Thursday, August 31, 2006

青唐辛子

出勤。 キャンパスのバス停が随分と綺麗な建物に変わっていた。 箱物にお金を使うのは簡単だな。 それはそれとして、私は今日もばりばりと業務に励む。 夜にはぐったりとして、 ああ、あのおむすびおいしゅうございました、 啓介はもう走れません…、 などとつぶやきつつ、ふらふらとしながら、帰宅。 もう夕食を自分で作る気力がなく、 近所のバーに食事に行く。 万願寺唐辛子と牛、豚、鶏肉三種のミンチのキッシュ、 リードボーのソテー、白トリュフのホワイトソースに、 つけあわせは伏見唐辛子、茄子、エリンギ、小玉葱。 前も伏見唐辛子でしたよね、とシェフに言われたが、 季節だからね。やはり季節のものが一番美味しい。 最後にウォッシュタイプのチーズをもらって、 デザートワインを一杯飲んで帰る。

Wednesday, August 30, 2006

正調ベーコンエッグ

午後の早い時間に京都に帰ってくる。 今日も京都は日射し激しく、残暑が厳しい。 明日はキャンパスに出勤しての業務があるので、 今日の午後と夜はゆっくり休養する。 夕食は御飯を炊いて、 納豆、ベーコンエッグ、伏見唐辛子の味噌汁など、 朝食のようなメニュ。 何事にも正調と言うものがあって、 ベーコンエッグにも正しいベーコンエッグがあり、 フライパンに丁度 4 枚のベーコンを正方形の四辺のように並べて、 その中に卵を一つなり二つ、割り落として焼くのだ、 と聞いたことがある。 しかし、私の正統派のイメージは、 皿の幅くらいの長さのかりかりに焼いたベーコンが 2 切れ、 それとは別に卵 2 個の目玉焼きが横についている、 と言うものなので、 その正方形派は何だか奇妙な気がしてしようがない。 四角四面のベーコンエッグって何だか変じゃない?

旅先には重量の関係で、 普段使っているものではない、 小型のノートブック PC を持っていくことにしている。 すると、いつもと環境が違うので作業がし難い。 例えば、私は普段、日本語入力に SKK と言う非常に癖のあるシステムを使っているので、 これがインストールされていないと、 文章を書くのが大変なストレスになる。 出張用の PC にも一通り同じ環境を用意しておこう、 と毎回毎回、帰宅すると思うのだが、 そう思っている内に次の出張になる。

Tuesday, August 29, 2006

SBUX マッチ

所要で新幹線で西方へ出張。 ついでに、現地の大学に勤める S さんと会う。 S さんは代数幾何学を専門とする数学者で、詰将棋作家でもある。 さらに、チェス・プロブレムの愛好者であり、 難曲を好んで弾くアマチュアのピアニストでもある。 S さんはもうすぐスウェーデンの研究所に旅立たれるので、 その餞別にシャンパンのハーフボトルをさしあげるのと、 ついでにチェスの初対局をするのが目的。 お借りしていた CD を返却するのも大目的だったが、 朝テーブルの上に忘れてきてしまった。 スターバックスのチェス盤模様のテーブルを使って、世紀のマッチ S.-Hara 戦。 一局目、時間制限なし。黒番、マーシャル・アタック。20 手ほどであっさり勝ち。 看寿賞作家とは言え、 OTB が初めてと言うならこんなものかな、と思いつつ、次は持ち時間制限をつけて第二局。 20 分プラス一手毎に 10 秒、白番。イングリッシュ・オープニング。 序盤で 1 ピース獲った上に、Q サイドはがたがた、もう勝ったも同然、 と思って漫然と指していたら、そこからが強かった。 ひょっとして一局目も含め、ここまで全部がギャンビットだったのだろうか、 次々と華麗な攻撃が続く。 難しくなってからお互い時間がなくなって、あわわわわ、まさか負けるなんて、 と慌てている内にばたばたと詰められてしまった。さすが詰将棋作家。 そういうわけで、一勝一敗。次回の雪辱戦を楽しみにしています。

Monday, August 28, 2006

deadlock

8 時起床。 午前中から数学を考える。 数日解けなかった小さな問題が解けた。 なんとなく対数をとってみたら突然出来て、 ポリ・ガンマ関数と言うものはこういうためにあるのだったか、 と感心した。とは言え、とても小さな問題なので、 今日は後退はしなかった、と言う程度の意味しかない。 しかし、その先にはデッドロックが待っていて、午後の早い時間で座礁。 ちなみにこのデッドロックの言葉の使い方は誤用であるか、 または、駄洒落ですね。それはいいんだけれども、 うーん、方針を考え直す必要ありか。 つまり全面的に後退。がっくり。 大学院の入試問題の種が出来たとでも思おう。

昼食は豚丼を作った。 白ワインの残りをちょっと使ってみたら、 酸味が爽やかでなかなかいい感じ。 夕方、近所のワイン屋などに買い出しに行き、 夕食は温かい野菜のサラダと素麺を作った。 "Problem Paradise" の最新号が届いていた。 今回のヘルプメイトはなかなか楽しそう。

Sunday, August 27, 2006

米粒を数える

9 時起床。今日もまたいい天気だ。 やや、夜には涼しい風を感じるようになってはきたが、 まだまだ暑い。亜熱帯だ。 私は緑の丘にしっとりと小雨がそぼ降る、 と言った感じの風情が好きなのだがなあ。 昼食は、エリンギとオクラのサラダ、 炒飯を作って食べた。 食後は少し昼寝をして、午後は数学を考える。 外は今日の午後も激しい夕立。 夕食は御飯を炊いて、一汁一菜。

昨夜、突然携帯電話が鳴った。 私の携帯電話の番号を知る人間は非常に限られていて、 しかも、その人たちは私が携帯電話を携帯していないことも知っているので、 とても珍しいことだ。電話に出ると、この前の 6 月に結婚した、 某 A 社の誇る天才プログラマ K 氏だ。 何事かと思えば、米一合には米粒が幾つ含まれているか、と尋く。

かつて私が某 A 社に勤めていて K 氏とは同室の同僚だった頃、 K 氏が閑なときには、 一緒に飲みに行っては清談を交すのが習慣だった(私は常に閑だったし)。 そんなある夜、色々な量を暗算で出来るだけ正確に評価する、 と言う遊びをしていて、米一合に米粒がいくつあるか、という問題を私が出した。 その時の答は忘れてしまったが、その数年後、K 氏はたまたま、 その正確な実験がテレビで実演されるのを観たそうで、 メイルで正解を送ってくれたことがあった。 そして、今、夜中にわざわざ私の携帯電話を鳴らして、 「そのときのメイル検索できない?」と言っているわけだ。 何でも今、バーだかにいて、そのクイズに答えられると賞品がもらえるのだ、 とか「事情」を説明していた。呑気なものだ。 生憎、急には無理だ、と答えると、 「じゃ、またー」と電話を切ってしまった。 実に簡潔な電話ではあったが、 アルコールの血中濃度や、新婚特有のユーフォリアのせいだろう、 発声の全体にいつどこで「ヤッホー」とか、 かけ声が入っても不思議のない陽気さだった。 幸せそうで結構なことだ。

そう言えばその K 氏と、 いかにもありそうだけど実際はない化学物質の名前を考える、 と言う遊びを考えたこともあった。 これが金賞だろう、と二人で大笑いしたのが「パラペン」だったのだが、 これは後で、実在することが判明して、また大笑いしたことであった。 思えば、いい時代であったよなあ。

Saturday, August 26, 2006

甘長唐辛子

完全に休日。 働く日には過酷に働き、休む日には容赦なく休む。 近代的工法によって依頼の三分の二の工期で紀ノ川に橋をかけ、 その有能と献身で市民を瞠目せしめたのも我が一族だったが、 その後から現在に至る一世紀以上に渡って、 何もしていないのも我が一族だ。 やる時にはやるし、やれない時にはやれない。 または、落日はいつも哀しいものだ。 朝は 10 時頃に目覚めた。今日も雲一つない快晴で、 外は暑そうだ。 良く寝たので疲れもかなり取れたらしい。 眠りのことを、疲れ倦みし者の甘美なる癒し手、 と詠ったのはシェイクスピアだったかな、 それとも、出エジプト記だったかな…。 私の古典の知識のかなりの部分は、 P.G.ウッドハウスから得ているので、 どれだけ間違えているのか見当もつかない。

朝食の珈琲と林檎ジュースを飲み、 洗濯機で洗濯の一方で、午前中からお風呂に入る。 日の差す白い湯船の中で越路吹雪ばりに「愛の讃歌」を絶唱したりして、 お風呂から上がるともう昼食の時間だ。 風呂上がりの一杯兼食前酒にマティーニを作って飲み、 少し元気をつけてから、昼食の準備。 昼食にはマリナーラソースを作って、 激辛のスパゲティ・アラビアータにしてワインと食す。 午後は、 ツーナイツ・ディフェンスのトリッキーなラインを並べたり、読書したり。 激しい夕立があった。 夕食は御飯を炊いて、 エリンギ、伏見の甘長唐辛子などの炒めもの、冷奴など。 昨日、バーで甘長唐辛子が美味しかったので。 夜も時折、雷鳴が聞こえる。

Friday, August 25, 2006

夕刻のバー

今日も白熱のキャンパスに出勤。 午後は少し会議など。 今日は早く帰れた。 でも、夕食を作る元気はなく、 ふらふらとしながら歩いて近所のバーへ。 テタンジェを一杯、 アスパラガスとトマトと鶏ミンチのキッシュ、 子羊のロースト。 キッシュにはブルゴーニュ産のウォッシュ・タイプのチーズが使われていて、 ぐっと印象的な豊かな味わいに仕上がっていたし、 ローストは付け合わせの伏見の甘長唐辛子が美味しかった。 やはり金曜の夜はかなり賑やかで、 商売繁盛のようだ。

今日は少し遅かったが、私は早い時間のバーが好きだ。 夜はまだ始まったばかりで、 夏だとまだ外には夕方の気配が漂っている。 夜はまだ私のように、と言うにはもう年を取り過ぎたが、 若く青い。 客は自分一人だけで、 グラスは整然と並んで皆、汚れなくぴかぴかに光っていて、 バーのカウンタは水を打ったように清潔で、 バーテンダはまだどこも着崩れていない白と黒の衣装をし、 ネクタイの結び目を直したりしている。 天国の入口はきっと、こんな感じなんじゃないか、と思う。

Thursday, August 24, 2006

マラルメの夏

朝から晩まで働いた。 マラルメだったろうか、 ある詩人は一夏を過酷に働いたと言う。 愛する幼い姪の記念日に仔馬を贈るために。 仔馬じゃなくてヨットだったかな、 いや、仔馬とヨットだったかも。 それに比べて私の労働は、 嗚呼、何とぱさぱさとして、味気ないことであろう。 花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき、 と林芙美子の一節をつぶやきながら、 夕闇迫る灼熱のキャンパスから、 こんな夏休みの日にまで満員のバスに乗って帰る。 満員の通勤バスほど、詩から遠いものがあるだろうか。

私にとっての、姪への贈り物とは何なのだろう…

Wednesday, August 23, 2006

灼熱のキャンパス

久しぶりに灼熱地獄のキャンパスに出勤。眩しい。 夜 7 時まで休むことなく働き抜いた。 生協食堂でわびしく夕食。 明日も朝から、ばりばり働く予定。

Wikipedia の伊藤先生の項目を読むに、 おそらく数学畑ではない方が書かれたようだ。 「伊藤の公式」のことを「伊藤の補題」と書いていることからして、多分、 数理経済学方面と思われる。 Wikipedia での学者の名前の項目は、 時々ちょっと変で、 「○○○(偉い人)が駆け寄って握手を求めた」とか、 「講演を聴いていた○○○(有名な学者)が、ひっくり返った」とか、 どうでもいい逸話が書いてあったりする。 前向きに評価すれば、 その人物がどれくらい偉いかの気分を専門外の人にも伝えよう、 という努力の表れなのだろうけれど、 もっと本質的な情報を書いてくれないと、 真面目な百科事典としては使い難い。

Tuesday, August 22, 2006

ガウス賞

ニュース: 伊藤清 先生が第一回のガウス賞を受賞されました。 こちら は asahi.com の記事。 確率論の末席の末席を汚す身の私としても、嬉しい限り。 他の分野の方からは身贔屓と言われるかも知れないけれど、 ガウスの名を冠した賞の受賞者、 しかも第一回の受賞者に相応しいと思います。 多分、この受賞者決定はとても易しかったはず。

雷と猫

9 時起床。今日も暑い。 昼食にはカルボナーラを作った。 食後すぐくらいに急に外が暗くなり、 激しい雷と夕立。 稲妻と雷鳴の間隔からして、ごく近い。 犬は大抵、雷をとても怖がるものだが、 猫は雷を気にしないようだ。 うちのクロが鈍感なだけかも知れないが。 午後は数学を考えたり。 夕食は御飯を炊いて粗食。

ロシア語専門書店の 「ナウカ書店」 が破産。 専門書店にも厳しい時代らしい。

Monday, August 21, 2006

自明

8 時起床。 今日から個人的に夏休みは終了で、通常営業モードに戻す。 しかし、日中は寝ないで起きているのがやっと。 よっこらしょ、と数学を考え始めたが、 ああ、そういうことをしていたっけなあ、と思い出す程度。 夏休み前から雑用が忙し過ぎて、 自分の数学にはほとんど手をつけていなかったので、 二ヶ月ぶりくらいの感じ。 ちょっと勘が取り戻せてきたくらいで、 勿論、何の進展もなし。強いて言えば、 一年生程度の解析的不等式を一つ、かなり時間をかけて証明した。 しかし、昔のノートを見たら、前にも同じことを証明していて、 その余白に自分で「自明」と書いてあった。 郵便局に用があったので外出したが、すごい熱波。 それ以外は家に籠って、外にも出ず、誰とも話さず。 夕食は素麺。最後の穴子を使ったりして、 ちょっと具に凝ってみたが素麺は素麺。

昨日の夜、執事と先月分の給与端数を賭けたチェス。 20 分プラス一手毎に 10 秒、黒番、ヴィエナ・ゲーム。 ちょっと攻め切れずにもたついたが、 相手のポカでキング前のポーンが崩れ、 タイムトラブルにも乗じて一気に勝ち。

Sunday, August 20, 2006

夏休みの猫

10 時近くまで寝てしまった。 カーテンを開けると目が痛いほどの眩しさ。 外は今日も 35 度を越えそうだ。 体調はまだ今一つ。読書などしている内に昼食。 穴子の残りを芯にしてだし巻き卵、つまり、 鰻巻きならぬア巻き(?)を作った。 他に冷奴、沢庵、若芽の味噌汁で、冷や御飯を食べる。 食後、少し横になる。猫のような日々だ。 明日から本当に復帰できるのかしらん…

夕方になって少しは気温が下がってから、 近所のワイン屋さんに今月の頒布会のシャルドネを受け取りに行く。 夕食は、納豆と豆腐のパスタで、 昨日開けたリースリングを一杯。 夜は Smyslov の棋譜を並べながら、 とても久しぶりにグールドの弾くブラームスの間奏曲集を聴く。 いい演奏だ。 しかし何故か動悸が激しくなってきたので、 同じ奏者のバッハに変えた。 もう少し年を取ったら、しんみりと聴けるようになるかなあ。

Saturday, August 19, 2006

幸福について

そろそろ数学を考えたくなってきたが、月曜日まで我慢しよう。 今日も私の基準では「早朝」に起きて、 午前中は珈琲とジュースの朝食をとってから、読書。 昨日に続いて、G.K.チェスタトンの「木曜の男」を読む。読了。 うーむ、やはりチェスタトンは詩人であり、同時に画家だ。 私の持っている創元推理文庫版のこの本は 1981 年に刷られたもので、 ほとんど四半世紀所有してきたが、 なんと昨日まで翻訳者は福田恆存だと信じ切っていた。実際は吉田健一。

昼食は昨日作っておいたペスト・ジェノヴェーゼでバジルのソースのスパゲティと、 パセリのオムレツ。 本当はスパゲティでなく、リングィーネを使うのが正しいらしい。 こういうお決まりみたいなものは大抵が、 理由が分からなくても必ずそれが一番なものだ。 料理には、なるほどそういう理由か、と納得するようなことも沢山あるが (例えば、バジル・ソースと茹でたパスタはボウルで混ぜましょう、 何故ならこのソースは加熱すると分離し、 また香りも損なわれるからです)、 一方では、何故そうなのか良く分からないこともある。 思うに、伝承のレシピは、 美味しさと言うあやふやでわけの分からないものに対する、 試行錯誤の末に濾過された解答なので、 時に、ロジックで支えられた一般論とは無縁なのだろう。

午後も読書。 「幸福について」(ショーペンハウアー著/橋本文夫訳/新潮文庫)。 夕食には、鰻ざく風に調理した出来合いの穴子を使って、 散らし寿司を作った。 酢飯が冷める間に、お風呂に入る。 お風呂から上がって、 昨日近所のワイン屋さんのセールで買った、 マルセル・ダイスのリースリングを一杯だけ。 その後、穴子散らしの夕食。食後はチェスの勉強を少し。

Friday, August 18, 2006

オクラ (okra)

私の基準では「早朝」に、 amazon から宅急便で本が届いたおかげで、早起き。 まだ本調子とは言えないが、かなり回復してきた。 今日から三日間、完全オフにしよう。

まず、「木曜の男」(G.K.チェスタトン著/吉田健一訳/創元推理文庫) を読むことにする。何度読んでも面白い。 昼食は、久しぶりに御飯を炊いて、 オクラの味噌汁と卵、納豆などの粗食。 しみじみ。お箸の国の人だもの。 オクラって美味しいな…。 確か、オクラってロシア語だったっけ? それはイクラ? 食後は、少し猫と午睡してから、 午後も読書をし、お風呂に入った。 この体調では、湯船でアルコールを飲むのは危険なので、 ピンク・グレープフルーツのジュース。 夕方、涼しくなってきてから、買い出しに行く。 近所のワイン屋さんでイギリスのスパークリングなどを買い、 その近くのスーパーであれこれ食材を買い求めて帰る。 夕食には、オムライスを作った。 片付けのついでに、 明日のためにペスト・ジェノヴェーゼを作りおく。

夜は少しチェロを弾く。ロングトーン、スケール、メカニックのあと、 「G 線上のアリア」。 G 線と言うけれど、チェロでは A と D 線上で弾く。 さっぱり弾けなくなっているなあ。 でもチェロの良いところは、ロングトーンを弾いているだけで、 心が休まることだ。

Thursday, August 17, 2006

夜と朝のような青と白

まだ復調に至らず。 午前中は、風邪かなと思ったほどだった。 昼食もやむなく外食で済ませ、午後も昼寝。 午睡の範囲を越えた長い睡眠で、しかも悪夢を見た。 夕方、暗くなる頃に目覚める。今日はもう外出したくなかったが、 猫の餌がなくなっていたので、やむを得ず、西友まで買い出し。 ついでに食材も少し買って、夜はオクラのパスタを作ってみた。 冷えた白ワインを一緒に少しだけ。 疲れているときは酸味が身体に染み入るようで、ありがたい。 食後に珈琲。明日には復帰できそう。

他人の夢の話ほどつまらないものはないのに、 何故か自分が見た夢の話はしたくなる。 私は、夢に深い意味があるとは思わない。 例えば、本人の隠された欲望を反映しているなどとは、 まるで信じていない。 と言うのも、私が見る夢はほとんど自明で、 最近の出来事や目にした文章が単に (非論理的な文脈で)ミックスされているだけなのだ。 一度くらいはフロイトが症例として挙げたような、 巧妙精緻な夢を見たいものだが。 こんな夢を見た。

7 は孤独な数です、孤独を知る者は、泣きません。 そうですか、僕は 9 が好きです。 そんなことを話しながら、私は真賀田博士らしき女性とチェスをしていた。 3 が好きだと言う人も知っています、と言うと、 まあ先生、なんてことでしょう、と彼女が怒ったように言う。 チェス盤は青と白、駒の色も青と白だった。 彼女は黒々とした瞳をして、不気味なほど色白で、 薄緑色のサマードレスを着ていた。 両手は二匹の小さな白い蜘蛛のようだった。 序盤早々で、7 手目だったかも知れないが、 必然的にほとんど全ての駒を交換せざるを得なくなり、 残りは盤面に散ったポーン以外には、 ビショップとナイトだけになっていた。 とても難しいエンドゲームで、どうしても先が見えない。 悩んだ末の決断でビショップを動かすと、 彼女は 1 ナノ秒も考えることなく、 ほとんど私と同時にナイトを動かし、 そうすると、先程と全く同じ盤面になっている。 これが延々と、いつまでも、いつまでも、繰り返される。 彼女は両手を、テーブルに全部の爪を立てるように、 チェス盤の前に揃えて置いていて、 感情のない目でこちらをじっと見つめていた。

Wednesday, August 16, 2006

YouTube

10 時頃、目が覚めた。 しかし、まだかなり疲れが残っている。 午前中は洗濯などして、ぼんやり。 天才プログラマの K 氏からメイル。 この前の結婚式のヴィデオ映像が、 YouTube で送られてきていた。うーん、時代だなあ。 昼食を作る元気もなく、近所の定食屋さん。 午後も起きていられずに昼寝。 トーナメント中は気持ちが張っていたので、 何とか持ち堪えていたが、 昨日の帰りの新幹線の中では、 座席に座ったらもう目も開けていられないほどだった。 昨夜バーで食事したときも、いつ眠り込んでも不思議なかったくらい (バーで寝る、いや瞑想に入る、剛の者もいるらしいが…)。 最近、対面対局を始めて思うに、 チェスはやはりスポーツの一種だ。 近いのはテニスとボクシングだと思う。 夕方、日の出ている内にお風呂に入る。 日の高い内にお風呂に入ると特にリラックスする。 湯船に日射しが入ることがポイントだろうか。 夕食もまともな料理をする気になれず、素麺。

夜、自分の棋譜の整理をちょっと始めてみたら、 我ながら凡手、悪手のオンパレードに憂鬱になった。 左図は唯一の勝局、 X. (1785, FIDE1972) vs. Hara (1574) より、 白 19. Rhf1? の直後。 確かにポカが出やすいムードだった。 対し黒は、19. ... c3! のポーン突き捨て。 逆に言えば、白は 19. c3 と先んじれば問題なかったし、 守らなくても 19. Ref1 と逆側の R を運んでいても良かった。 白も、ああしまった、と思ったのだろう、 ブランダーがブランダーを呼び、20. Qd3??. えっ、と思ったが、よくよく読み直して、 20. ... Qxb2+ 21. Kd1 Bb5 22. Bc1 Bxd3 23. Bxb2 cxb2 24. Kd2 Bxf1 と一直線で黒勝ち。 普通の応手は 20. bxc3 か 20. Qxc3 だろうが、 前者は Ba3+, Qb2, Rc8, Bb5 などで勝ち、 後者は Bb4 から勝ち、と思っていた。 しかし、今になって考えてみると、 黒有利ではあるものの、そう簡単ではない。 多分、実力差と心理的効果からして、その後は負けていたかも。 でも一方では、その時にきちんと読んでいたら、c3 を指せただろうか。 そう思うと、チェスはルール上は偶然がないゲームであるとは言え、 実際はかなり運の要素があるように思う。

Tuesday, August 15, 2006

最終ラウンド (2.0) + 0 = 2.0

ジャパン・リーグ、終了。 勿論、優勝はヒカル・ナカムラで、ストレートの 7.0 ポイント。 次点は今回レイティング2位の IM と、 日本チャンピオンの K 君となって、極めて妥当な結果。 ただ野次馬的に言えば、 K 君はもっと強敵とぶつかって欲しかった。 結局、昨日挙げた二人はナカムラと対局することはなかったが、 他の日本のエースたちが戦い、良い経験を得ただろう。 特に優勝の感想の中でナカムラは、 印象的だったプレイヤーとして、 日本チャンピオン K 君の他に、 対局した I 崎さんの名前を挙げていた。 ちなみに、A クラスの方も極めて妥当な入賞者たちで、 Z スイス式ってある意味すごい。 やや、「メイクアップ」ぽい気がしないでもないが…

さて、私の最終日、最終ラウンド。 ここまでのポイントは 2.0 でさっぱりだと思っていたが、 A クラスはオープンから叩かれたせいで、 最終ラウンドを勝てば 3.0 でも、 他の選手の成績次第でA クラス三位に入賞の可能性もあることに気付いた。 そして、最終局は私より 100 ほど高いレイティングを相手に白番。 丁度いい感じだ。よしやるぞ、と思っているところに、 対戦組に間違いがあったようで、組み直し。 そして訂正後の私の最終ラウンドの相手は、 通信チェスの超強豪、ICCF の SM タイトルを持つ O さん。 しかも私の黒番。私の夏は終わった…、と思ったが、 気持ちを入れ変えて対局開始。 O さん得意の某マイナーなオープニング。 この定跡を昨夜チェックすることもできたのに、と思う。 私は序盤、中盤と防戦一方のように思っていた。 そして、中盤の終わり頃、こちらのブランダーで R を B と交換され、 その後も随分と頑張ったが、結局挽回のチャンスなく 1-0 で負け。 この結果、 O さんは 1 ポイントを得て合計 3.5 ポイント、 三人同率で A クラス優勝された。うーむ、悔しい。 O さんに対局後の検討につきあっていただく。 それによると、序盤、悪い悪いと思っていたのが、 実はかなりうまく指せていたようだ。 そもそもオフビートな序盤戦術なので、 普通に指していれば黒はそう悪くならない。 しかも、中盤ではポーンのただ取りを二度も見逃していた。 正確に言えば、気付いていたが 取るのは良くないと判断したのが実は全く大丈夫で、 単に白のブランダーだったようだ。 また、私の方から強い人なら絶対にしないだろう、 明らかに不利な B-N 駒交換しているのも、 弁解の余地なし。 勿論、力の差は随分あるとは言え、もっといい勝負が出来たはずなのに。 通信チェスでの O さんの圧倒的な強さを知っているだけに、 勝つのに精神的なバリヤーがあるのかも知れないなあ。

そして、夕方遅くから、ナカムラによる同時対局。 私は参加していると帰れなくなりそうなので、 残念ながら不参加。誰か勝てたかなあ。 明日からのベンコーの講習会に出たいが、 流石にそんなに東京に泊まり続ける余裕がない。 夕方の新幹線に乗って、夜に帰宅。お風呂も入ったし、 さて、近所のバーに慰労を兼ねた食事にでも行くかな。

Monday, August 14, 2006

三日目 (1.5) + 1/2 + 0 = 2.0

トーナメントの三日目が終了して、 ナカムラは勿論、6 連勝の 6.0 ポイント。 レイティング 2 位の IM と、3 位の選手も楽々と下し、流石の実力差。 日本チャンピオン K 君、 GM の大器と噂される N 君の高校生コンビとの日米対決が期待されていたが、 今日までのところはなし。 残るは明日の最終日の 第 7 ラウンドを残すのみで、 実現の可能性は低そう。 Z スイス式を良く理解していないので、ひょっとするかも。 ところで、夕方遅くに見かけない外国人が現れ、ふらふらと観戦していたので誰かと思ったら、 水曜から講習会をする予定の GM パル・ベンコー (Pal Benko) だった。 かなり若く見えるので、なかなか気付かなかった。 しかし、エンドゲームの大家として知られるベンコーに、 必敗の終盤をだらだらと続けているところを、 まじまじと見られ、とても気持ちが悪かった。 むしろ、「くすっ」とか笑ってくれた方が気が休まる。 いや、今回はね、絶対投了しない、って決めてるんです。 私だって何の希望もないってことくらいは分かってるんです、 もう投げたい気持ちで一杯なんです、と説明したいくらいだった。

今日の私の午前第一局目、第 5 ラウンド。 JCA レイティング 1800 台半ば(FIDE レイティング 2000 強) の強敵を相手に黒番。 今までの対局相手の中で最も高いレイティング。 序盤、中盤と押され気味ながら、 タクティカルに難しい局面を切り抜け、 終盤は 1 ポーンダウンのビショップ vs. ナイトのエンドゲーム。 全体で、3 時間 40 分に及ぶ激闘の末にお互い残り 1 分程度を残し、 ドロー合意。 お互いにドローのポジションをキープするのは容易だが、 勝ちに行くのが危険、と言う形だった。 中盤から常に相手の方に勝つチャンスがあり、 力から言えば私の負けが当然だったが、 私の方に運があったのだろう。何とか 0.5 ポイントを得た。 頭を激しく使うと、足が疲れる。何故だろう? サンドウィッチをあわてて食べて、16 時から第 6 ラウンド。 さらに最高レイティングを更新する対局相手。 レイティング 1900 台の強敵を相手に白番。 序盤で構想を誤り、中盤のブランダーで R と P + B を交換。 圧倒的に押し切られて、何の希望もないままそれぞれ複数ポーンと B + R vs. 2R の完敗エンドゲームに入る。 普段ならとうにリザインしているところだが、 失礼を承知の上で最後のチェックメイトまで指し切る。 結局、三日目を終えて、(1.5) + 1/2 + 0 = 2.0 ポイント。

初日第 1 ラウンドでも遥かに格上を倒し、 今日の第 5 ラウンドも遥かに格上に引き分け、 ひょっとして僕ってかなり強いじゃん、と勘違いし始めていたのだが、 やはりこの第 6 ラウンドで格の違いを感じた。 後で少し検討に付き合っていただいたのだが、 序盤理論の知識とか、読みの差と言うよりも、 チェスそのものへの理解の深さが違う。 やっぱりまだまだオープンクラスとは、 英語で言うところの「リーグが違う」なあ、と実感。 修行の道は遠い。

Sunday, August 13, 2006

二日目 (1.0) + 1/2 + 0 = 1.5

トーナメント二日目。 午前の一つめ、第三ラウンドはレイティングがずっと下で、 まだ仮レイティングの人を相手の黒番。 これは何が何でも勝たねば、と気合を入れるが、 いきなりいわゆるはめ手に大ハマリ。 序盤で 4 ポーンも落とした。しかし、そこから猛攻をかけ、 3 時間以上をフルに使った激闘の末にドローの 0.5 ポイントをもぎ取る。 昨日とは違って、3 時頃にあわててサンドウィッチの昼食をとって、 すぐに第 4 ラウンド。 今度は同じくらいのレイティングのベテラン。白番。 敵のブランダーで序盤に 1 ポーンアップ。 一気に盤面を単純化して、連結パスポーンを作り、もう楽勝のつもりでいた。 しかし、あれよあれよと言う間に 1 ポーンダウンのポーンエンドゲームになり、 あっさり負けてしまった。 最後に 4P + R vs. 5P + R のルークエンディングでドローにできるチャンスが あったのに、その時でもまだ勝てる気でいて、折角のルークを交換してしまった。 うう…、今日はいいところなし。 どう考えても、少なくとも、もう 0.5 ポイントは取れたはずだ。 悔やんでも悔やみ切れないので、悔やまないことにしよう。 今日の第 4 ラウンドまでで、通算 1.5 ポイント。 明日、気持を入れかえられば良いのだが。

私の戦績など、どうでもよろしいと言う方向けに。 ナカムラはもちろん、全勝。現在 4.0 ポイントで単独首位です。

Saturday, August 12, 2006

初日 1 + 0 = 1.0

午前からトーナメント、ジャパン・リーグ開催。 参加者は 40 人弱くらいで、 GM のヒカル・ナカムラ、IM も一人、 以下、日本チャンピオン始め強豪揃い。 クラス分けは、 予定より 100 高いレイティングを境に、 オープンと A クラスに分けられた。 オープンクラスは大体が皆、FIDE のレイティングも持っていて、 2000 点以上がほとんど。 A クラスですら、強豪やベテランが多い。 私のレイティングは前回から格段に上がって 1500 台になっていたが、 もちろん A クラス。 密かに A クラスで入賞を狙っていたのだが、これは厳しそうだ。

第一局、黒番。レイティング 1800 弱、 FIDE レイティング 2000 弱の強敵に勝つ。 序盤はかなり困ったが、何とか攻め手を作り、相手のブランダーで運良く勝った。 かなり早く終わったので、次まで三時間近く時間があり、 昼食のあと、近くのホテルに戻って少し仮眠。 16 時から第二局、白番。 今度は私とほとんど同じくらいのレイティングの相手。 この局ももらった、と思っていたのだが、 中盤に入ったところでミスをして、 さらにもう一つポカを指し、まるごと 1 ルークダウン。 今回は絶対に投了しないことを誓っているので、 とにかく容易に勝たせることだけはしないよう、 次々に問題や罠を作っては与え、実際にメイトされるまで指し続けた。 投了して勝った人間はいない。 続けていれば、 相手が信じられないようなポカを指すかも知れない。 確かに先に間違えたのはこちらだったが、 どんな単純な局面にも罠は口を開けて待っている。 さらに言えば、続けていれば、相手が体調を崩して倒れないとも限らない。 生憎、今回はそんな幸運には恵まれなかったが。 結局、初日は 1 + 0 = 1.0 ポイント。

Friday, August 11, 2006

モチベーション

モッツァレラのサンドウィッチを作って、朝食兼昼食。 午後、新幹線で東京に移動。 夕方、東京に着いて、会場近くのホテルに泊まる。

明日からのトーナメントは、 持ち時間が 90 分プラス一手毎に 30 秒追加、 対局は一日 2 局、最終日のみ 1 局の計 7 局で競われる。 対面の対局を始めて一年も経たない私には、 こういう長丁場のトーナメントはまだちょっと早い。 しかし、今年の後半はほとんど参加できそうにないし、 このあたりで本格的な競技会に出ておくのも勉強だろう、 と思ったので、思い切って参加してみることにした。 ポイントは、一日 6 時間も集中力を保てるのか、と言うところだが、 何とか最終日まで最善を尽したい。 今回はモチベーションが高いのだ。

Thursday, August 10, 2006

水牛の乳

今日も外は暑そうだ。でも、もう残暑なんですよね。 昼食は鶏レバのソースのスパゲティを作って食べる。 丁度、執事が近所の会社から昼休憩に現れて、 コンビニエンスストアの「サラダパスタ」 なる奇妙な食べ物を食べながら、 今日の夜は花火の青春イベントだ、と自慢して帰っていった。 どうも近頃ラブラブな模様で、 姿をあまり見かけないのは仕事が忙しいだけが理由ではないらしい。 ああそうですか青春ですか、ラブラブですか、と聞き流して、 明日からしばらく留守にするので、その間の猫の世話をお願いしておく。

夕方、少しは涼しくなっただろうと思って、買い出し。 しかし、表はまだ猛烈な蒸し暑さ。 近所のワイン屋さんに、注文していたモッツァレラ・チーズを取りに行く。 水牛のミルク 100 パーセントで出来ているそうだ。 夕食は、鶏レバの残りでレバ韮炒め、さらに炒飯を作り、 出来合いの焼き餃子もつけて、中華定食風。 夜は少しモッツァレラの味見。二切れほど厚くスライスする。 美味しい。ミルクがぎゅっと固まった感じ。 ヨーグルトのようだが、 塩分のせいか酸味よりもむしろ甘みが前に出ている。 一緒に買ったイタリアワインと供に味見できれば良かったのだが、 しかし生憎と禁酒中なので残念。 残りは明日の朝食のサンドウィッチの具にすべく、 スライスして水分を切り、冷蔵庫に保存。

明後日から四日間続くチェスのトーナメントのため、 明日の午後、東京に移動。 ホテルの通信環境が良ければ、通常通り更新します。 今回のトーナメントは、 ヒカル・ナカムラ が参加すると言うので、 珍しく、少々は、話題になっているようだ。

Wednesday, August 09, 2006

母子像(その二)

やはり疲れていたのだろう、良く寝た。 昼食はカレーの外食、 夕食は御飯を炊いて一汁一菜の粗食。

田舎の思想についての第二回。私が初めて中学校に登校した日のこと、 母がお弁当を持たせてくれた。 しかし、初日だったので、午前中だけで行事が済んでしまい、 学校で食べる機会はなかった。 私はお弁当を持ってそのまま帰ることになったのだが、 持って帰って家で食べるのはちょっとどうかな、 と思ったので、駅のホームで食べることにした。 学校までは電車二本を乗り継いで通うので、 乗り換え駅でかなりの待ち時間がある。 その駅のプラットホームのベンチでお弁当を開いて、 昼食をとったわけだ。 時は春、私はほのぼのとした気持ちで、食事を楽しんだ。 家に到着すると、弁当は食べてきたのか、 と母が尋くので、私は、学校は早く済んだから駅のホームで食べてきた、 と屈託なく答えた。 母はそれを聞いて驚愕した。私は母の狼狽するのを見て、 これは何か誤解があったに違いないと思い、 再度、お弁当を食べたときの様子を繰り返した。 しかし、母はそのこと自体にショックを受けていたのだ。 母は特に私を叱るではなかったが、 その後、何年経っても、私がすっかり大人になっても、 このときの衝撃が忘れられないらしく、 時々このことを回想しては、 御前は昔から大胆なところのある子だった、と言う。 再び、ほとんどの方には、解説が必要だろう。 田舎の人にとっては、「駅」と言う場所は、 はっきりと公的の空間であって、 そんなところで自分の家から持ってきた弁当を大勢の人前で食べる、 などと言うことはあり得ないのだ。 これは旅の車中で駅弁を買って食べることとは、 根本的に違う(らしい)。

お報せ: Blogger のメンテナンスのため、 太平洋夏時間の 9 日 4:00PM から 45 分間アクセスができなくなるそうです。 太平洋標準時(Pacific Standard Time, PST) はグリニッジ標準時より 8 時間遅れており、 さらに太平洋夏時間(Pacific Daylight time, PDT) はそのサマータイムなので一時間進んでいる。 では、PDT の 4:00PM は日本時間で何時でしょう?

Tuesday, August 08, 2006

湯船で桃の朝食

ホテルでゆっくり寝て、朝風呂に入り、 冷蔵庫で冷やしたおいた桃を湯船で食べる。 ナイフの類もないので、 指で皮を適当に剥きながら、そのまま行儀悪く齧りつき、 指と顎を濡らしながら、わしゅわしゅと食べる。 昨日、バーテンダが、 この桃は皮も食べられるし、種のすぐ近くでもえぐ味がない、 と、相変わらず目を合わせずに、 天井の隅のスピーカや、 私の胸のあたりを見ながら説明していたのを思い出しつつ。 汁気がたっぷりして甘いのだが、ただ甘いばかりでなくて、 爽やかな酸味と、微かに口中がきゅっと締まるような収斂感がある。 果物全般に言えることとして、 普通のものと本当に良いものとの間には格段の差があるのだね。 正午頃、ホテルを出て、新幹線で京都に帰る。 夕食は、錦糸卵を作って、また素麺。 しばらくアルコールは抜き。

Monday, August 07, 2006

陛下の桃

約束通り、深夜に更新。 旅先だからと言うわけでもないのですが、今日はかなり長いです。

午後の一番暑い時間に、現代の魔都と言ってよかろう、秋葉原に降り立つ。 仕事は一時間半ほどで終了。日帰りすることもできたのだが、 どれくらい時間が必要なのか分からなかったのと、 日帰りは身体にこたえるので、余裕を持って一泊することにした。宿泊は渋谷。

夕食はホテルの近くの韓国焼き肉屋に行く。この店は安くて美味しい。 日本の外国料理店については、私は「Y田の定理」を信じている。 Y田先生はフランスで教育を受けた、 もっと正確に言うとストラスブール学派のプロバビリストなのだが、 京都のフランス料理屋「ブション」を教えてもらったときに、こう言っていた。 日本で外国料理の良い店を探すのにはコツがある。 ぱっとしない外見の外国人客が集まっている店は必ず美味しい、と。 私はこれを「Y田の定理」と呼んでいる。 一旦、ホテルに戻って、夜が深くなってから、久しぶりに「黒い月」に行く。 「黒い月」は学生時代から時々、行っていたバーで、 若い頃はどきどきしながら行ったものだ。 しかし、 今ではかなり手の内を知ったので、安く切り上げることができるようになった。 前にも書いたことがあるように、若き日の私が、 「もう十分飲んできたから、何かすっきりしたものが一杯だけ飲みたいな」 (もちろんメニュは存在しない)、 と言ったら、 「丁度、当たり年のクリュグがございます(にっこり)」なんて非道を、 無収入の私に向かって言い放った店なのだ。 久しぶりに会う、ワインとシガーのソムリエ資格を持つバーテンダ(兼店主) R 嬢は、 相変わらず。

席についてすぐくらいに、小包で店に桃が二箱届く。 福島の知り合いに頼んで毎年送ってもらっている桃だそうで、 皇室に納められているものだと言う。 全て行き先が決まっているので、勿論、市場には一切出ない。 R 嬢はこの桃がいかに凄い物であるかを静かな口調で言葉少なに語ったあと、 「冷えたらお出ししますね(にっこり)」、と言うのに勿論、断る勇気もなかった。 何でもポイントはやはりミネラルだそうだ。 この桃は二つの川に挟まれた三角州で育ち、 その川の一方は火山の影響か何かで魚が住めないほどのミネラル度なのだとか。 桃が冷えるのを待ちながら、シモン・ビーズのマール・ド・ブルゴーニュ 85 年を飲む。 突然、「奥様は日本人」と言うので、「ええ、存じておりますよ」と答え、 「お知り合いですか?」、「知り合いの平方根くらいです」などと言う会話を交わす。 お客が二組来たがすぐに帰り、また店主と二人きりになったので、 メンデルスゾーンのヴァイオリン・コンチェルトを聞きながらオーディオ蘊蓄話を聞く。 何やら高そうな新しい機械があるな、と思っていたら、 一ヶ月前くらいにお客の一人が貸してくれたのだと言う。 150 万円もする CD プレイヤーだそうだ。 デジタル再生機に本当にそんな意味があるのだろうか… 私は素人なのでさっぱり分からない。 そろそろ桃が冷えたので、シャンパーニュをグラス一杯と共にいただく。 美味しい。確かに美味しい。これでも今年は気候のせいで大層の不出来なのだそうだ。 ところで、ここのシャンパーニュ用のグラスはすばらしく綺麗で、 私も欲しいと思っているのに、 いつも名前を聞いて帰るころには忘れている。 ドイツ製であることだけは覚えているのだが。 帰ろうとしたら、店主が桃をもう一つ、お土産に持たせてくれた。 明日の朝食にしよう。

Sunday, August 06, 2006

普通の生活2

また早朝に目覚めてしまった。 こんな嫌な習慣は早く身体から抜け切ってもらいたい。 今日も外の日射しは激しく眩しい。部屋の中から窓の外を観察するに、 今日の京都の最高気温は、日陰の風通しの良い芝生の上、 地上 1.5 メートルで計測して 37.5 度といったところだろう。 荒れる海に浮かぶ船を陸から見るのは楽しい。 外に出なければ完璧な一日が過ごせる。 朝から湯船に入り、ドライマティーニを飲みながら、 美しい文章とは何かを思い出すために、 カポーティの短編を読んで、そのまま少しうとうととして、 すっかり冷めた湯船の中に自分を発見して、 水の感触をこの胸で味わいながら、 アヒルのおもちゃでひとしきり遊んでいたところで、 誰に意見をされることもない。 平和で完璧な一日、そう、ヒバリがピーときて、 横からカタツムリが出てくるあれだ。 えーと、キーツだったかブラウニングだったか… とにかく、神はそらに知ろしめす、すべて世は事もなし、だ。

昼食にトムヤムクンを作る。 必要なスパイス類などが一袋になって売っていたので。 海老は頭も殻もついたものが良かったのだが、 品質を優先したら剥き身しかなく、 おかげでさらっとした感じに仕上がってそれはそれで良かった。 私はもともと辛いものが好きなので、 自分一人のために料理をすると、危険なくらい辛いものを作ってしまう。 卵と玉葱だけの炒飯も作って、一緒に食べた。 午後は二時間ほど昼寝のあと、読書。 夕方、少しは涼しくなってきたところで食材の買い出し。 三食分作ってしまったので、夕食も激辛スープを食べねばならない。 そのままでは芸がないな、と思って、 ベトナムの米麺があったのでフォーらしいものにしてみる。 なかなか美味しい。これはいいアイデアだった。 夜はお風呂で、ドライマティーニを飲みながら、 美しい文章とは何かを思い出すために、谷崎潤一郎の短編を読む。

明日は秘密のお仕事で東京に出張。一泊の予定。 ホテルの通信環境が良ければ、深夜に更新します。

Saturday, August 05, 2006

普通の生活

最近ずっと早起きしていたので、同じ時間に起きてしまった。 しかし、今日はずっと寝ていても、 いささかの差し支えもなく、誰一人として邪魔をする者はいないのだ。 邪魔者がいたら、袋に詰めてボスポラス海峡に投げこんでやる。 ああ、そうするとも。原家の人間はすると言ったことの二分の一はする。 残りの四分の三については、我々だって万能でないと言うことだ。 冷房の効いた部屋で悠々と二度寝し、 とは言え、9 時頃には再び爽やかに目が覚めたので、 冷房の効いた部屋の中から表の様子を観察した。 太陽は燦々と輝き、小鳥はピーと鳴き、 猫は寝室の前の踊り場でニャーと鳴いている。 居間兼ダイニング兼キッチンでクロに朝食を与え、自分の朝食に珈琲。 神は天におわし、世はこともなし。 とりあえず一週間分の洗濯をする。 洗濯は洗濯機に任せて、読書をしたりで午前を過す。 昼頃に執事が煙のように居間に現れると、今日も仕事だと言う。
H:「なんと。こんな麗しい日に仕事をするだなんて。 きっと法律で禁じられているんじゃないかな!ハハハ、 太陽は燦々と輝き、小鳥はピー、猫は…」
B:「小鳥なんて鳴いてませんから」
H:「そうかな、さっき確かに聞こえたんだが…」
B:「小鳥だってこんな日には日影でぐったりしてますよ」
執事はこの家の主人である私を、 まるで私が音を立ててスープを食べたか、 給仕にウースターソースを頼みでもしたかのような目で眺めると、 煙のように消えて仕事へと帰って行った。 自己申告なので本当に仕事とは限らないし、また青春イベントかも知れない。 誰の背後にも私の知らない私生活と言うものがあって、 それが私にはとても不思議で奇妙なことのように思える。 昼食は近所のベンガルカレー屋でテイクアウトして、 自宅でまともな器に移しワインとともに食す。ローヌのシラー。 食後は昼寝。

夕方になって、食材の買い出し。 近所のワイン屋でコンシェルジュの M さんに選んでもらって、 ニュージーランドの白ワイン。 専門家が散らし寿司や手巻き寿司にもあうだろう、 と言うので、スーパーで鰹の叩きを買って、 夕食は鰹の叩きの散らし寿司にする。 だしを引いて、卵を落としたお澄ましも作る。 ワインとの相性はばっちり。 私は専門家の意見には常に敬意を払う。昔風の人間なのだ。 夜、お風呂あがりか、または湯船で飲もうと思って、 マティーニを作ろうとしたのだが、ベルモットが切れていた。 また買っておかねば。

Friday, August 04, 2006

兎料理は殺しの味

今日も働いた。働き抜いた。 仕事にけりをつけることはできなかったが、 キャンパスが夏期休暇に入ることなどから、 しばらくは中断せざるを得ないので、 一段落ついたと言ってよかろう。 夜は、近所のバーで食事。 キッシュ、兎のポトフ。食後にブルーチーズとデザートワイン。 兎はミートパイのような濃い味の料理しか食べたことがなかったので、 こんなあっさりしたものは新鮮だった。

この土日はゆっくり休もう…

「さらばシベリア鉄道」が 1980 年頃の曲と知って愕然。 四半世紀以上も前のことだったとは。 そりゃ年もとるものだ。

Thursday, August 03, 2006

私の心の冬

本当に足元がふらついてきた。 もう学生もほとんどいない、 熱波に包まれた真白に輝く真夏のキャンパスを移動していると、 一瞬気が遠くなり、幻が見えた。 涙さえも凍りつく白い氷原で、 雪に迷う馴鹿の悲しい瞳と目があった。 それでも、何とか今日中に採点を終えねばと、 夕方から最後のもう一頑張り。 兎に角、後一日働けば週末だ。

夕食は素麺。生姜のみ。

Wednesday, August 02, 2006

膳所焼の碗

今日も仕事に励む一日。 さらに定期試験の採点も一科目分、片付けた。 馬車馬のように働いた一日を終え、 ぐったりとして家に帰り、 クロソフスカヤと話しながら食事。 会話はどうしても哲学的な内容になりがちだ。 と言うのも、家猫の毎日は概ね意外性に乏しいものだし、 私の毎日も劇的と言うには程遠い。 ああ、クロよ、 僕にもドラマチックでカラフルで、 サイケデリックでサディスティックな、 疾風怒涛の青春があったんだぜ。 具体的にどうだったかは、御前にだって言えないけどね。 ホントなんだって、クロ。

そして今日は、労働とは何かについて意見交換をしつつ、 私はアラビアータ・スパゲティ。 クロの方はジノリの器からいつもの 「ねこ元気おいしさプラス(お魚と野菜入りミックス)」 を食べ、膳所焼の茶碗から水を飲んでいた。 静かな真夏の夜だ。

Tuesday, August 01, 2006

さらば青春の光

朝、家を出るときは変に涼しかったのに、 午後には蒸し暑い八月らしい夏。 今日も良く働きました。今週はじゃんじゃん働きますよ、母上さま…一休。 学生さんは明日から夏休みだそうだ。いいなあ。 仕事を終えて、車中でハンドラーの「殺人小説家」 (北沢あかね訳/講談社文庫)を読みつつ帰る。 やっぱりハンドラーはホーギー・シリーズ。 しかし愛犬ルルを連れた伊達男、 ホーギーことスチュアート・ホーグも 8 作目にして、 別れたはずのメリリーとよりを戻したどころか、 子供まで出来て、さらにそれどころか、 赤ん坊の写真を財布に入れて持ち歩くようになっている。 がっかりだ。それはともかく、 相変わらずゴージャスな生活とお洒落で気障な会話に、 今回はホーギーの学生時代の回想の苦みも利いていて、 なかなか読ませる。ホーギーも既にかなりの年だし、 9 作目はあるのかなあ。

夕食は素麺と卵焼き。