱心に勧誘されても紅茶葉を買わなかった私だが (でも、めがねかけてたら危なかったかも)、 珈琲豆となると話が別だ。 珈琲がないと死んでしまうので、 やむを得ず駅前のタリーズまで買いに行く。

昼食はまたトマトソースのスパゲティ。四回目。 今日はツナ(ケイパー入り、アンチョビ抜き)です。 赤ワインを少し。食後に珈琲。 午後もしばらく読書をしながら、ワインを飲み続ける。 と言っても、昼食とあわせてもグラス二杯くらいだけど。 「ヴェイユの言葉」(冨原眞弓編訳/みすず書房)。 眠くなってきたので一時間ほど昼寝して、 また寝台で寝転がったまま読書。 「シッダールタ」(ヘッセ/高橋健二訳/新潮文庫)。 この作品などは子供の頃に読んだときには、 「ヨーロッパ人にしては分かってる方かな」などと思っていたくらいだが、 ヘッセの寓話はどれも年をとる毎に身に迫って感じられるようになってくる。 夕食は御飯を炊いてだしを引き、 葱の味噌汁、納豆、胡瓜とツナのサラダ、ベーコンエッグ。 ちょっと私にしては豪華過ぎ。

Friday, July 20, 2007

眼鏡研究社にて眼鏡を作る

訂正:眼鏡研究「所」じゃなくて、眼鏡研究「社」。11:30 am, 21 Jul. 2007

9 時起床。かなり蒸し暑い。雨が近そうだ。 目覚ましの珈琲。 昼食はトマトソースのトマトスパゲティ。 作りおきのトマトソースをベースにして、 フルーツトマトを使ったスパゲティにしてみました。 これでトマトソースの三食目。 メイルでちょっと教務委員のお仕事。 カリキュラム改革の件は一段落ついて、 今は後期の TA 配置。これは事務の方がほとんど手配して下さるので楽。 空の彼方から黒い雲のように近付いて来ているのは、 新しく出来る薬学部・生命科学部の数学科目設定関連と、 来年度の理工学部の教養数学科目の講師手配。 来年の数理科学科の科目分担と時間割設定もあるが、 それはしばらく先の話。

シャワーを浴びてから外出。 棚上げにしていた懸案、眼鏡の新調のため。 愛用の黒い蔓の縁なし眼鏡が壊れて、 しばらく予備の、いまひとつ度のあっていない、眼鏡で暮らしていた。 やはり合わない眼鏡をしていると体も疲れる。 京都の眼鏡屋と言えば新京極の「眼鏡研究社」に行く。 平日の昼間なので客は私一人。 縁ありだが、前の眼鏡と雰囲気の似ているものにした。 視力など測ってもらったり、 フレームを顔にあわせてもらったりしている間に、 店の前で「メガネ研究所やて!」と声をあげる通行人が別々に三人もいた。 研究所じゃなくて研究社だし、ガンキョウ研究社だ。 レンズを入れるまで小一時間ほどかかると言うので、 河原町 BAL ビルの本屋や、 一階の紅茶葉屋で暇をつぶしてから、眼鏡を受け取って大宮に戻る。 近所のワイン屋で注文していたものを受け取って帰宅。

夕方になってやはり雨になった。 夕食は久しぶりに近所のバーにて。 講義とゼミ終了記念にシャンパーニュを一杯。 何か理由がないとシャンパーニュは飲まないことにしているので、 こういう機会に飲まねば。 帆立とトマトのキッシュと、子羊のロースト。 つけあわせの甘長唐辛子が美味しかった。 シェフが今までのスーツ姿にエプロンではなくて、 料理人ぽい白いうわっぱりになっていた。 それに、メニュも若干、デザインが変わった。 内容はほとんど同じだが、「今日のスープ」が新顔か。 早く気付いていれば、注文をしたのだが。 最後にチーズを二種類とデザートワインをいただいて、 雨の中を帰る。

Thursday, July 19, 2007

最終講義と最終ゼミ日

8 時起床。珈琲を飲んで出勤。 早めの昼食を生協食堂でとって、 12 時半から「情報理論」の最終講義。 システム・エントロピィなど。 最後に相互情報量の話をして終了。 ハリー・ポッターの原作を読んでその映画化の内容について知る量と、 映画化の方を観て原作の内容を知る量とは丁度等しい。 なぜなら、これは原作と映画化に共通する内容を、 二通りの方法で見たに過ぎないから。同様に、 恋人同士の二人、A さんと B 君について、 A さんが知っていることから B 君が知らないことを差し引いた量と、 B 君が知っていることから A さんが知らないことを差し引いた量も等しい。 なぜなら、これも二人が共通に知っていることを言い変えただけだから。 兎に角、これで今期の講義は全て終了。

続いて、卒研ゼミS。簡単なマルチンゲール理論の応用。 二人が発表したので今日はかなり時間をとった。 兎に角、これで今期のゼミは全て終了。

一時間ほど研究室で小さな仕事を片付けて、 18 時から数理ファイナンスセミナ。 O 大に最近就職した K 先生の講演。 予定時間を 30 分以上オーヴァしての熱演。 ディリクレ形式理論とマルチンゲール問題の関係を、 易しい例を通じて語っていた。 そして、これから夜は K 先生を迎えて院生たちと草津で会食。

Wednesday, July 18, 2007

老眼鏡紳士

7 時半起床。珈琲とパンの耳。すぐ出勤。 午前中は修士ゼミ。 マルコフ過程についてなど。 今日で今期の修士ゼミ終了。夏休みの宿題を出しておく。 続いて、満員の生協食堂でハードボイルドに昼食。 生姜焼き定食。 注文を聞いてから作ってくれるコーナがあって、 そこの定食の方が勿論やや美味しいのだが、 量が多いのと行列が長いのが欠点。 続いて 12 時半から「シミュレーション技法」の最終講義。 待ち行列理論の続き。 客の到着時刻間隔や窓口サーヴィス時間が指数分布に従わないが、 隠れたマルコフ性がある場合。 これで「シミュレーション技法」も終了。 今日の夕方の教室会議はなかったので、早く帰ることができた。

夕食は作りおきのトマトソースを使って、夏野菜スパゲティ。 これも「野菜がしんなりしたら白ワインを加え、トマトソースを入れて、 30 分ほどゆっくり煮ます」と言うような工程がある料理なので、 「リストランテ・パラディーゾ」(オノ・ナツメ/太田出版) など読みながら、のんびり作る。 ローマのリストランテを舞台にしたしんみりしたいいお話なのだが、 老眼鏡をかけた/スーツ姿の/初老の紳士フェチにも、 カルト的人気があるそうだ。 本当にそこまで狭くコアでマニアックな女の子層があるのだろうか… もし結構いるんだとしたら、私も年が年だしロールモデルとして、 このカメリエーレ長クラウディオの線を狙っていった方が良いかも知れない。 スパゲティは上出来。久しぶりに「してやったり」の感。 リストランテ・カゼッタ・デッロルソにも負けないかも。 昨日から時間をかけた甲斐があった。 食後に珈琲。

Tuesday, July 17, 2007

ゼミ/講義/ゼミ

8 時起床。 ゴミ出しをして、目覚ましの珈琲と、 パンの耳を焼いたものを少し食べて、すぐに出勤。 午前中は卒研ゼミI。 R + 1 人の選手が一列に並んで、先頭の者がすぐ後ろの人とジャンケンをする。 負けた者が列の後ろに並ぶ。 これを続けて、最初に「R 人抜き」した人、つまり、 自分以外の全員に連続して勝った人が優勝者となる。 N 回で優勝の決まる確率は? と言う問題。これはかなり難しい。 結局、ゼミ時間を全部使ってしまった。 兎に角、今期の卒研ゼミIは終了。

続いて、満員の生協食堂で慌てて昼食を取り(ナシゴレンでした)、 12 時半から「暗号理論」の最終講義。 DH 系の原理と、RSA 系と DH 系に共通する高速アルゴリズムについて。 兎に角、「暗号理論」は終了。

続いて、14 時 10 分から卒研ゼミF。 裁定と強裁定と無裁定について。 確実に儲かるポートフォリオを組むことを「裁定」と言い、 裁定が不可能な市場を無裁定と言う。 数理ファイナンス理論では通常、市場が無裁定であることを仮定する。 つまり、市場においては誰も確実に儲けることはできない、 と言うことがファイナンス理論の前提であって、 儲け方を研究したり勉強しているわけではない。 兎に角、これで今期の卒研ゼミFも終了。

夕方帰宅。基本の玉葱入りのトマトソースを作る。 玉葱炒めに半時間強、トマトを入れて煮るのにも同じくらいかかるので、 相当の時間がかかってしまった。 まあ、漫画なんか読みながら、のんびりやっているので、 一種のストレス解消策なのだが。 今夜を含めて四食分くらい作った。 味見のため、今夜はトマトソースだけのスパゲティが夕食。 赤ワインを一杯だけ。まあ、こんなもんかな… 食後に珈琲。

合間に一服。

Monday, July 16, 2007

青熊(名前は、マッタリ)

9 時起床。 台風は過ぎていったようだが、雨は降っている。 珈琲のみ。 昼食は御飯を炊いてだしを引き、 ベーコンエッグと長葱の味噌汁。塩昆布とちりめん山椒を少々。 午後は講義の予習。今週が今期最後の講義。 今期は準備と予習がけっこう大変だったなあ。 まあ、毎年のことだけれど。 夕食は冷や御飯を使って、長葱と卵の炒飯に葱スープ。

Sunday, July 15, 2007

浴衣

朝には台風は通り過ぎて行ったようだ。 曇りだが、湿度が高くて生あたたかい。 今日から二日間、大阪のチェスクラブで、 クラブチャンピオン決定戦が開催中。 残念ながら明日の月曜日は普通の開講日なので参加できないが、 初日の今日だけ例会扱いで参加させてもらう。 午前は元クラブチャンピオンと対局。 と言っても上位の四人くらいは皆、元チャンピオンなのだが。 わりと健闘したが、やはり負け。 午後は二局、自分と同じくらいのレイティングの方と対局。 両方、指したとたんに「あっ(泣)」 と思うようなブランダーを指して、 ボロボロに負ける。でもポカで負けたと言うより、 全然局面を見ずにただ駒を動かしているだけ、 と言うような駄目な対局だった。 このようではわざわざ大阪まで出かけて行く意味がない。 ちょっと考え直そう。 とても惨めな気持ちになって帰る。

おそらく祇園祭に行くのだろう、 阪急電車は浴衣姿の女の子で一杯。 桂で準急に乗り換えたら、 微かにゲランのサムサラの香りがした。 逆に急行に乗り換えた女性がつけていたのだろう。 浴衣だったらちょっといいな… 大宮に着いたら、ここも浴衣姿で一杯。 何故か年齢層が高いな、と思ったら共産党の 「ストップ!増税」選挙活動だった。 共産主義においては税率はほぼ百パーセントのはずだから、 共産党が増税に反対するのは変なんじゃないのかな… 帰宅して、夕食にはカルボナーラを作った。 デザートは貰いものの饅頭と珈琲。

Saturday, July 14, 2007

キング・フィッシャー

強い雨が降ったり、曇りだったり、 台風の影響で不安定な空模様。 珍しく朝食を取り、昼はまたカレー。 夕方、雨が小降りになったところを見計らって、 珈琲豆を買いに出る。 雨の中、浴衣を着ている女の子が目立つ。 そう言えば、祇園祭だっけ? 夕食には冷やし饂飩を作った。 どうも台風は関西を直撃しそう。

タイじゃなくてインドだけど、 名前に魅かれてつい注文してしまったビール、 「キング・フィッシャー」。 チェス好きとしては、つい。(綴りが違うけど。) ちなみに味は、さっぱりしてなかなか美味しかった。 でも裏のラベルを見るに、 これは日本では「ビール」ではなくて「発泡酒」に分類されるようだ。

Friday, July 13, 2007

得たもの/捨てたもの

9 時起床。珈琲を飲んで、洗濯をして、掃除機がけ。 昼食は近所のカレー屋さんにて。 今日の午後の京大セミナはなし。 皆さん学期末でお忙しい時期だからだろう。 R 大では来週もう一週講義があって、 その土曜日から十日間ほどの定期試験期間に入る。 土日くらい休ませてあげればいいのに。 15 週確保するために、みっしり詰まった年間スケジュールだ。 試験期間終了は 8 月 1 日。 今夜は友人とタイ料理屋で会食のため、夜の更新はありません。

定期試験と言えば、 昼食の時に店でラジオがかかっていて、 パーソナリティが学生時代の思い出の指導教授のことを語っていた。 「勉強以外に本当にやりたいことがあるんだったら、 そっちを一所懸命やりなさい、それなら単位は出してやるから」、 と言ってくれたんだそうだ。 物分かりが良いだけの、下らない教え屋だ。 単位が取れないと困る程度のことが、 本当にやりたかったことなのか、と逆に尋ねたい。 私なら、 勉強以外にやりたいことがあるんだったら、 そっちを一所懸命やりなさい、しかし勿論、単位は出さない、と言う。 景色が変わるような恋をして、夢中で半年が過ぎていて、 単位を全部落として留年しました、それでこそ価値があるのだ。 人生の価値は、得たものではなくて、捨てたものの量で測るのだ。 願いのために、欲しいもののために、どれだけのものが捨てられたかで決まるのだ。 大学の単位一つも捨てられない程度のものが、 本当にやりたいことのはずがない。

Thursday, July 12, 2007

嘘つきな友人の問題

今日は講義でこんな話をした(二進情報経路の例として)。 貴方は合格か不合格の結果を待っている。 90 パーセントの確率で合格するのだが、合格発表を見に行くのが怖い。 そこで友人に結果を見に行ってもらうことにした。 しかし、困ったことにその友人には虚言癖があり、 70 パーセントの確率で本当のことを言ってくれるが、 残りの確率で嘘をつく。 この友人が「合格だったよ」と言うのだが、 このとき本当に貴方が合格している確率は何パーセントか?

これと本質的に全く同じ問題が、 日常生活を含めあらゆる所で現れるのだが、 多くの人は全く間違った判断をしてしまう。 と言うのも、何故か、 ほとんどの人は証言者の信頼度を、求める確率だと思ってしまうのだ。 上の問題の場合だと、 この 70 パーセント信頼できる友人が合格だったと言えば、 70 パーセントの確率で合格だった、と思ってしまう。 しかし、実際はそもそもその出来事が起こる確率 を考慮に入れなければならない。 つまり、本当に合格していて友人が正しく伝えた場合と、 本当は不合格で友人が嘘をついた場合の両方があり、 本当に合格していた確率はこの二通りの比に等しいのであって、 友人の証言の信頼度とは異なる。 良く考えると、この誤解はナンセンスなのである。 なのに何故か、多くの人は証言の信頼度を、 出来事が起こる確率だと思ってしまう。

例えば、一万人に一人程度がかかる珍しい病気がある。 その検査薬は 95 パーセントの確かさで、 この病気にかかっているかどうか判定できるとせよ。 貴方がこの検査を受けてみたら、陽性だった(病気にかかっていると「証言」された)。 貴方が本当にこの病気にかかっている確率はいくらか。 検査薬の信頼度が 95 パーセントだから、95 パーセント? 全く違う。正しく計算すれば、およそ 0.2 パーセント程度である。 一万人のうちこの病気にかかっていない 9999 人の 5 パーセントが誤診されて、 500 人程度が陽性になるはずだが、 実際はこの中でせいぜい一人程度しか本当には感染していないのだから。

もっと極端な例を考えるといいかも知れない。 例えば、私はワインのブショネを全く判定できないとせよ。 ワインを飲むたびに「これはブショネ」とか「ブショネじゃない」 と、まったくでたらめに 50 パーセントの確率で答える。 この私が「これはブショネ」と断言したからと言って、 そのワインが本当にブショネである確率は 50 パーセントだろうか? 勿論、違う。

追加:上の病気の検査薬問題で、計算間違いがあったのを訂正(14 Jul. 2007)。 9999 人の 5 パーセントが約 50 人、と書いてあったが、 勿論、約 500 人。よって、実際にこの病気に感染している確率は、 約 2 パーセントでなくて、約 0.2 パーセント。

Wednesday, July 11, 2007

一杯の珈琲から

7 時半起床。 珈琲を飲んで、雨の中を出勤。 午前中は修士ゼミ。マルチンゲール収束定理など。 続いて生協食堂で昼食。冷たいビビンパみたいなもの。 相変わらず、分量は控えめに。 続いて 12 時半から「シミュレーション技法」の講義。 待ち行列理論について。 特に、窓口が一つだけで、 客の到着時間間隔と窓口サーヴィス時間が両方とも指数分布に従う場合について、 具体的に計算。 今日は午後の学科会議はなし。 新学部設置関連で少しメイルのやりとり。 夕方、キャンパスを後にする。 帰宅して一時間ほど仮眠を取る。 夕食は盛り蕎麦と、ピーマンとちりめんじゃこの炒めもの、 最後に蕎麦湯。

目覚めの珈琲。

Tuesday, July 10, 2007

デリバティヴズ

8 時少し前に起床。雨模様。 ゴミ出しをして、珈琲を飲んで、すぐに出勤。 午前は卒研ゼミI。 テニスの試合で一方がもう一方より n 倍得点率が高いとするとき、 前者が勝つ確率についてなど。 昼食は生協食堂。韓国風の雑炊のようなものを食べた。 昨日から胃腸の調子が悪くて、食事の量を半分くらいにしている。 12 時半から「暗号理論」の講義。 公開鍵暗号系の仕組みと RSA 系の原理。 続いて、14 時 10 分から卒研F。 ディリバティヴの基本。先物の買い(ロング)と売り(ショート)、 ヨーロピアン・コール・オプションの買いと売り、 簡単な無裁定条件と複製の概念など。 研究室で委員会の報告メイルを書いたり雑務をしてから帰宅。 寝室で 15 分ほど仮眠を取り、シャワーを浴びてから、 夜は日航プリンセスホテルでの食事会に参加。 飲み物は全てデ・ジャック、料理も美味しかったが、 体調が今一つだったのが残念。 やはり体調が悪いときは、ご馳走がやや辛い。 美味しいものってある意味で攻撃的だな、と思った。 そして今、帰宅。もう一回、シャワーを浴びてから寝ます。

明日も朝から頑張ります…

Monday, July 09, 2007

奈良に日帰り出張

8 時起床。日射しが厳しい。 天気予報では曇りのち雨だったはずだが。 目覚しの珈琲。 資料などを確認してから、奈良に向かう。 京都駅で早めの昼食を取り、 午後の早い時間に現地に到着。正味一時間ほど、秘密任務。 帰りは車内で読書しながら、奈良から京都まで。 "Van Perlo's Endgame Tactics" から、 ルーク・エンディングあたりを読もうとするも、 疲れた頭にはいくらサニー・サイドとは言っても、厳し過ぎた。 本を開いてうとうとしていたら京都に着いた。 夕方、帰宅。 外部の大学院を受験する学生の作文を読んで、添削を返す。 多分、こういう作文を提出させる入試って、その内容自体より、 学生に指導者と相談できる人間関係があるかどうか見ようとしているんだと思う。 実のところは。

そこまででダウン。 体調を少し崩している上に、出張の準備と出張自体で疲れたのだろう。 二時間ほど寝て、20 時くらいに目を覚ました。 夜は雨。 ポテトサラダの残りを肴に少し赤ワインを飲んで体を温める。 あとでお腹が空くようだった、かけ蕎麦でも作って食べよう。

Sunday, July 08, 2007

チェステーブル

9 時起床。目覚めの珈琲。 メイルを読んだり書いたり。 サンドウィッチを作って早めの昼食。 具はポテトサラダと、胡瓜とロースハム。 昼前に阪急で大阪のチェスクラブ「アンパサン」に向かう。 午後の部から例会に参加。二局。 両方白番で、同じくらいのレイティングの方と。 今日は両方とも勝ち。 一局目はタクティクスが難しくて疲れ、 二局目はエンドゲームが難しくて疲れた。 最近ややエンドゲーム指向に指すようにしているので、 二局目がかっちり勝てたのが嬉しかった。 弱いなりに、 騒がしいオープンゲームの中盤を静かなエンドゲームに収束させるのがスタイルかな、 と思ってきた。 大体、そういう勝ち方のときが気分が良いから。 帰宅して、納豆とオクラのスパゲティ。 夜は明日の出張の準備。 秘密のお仕事で奈良に日帰り。

やっぱり、ちゃんとしたチェステーブルで対局するのはいいね。

Saturday, July 07, 2007

ポテトサラダ / ブショネの確率2、解答編

9 時起床。今日は曇り空。 午前中は通信チェスの手を考える。 昼食は冷や御飯を使って、葱と卵の炒飯。 夕食のポテトサラダ用にじゃが芋茹で。 食後の腹ごなしに、掃除機がけ。 「チェスと私」の最後の推敲をして、 メイルで提出。 夕方から外出、新刊書店を見て、 近所のワイン屋さんで注文していたものを受け取る。 日の高いうちからお風呂に入って、 湯船で読書をし、 湯上りに昨日のハーフボトルのシャンパーニュの残りを飲む。 ポテトサラダを作って、 夕食はポテトサラダと素麺。素麺には茹で卵と胡瓜を添えた。 夜は明後日、月曜日の日帰り出張の下調べと準備。

07/07/07 のゾロ目ですね。 何かお星様にお願いしたいところだが(嘘)、生憎、京都は曇り空だ。

ブショネ問題の答。 二週間以内にブショネにあたる確率は半々より、わずかに大きい。 実際、13 日間ではわずかに小さく、二週間がクリティカル。 興味のあるかた向けに、計算の仕方。 「二週間以内にブショネにあたる」と言う事象はけっこう複雑なので、 その裏を考えて、 「二週間に一度もブショネにあたらない」確率を、 1 から(つまり 100 パーセントから)引き算するのがコツ。 ブショネでない確率は 19/20 = 0.95 なので、 一日目もブショネでなく、かつ、二日目もブショネでなく、かつ…、 とそれが二週間続くラッキーな確率は、0.95 x 0.95 x ... x 0.95 と 14 回かけ算したものになる。 計算してみると 0.4876... で約 49 パーセント。 つまり、二週間以内にブショネにあたる確率は約 51 パーセントで、 わずかに半々より大きい。

切れ目の「二週間」がぴったりな感じでちょっと面白いかな、 と思って出題してみました。

Friday, July 06, 2007

ブショネの確率2

9 時起床。今日もいい天気。やはり 7 月だなあ。 目覚めの珈琲。 午前中は洗濯をしながら、あれこれ小さな用事を PC 上で片付ける。 昼食は胡瓜とハムのサンドウィッチ。 午後は食後の運動に洗濯もの干しと掃除機がけをして、郵便局に雑用に行く。 帰宅して、講義の予習。 夕食は御飯を炊いて、豆腐の卵とじ、納豆、オクラのお味噌汁。 食後は雑文の推敲作業。 合間、合間にちょくちょくとメイルの用事が入って、瞬間に対応。 これが常時接続の欠点。OS だけでなくて、 自分まで疑似マルチタスクを強制される。 もちろん割り込み制御することは可能だが、何故かそうできない。 お風呂上がりに、シャンパーニュのハーフボトル。 週末だし、今週は(私にしては)忙しかったし、 来週も(私にしては)忙しいし、これくらいはいいだろう。 PC を閉じて、飲みながらゆっくりと、 「クレィドゥ・ザ・スカイ」(森博嗣/中央公論新社)を読もう。

ブショネの確率の問題、リターンズ。 ワインのコルク栓の変質が原因の品質劣化をブショネと言い、 大体、5 パーセント程度、 つまり 20 本に一本くらいの確率であると言われている。 これを事実として認めることにして、以下の問題。 きちんと計算する必要はないので、直感で答えて下さい。 毎日、一本のワインを飲む人がいる。 この人が二週間以内にブショネにあたる確率は半々より大きい、 それとも小さい? 解答は明日。あなたの直感は正しいでしょうか。

Thursday, July 05, 2007

社会的な動物

8 時くらいに起床。久しぶりに激しい日差し。 暑くなりそうだ。珈琲だけの朝食。 我が家の近くの店で朝礼が始まった。 そんなに近くはないのだが、少しは声が届いてくる。 大抵、私の方が早く家を出るか、 または、まだ寝ているかのどちらかなので、 滅多に耳にしなくてすむのだが、 たまに聞くとなかなか気が滅入るものである。 社訓のようなものを全員で叫んだあと、 皆で社長を称える歌を合唱するのだ。 最初はびっくりしたが、 この頃は、そういうものかも知れない、と思うようになってきた。 それに社員が少ないから滑稽に見えるだけで、 社員が一億人いたらそれほどでもないだろう。 蟻でも蜂でも猿でもそうだし、 きっと、社会的な動物の遺伝子に書き込まれた能力の一つなのだ。 奴隷力とでも言うか、被支配能力とでも言うべきか、 何と言えばいいのか分からないけど… あ、ひょっとしてこれが鈍感力?

出勤して、委員会へ報告書を書き、 某社から依頼された査読論文をプリントアウト。 生協食堂で昼食。 ガスパッチョと、鶏てり焼きと、お漬物セットと、玄米御飯。 この統一感のなさが学食らしい。 12 時半から「情報理論」の講義。 今日もアンケートをとってから。 講義の内容は、情報経路の問題など。 隙間時間に三科目分のアンケート回収を事務に提出して、 平常点評価の記入用紙をもらい、 続いて、14 時 10 分から卒研ゼミS。 マルチンゲール理論のつづき。 夕方、終了。少し事務をしてから帰る。 夕食は肉玉かけ蕎麦。 夜は、カポーティの「草の竪琴」(大澤薫訳/新潮文庫)を読み返す。

Wednesday, July 04, 2007

problemists

7 時半起床。小雨が降っている。 珈琲を飲んですぐに出勤。 午前中は修士ゼミ。マルチンゲール不等式、Doob の上向き横断数定理など。 生協食堂で昼食。 続いて、12 時半から「シミュレーション技法」の講義。 今日も学生アンケートを取る。 以前は一科目だけだったのに、またいつからか全科目取るようになったようだ。 「大学教育開発支援センター」っていつの間にできたのかなあ… パーキンソンの法則について、しばし思いを馳せる。 今日は待ち行列の理論へのイントロ。Poisson 過程など。 研究室に戻って、大学院を受験する学生の作文を見てあげたり、 あれこれ雑務をしているうちに、16 時から学科会議。 無事に 18 時までに終わった。 会議の結果を受けての雑用がもう少しあるが、 今夜は重要な予定があるので、もう帰ります。

と言うのは、 シンポジウムで京都に来ているチェス友達の数学者兼、詰将棋作家 S さん、 そしてナボコフ研究家・翻訳者、詰将棋・プロブレム作家、 世界的ソルバーの W 島先生と、これから夕食をご一緒する予定。 何だか、私はお邪魔なのでは、と言う気がするが、 こういう贅沢な機会を逃してはなるまい。

SF 二本建て

7 時 50 分起床。ゴミ出しして、珈琲。 昼食用のサンドウィッチを作る傍ら、 期限切れ危うしの豚肉を醤油だれで焼いて、身支度して出勤。 今日も京都駅で電車が遅れ、ホームは鈴なり。 あまりに頻繁に遅れるため、 マージンをとって常に一本早いものに乗るようにしている。 おかげで今のところ、職務に遅れたことはない。 電車は寿司詰め、バスも満員。人の多さに自殺したくなった。 こういうのを何と言うんだっけ…まず隗より始めよ? ちょっと違うか。

午前は卒研ゼミI。フェルマー=パスカル書簡の問題、 ホイヘンスの問題など。 20 分間の昼休憩の間に、サンドウィッチの昼食をとって、 12 時 30 分より「暗号理論」の講義。 Shannon の完全守秘性と、その同値条件など。 続いて、14 時 10 分より卒研ゼミF。ランダムウォークの到達時間、 鏡像原理など。 生協書籍部に注文していた本を受け取りに行く。 「クレィドゥ・ザ・スカイ」(森博嗣/中央公論新社)。 今回の引用はカポーティか…今まで好きな作家でなかったことがほとんどない。 新刊の書棚で、私の憧れの女性、 リサ・ランドールの一般書の翻訳が出ているのを発見。 つい一年ほど前に原書を買って、すぐに読もうと思ってまだ寝室の書棚に置いたまま。 こういうときに、翻訳を買うかどうか凄く悩む。 買って日本語で読めばすぐ読めそうだが、 何かに負けた気がする。己れに、だろうか。

研究室に戻る。 某社から無線通信関係の論文の査読の依頼があったので、 メイルでその対応など。 一時間ほど研究室で「クレィドゥ・ザ・スカイ」を読んで、 17 時半から数理ファイナンスセミナ特別編。 H 大学の F 先生によるゼータ関数の特殊値の確率論的アプローチの話、 外留先のフランスより一時帰国中(?)の同僚 O 先生の確率過程の ボラティリティ推定の話、の二本建て。 まさにこれが、Stochastic Finance double feature と言うやつか。 セミナ終了後、両先生を囲んで確率論系スタッフ、 院生たちと南草津駅近くの北海道料理屋(?)で食事会。 終電近くにまでなって、今帰宅。

Monday, July 02, 2007

「チェスと私」 / コルク栓

9 時起床。珈琲を飲んでから、朝の作業開始。 昼食は豚丼。 JCA 機関誌に「チェスと私」と言う小さな記事の寄稿を頼まれたので、 午後はその原稿書き。 第一稿が出来たので、一旦頭を空にするために近所に買い物に行く。 ワイン屋でオリーヴオイルなどを買い、 スーパーでサンドウィッチの食材を買い、 タリーズで珈琲豆を買い、 ドラッグハウスでクレラップを買って(私はクレラップ派)、帰宅。 原稿の推敲作業。 夕食は鶏レバのソースのスパゲティ。 赤ワイン(マシャレッリ、ヴィラ・ジェンマ 1999)を一杯だけ。 食後に濃くいれた珈琲。

今日の組み合わせは計画通り完璧かと思っていたが、 ワインの栓が一番下の方で折れて、コルク屑だらけに(泣)。 こんなことは滅多にないのだが… む、そう言えば某ワイン系αブロガ P さんも、 同じことを書いていたような。たった二例だけど、 ひょっとしてコルクが脆いワインなのでは、と思ったりして。 味自体は濃厚なレバ・ソースにも負けない立派な美味しさでした。 好みのタイプではないが、 多分、私が普段飲むクラスのワインじゃないな。 (うーん、今日はワイン・ブログみたいじゃない?)

食後は明日のゴミ出しの準備などして、 一杯だけ飲んだアルコールを飛ばす。 多分これからお風呂に入ったあと、再度、推敲作業。 また数日の冷却期間を置いてから、 週末あたりに最後の推敲をしてメイルで提出する予定。

Sunday, July 01, 2007

行列

7 月です。11 時起床(あらら)。曇り空。気温も低い。 珈琲を飲んで、通信チェスの手を考える。 第一回の JCCA ウェブチェス・オープンチャンピオンシップに参戦中。 今日が公式の開始日なのに、もう終わっている対局があって驚いた (対戦表)。 昼食は昨日作った北京酢豚の残りに野菜のあんかけを作って、 パイコー飯風のものを作ってみた。

昼食後、寝室で妻に腕枕をしながら少し昼寝。 彼女の寝言がうるさくて 30 分ほど、うとうとしただけだった。 意外にも、私の観察によれば彼女も夢を見るようだ。 大抵なにか美味しいものを食べている夢らしく、 目が覚めるとがっかりした顔をする。いや、本当。 驚かれるかも知れないが、猫にも表情があるのだ。 午後は講義の予習。後、三週間、頑張ろう。 「シミュレーション技法」の講義の準備がけっこう面白い。 今日は「待ち行列」のところ。マトリクスのことではなくて、 スーパーや銀行窓口なんかで並ぶあの行列の数学的性質を研究する分野。 応用数学って新鮮。

映画「羊たちの沈黙」から、 レクター博士とクラリスの対話シーンだけを抜き出して mp3 に落としたものを ZenNeeon で聞きながら、 洗い物、さらに夕食の支度。 最後の対話シーンの "People will say we are in love..." のあたりから、 博士がクラリスに檻の柵越しにファイルを返す、 別れの場面が好き。 御飯を炊いて、レバ韮炒めと冷奴。